卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第350話 ノア・イース

「ちょっとした外法を借りさせて頂きましょうか――〚ノア・イース〛」

 

 次の瞬間、世界の全てが変貌する。

 

 瞬きをする間もなく、宇宙空間の全てが一瞬にして水で満たされた。

 

「な……なんですか、これは!?」

 

「〚アンチマジック〛――〈魔導〉が発動しないっす!」

 

 空間は〈魔導〉を無効化する不思議な水で満たされた。しかし灑智は構わず〚ライトニングボルト〛を発動させてこちらに乱射してくる。

 

「一方的に〈魔導〉を発動できる領域ということですか!」

 

 〚ライトニングボルト〛なら、避けるのは簡単だ。しかし再び世界が歪み、ボクの周囲に大規模な〈魔導〉が発動する予兆を感じ取る。今度は〚アンチマジック〛で無効化できない。

 

 慌てて発動範囲から離れようとしたその時、異変が生じる。

 

「移動ができない……!?」

 

 周囲を満たす水が邪魔をしているわけではない。【モーションアシスト】への命令が不発したのだ。慌てて手動操作に切り替えようとしたが、その一瞬が命取りだった。

 

 世界がぐにゃりと歪み、身体を強引に捻じ切られる。一瞬にしてHPが『1』にまで削られ、慌てて【女神像】から【アイテムマスター】を引き出して【オートユーザー】で回復するが、攻撃は終わらない。

 

 身体が分離され、隙だらけの状態で光の速度を越えた稲妻が迫り来る。【モーションアシスト】による回避はできない。

 

「【ホームリターン】!」

 

 【ホーム】に帰還して稲妻から距離を取るが、稲妻は自在に挙動を変えてボクを狙う。周囲を満たす水が灑智の〈魔導〉に道を開けることで、〈流水誘導〉の効果を発揮しているんだ。

 

「【ガードジャスト】っす」

 

 回避の術はないと思われた〚ライトニングボルト〛が、ボクの眼前で消滅する。『ナノドローン』への当たり判定を利用して雷を受け止めたのか!

 

【ガードジャスト】

[アクティブ][自身][支援][ガード]

消費MP:12 詠唱時間:0s 再詠唱時間:75s 効果時間:0.75s

効果:[ダメージ]を[無効化]する。

 

「〈魔導〉が使えない以上は僕にできるのはここまでっす。さっさと倒してきてくださいっす」

 

「ああああさん――わかりました!ご期待にお応えします!」

 

「……《『応援してる』》……《『頑張って』》」

 

 ああああさんとぷにりんさんの激励を受けて、ボクは再び前線へ向かう。【モーションアシスト】が封じられたことで移動の精度は落ちている。だがぷにりんさんの力で底上げされた能力で魔力と水の海を掻き分けて進む。

 

 【ファイアワークス】は灑智にとって明らかな致命傷だ。そのHPが尽きるまでにボクを仕留められなければ、敗北は必定。

 

「さぁ、ここからは耐久戦です。ボクが死ぬのが先か、灑智が死ぬのが先か――我慢比べといきましょうか!」

 

「〚ノア・イース〛を切った以上、私の勝ちですっ。お姉様がこの雷に貫かれるのは()()()()()()()()()っ!」

 

 灑智は〚ライトニングボルト〛を再びボクに向けて射出する。先の世界を歪ませる〈魔導〉さえ無ければ、【モーションアシスト】に頼らずとも回避はできる。

 

 けれどあの自信満々の口ぶりは――。

 

 当てられる。判断材料なしにそう確信したボクは、その一撃を正面から相殺する選択肢を取った。【イグニッション】でスキルの出力を引き上げ、無動作で【オフセット】を発動する。

 

【オフセット】

[アクティブ][近接][攻撃][物理][ガード][条件:盾]

消費MP:6 詠唱時間:0s 再詠唱時間:30m

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[スキル][相殺判定時]に[出力]を[増加]させる。

 

 ボクの身体に張り巡らせた【オフセット】と〚ライトニングボルト〛が衝突し――甲高い音を立てて雷が消滅する。

 

「相殺されたっ!?()()()()()()()()()のに!」

 

 なるほど、そういうことか。

 

 未来を観測しても、〈魔導〉が発動するたびに未来は歪む。これが〈乱数調整〉の原則だ。

 

 けれど〚ノア・イース〛によって満たされた空間において〈魔導〉の発動回数を発動者が自由にコントロールできるようになり――これにより好きな未来を手繰り寄せることができる。

 

 限定された領域内で『ラプラスの悪魔』を演ずることができる。これが〚ノア・イース〛の本質だ。

 

 そんな確定された未来を崩す要因があったとしたら、それは――。

 

「ぷにりんさんの応援が、未来を覆したようですね!」

 

 灑智のHPは残りわずか。このまま待っていても【ファイアワークス】が彼女を全損させるだろう。

 

 けれど――。

 

「やっぱり締めは大技で、ですよね?」

 

 ボクは【フェアリーストームワンド】を灑智に向ける。そしてぽつりとスキル名を囁いた。

 

「【ゲールウィンド】」

 

 杖先から突風が放たれる。炎属性と比べると威力は低い。ボクにとっては小技の部類だろう。投射攻撃だから〚エデン〛を貫通することもできない。

 

 ゲーム環境においては()()()()()()()()()()僅かな威力だ。しかし水を掻き分けて突き進むとともに、その威力は増していき、嵐のような暴風と化す。

 

 暴風は一撃で〚エデン〛を突き破り――灑智に残された僅かなHPを全損させた。

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