卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第351話 宝箱

「お疲れ様でした!無事にラスボスを討伐できましたね!」

 

 灑智の撃破に成功し、くるりと振り返って仲間たちと喜びを分かち合う。めりぃさんがいないのは残念だけど。

 

「……お疲れ……さまでした……」

 

「ま、当然すね」

 

 ぺこぺこと頭を下げるぷにりんさんと、ふんぞり返って胸を張るああああさん。対照的な2人の様子に思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「灑智はどうやらログアウトしたみたいですね。どうですか?感想は」

 

 部屋に戻っているはずの灑智にそう呼びかけると『VRステーション2』の外部音声機能を通じて声が返ってくる。

 

『さすがお姉様達ですっ!正直な話、〚ノア・イース〛を切らされるとは思っていませんでしたし、それを突破されるとも思っていませんでしたっ!』

 

 使い手以外のあらゆる〈魔導〉を封殺する〈魔導〉――それを世界でも屈指の〈魔導〉使いが行使してきたら、確かに普通は勝ち目なんてない。

 

 それを突破して〚アンチマジック〛を使用し、〚エデン〛を貫通できたのは、ほんの一瞬の閃きだった。

 

「灑智の魔力を使用して、灑智に〚アンチマジック〛を切らせればいい。蝶の羽ばたきが暴風となり、〈感受誘導〉で行動を歪ませた」

 

 〈感受誘導〉は本来なら行動を強要するテクニックではない。しかしぷにりんさんの『権能』じみた誘導の力を観察したボクは、その出力をさらに一段引き上げることに成功した。最後の一撃が〚エデン〛を貫通できたのも、そのおかげだ。

 

「〈魔導〉を使う起点は僕自身じゃなくてもいい、か。それは参考になるっすね」

 

「ああああさんに〈魔導〉の習熟を高められるのは恐ろしいですが――まあそういうことです。多くの〈魔導〉は肉体の動作を伴わず、思考だけで発動できる。無意識下の誘導で暴発させるくらいはできますよ」

 

 ぷにりんさんの『権能』は『異形』のオーラありきの部分があるので、それなしで成立させるのは難易度が高いですけどね。

 

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>ついに卍さんもアクタニアの領域に足を踏み入れたのか……

 

>そういえば理論的には明日香さんも同じような事を出来るよな。アクタニアに身体を異形仕様に改造してもらえば簡単に権能を使えるんじゃね?

 

>ちょっと触手を生やしてもらってくる

 

>また人間をやめる奴が現れたのか

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 確かに『異形』が世間に認められた今の時代なら、明日香さんのように触手が生えるくらいメリットとしか思わない人のほうが多いのもわかる。とはいえ明日香さんはアクタニアを倒すまでずっとこの件について悩んでいたのだ。軽率に茶化すのは控えてほしい気持ちもある。

 

 まあ明日香さんならこの件についても『異形』の力を得ることのメリットとデメリットを説明してくれるだろう。今はそれよりもダンジョンのことだ。

 

「さて、それでは扉を開けましょうか。これでクリアですよね?」

 

 先程の戦いなど何もなかったかのように、木造の扉が佇んでいる。恐らくはこれでダンジョンの攻略は完了したのだと思うが、油断はできない。

 

「ああああさん、扉を開けちゃってください!」

 

「扉に罠でも仕掛けられてるのを懸念してるんすか?いくら何でも妹に信用が無さすぎじゃないっすか?」

 

 だって灑智なら何をやってきてもおかしくないし……。

 

 ああああさんなら断るかと思ったが、ぶつぶつ言いながらもノブを引き、扉を開ける。扉の先から白い光が溢れ、ゆっくりと景色が浮かび上がる。

 

 扉の先にあったのは、真っ白な空間だった。

 

 真っ暗な宇宙とは対照的な眩い光に思わず目を細める。咄嗟に網膜を調整し、改めて部屋の中を確認すると、そこには宝箱があった。

 

「お先に頂くっすよ!」

 

「あっ、ずるい」

 

 扉を開けた者の特権とばかりに、ずかずかと部屋に踏み入り、宝箱からアイテムを取り出す。そして速攻でログアウトした。

 

 どんなアイテムを取り出したのかは不明だが、まだ中身が残っているようで宝箱の中からきらきらとした光が溢れている。

 

「どうやら1人につき2つまで取り出せるみたいですね。ぷにりんさんはどれにします?」

 

 近づいて宝箱の中身を確認すると、ダンジョンに出現したモンスターの【カード】やキーホルダーなどさまざまなアイテムが入っている。

 

「【ふわもこ手袋】ですって。めりぃさんにはこれをおみやげにしましょうか。好きそうですし」

 

 中に手を入れられるタイプのぬいぐるみで【アイズ・ファミリア】とそっくりの見た目をしている。この手袋を着けていたら武器なんか持てそうにないが、試しに手袋を着けた状態で杖を持ってみると、不思議な力で吸着した。

 

 どうやら視界型のスキルを使用するときに出力を向上させる効果があるらしい。めりぃさんの分とボクの分として2つの手袋を宝箱から取り出した。

 

【魔眼の加護】

[パッシブ]

効果:[視界][スキル]の[出力]を[増加]させる。

 

「私も……【ふわもこ手袋】にする……あとは……」

 

 ボクと同じように【ふわもこ手袋】を取り出し、もう1つは【アイズ・ファミリア】の【カード】を選んだようだ。

 

 他にも悪名高きサイコロの【カード】や手袋もあるけれど、わざわざ入手しようとは思わないだろう。このダンジョンを周回し続けて、欲しいものがなくなったらようやく選択肢に入る程度だ。

 

「【カード】を選んだということは、もしかして……」

 

「……そう……【転生】してみたい……」

 

 【アイズ・ファミリア】は見た目もきゅーとですし、戦い方も個性的ですものね。そういえばボクもダンジョンの序盤で【カード】を入手していた。せっかくだし、ボクも【アイズ・ファミリア】に転生してみようかな。

 

 そうと決めたボク達は【ノーグッド】の【転生屋】へと足を運ぶ。【カード】を見せて【アイズ・ファミリア】に【転生】したボクは、白くて丸いボールのような姿に変化した。

 

 ボクの隣には同じく【アイズ・ファミリア】の姿に【転生】したぷにりんさんの姿が。ころころと転がりながら移動している様子がきゅーとで可愛らしい。

 

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>かわいい

 

>ぷにぷにしてそう

 

>そりゃぷにりんさんだからな

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 試しにぴょんと飛び跳ねるとぽよんぽよんと身体が弾む。全能の力で空を飛ぶこともできるけれど、飛び跳ねながら移動するほうがきゅーとですよね。

 

 習得可能なスキルも確認しようかと思ったが、どうやらそろそろ時間のようだ。また今度見ればいいかな。

 

「さて、これで灑智のダンジョン攻略は終了となります。みなさんもぜひ挑戦してみてくださいね。ボク達みたいに度重なる妨害を受けたり灑智と戦うことになったりはしないと思います!」

 

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>えー?灑智ちゃんと戦ってみたかったのに

 

>妨害無かったらヌルゲーだろ。パーティでもちょっと苦戦するくらいじゃねーか

 

>適正難易度定期

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 ダンジョン攻略を無事に終え、今日は解散することにした。ぷにりんさんを【フレンド】に登録して、また一緒に遊ぶ約束をしてログアウトする。

 

 さて、今度は灑智を構ってあげないとね。

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