卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
ボクはスロットを回そうとして、コインの換金を忘れていることに気づいた。
「おっと。肝心のコインがありませんね。仕入れてきましょうか」
「そんな卍さんの為に、いっぱい換金しておいたよー!」
めりぃさんはそう言って、コインの入った箱を手渡してくれた。
「ありがとうございます!おいくら分の換金ですか?お支払いしますよ」
「いいのいいのー!卍さんにはこれからいっぱい稼いでもらうんだからー!」
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>【悲報】卍さん、女から受け取った軍資金でギャンブルに挑む
>これはクズですわ
>めりぃさんは尽くす女
>ヒモかな?
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「ちょっと視聴者さん、失礼ですよ!これはめりぃさんが太っ腹なだけですから!」
「お姉様、女性に対して太っ腹は失礼じゃないですか……?」
灑智の窘めるような言葉を口火に、コメント欄はさらなる罵詈雑言に包まれる。褒めただけなのに!めりぃさんもその流れに乗って「卍さんに悪口を言われたー」と大雨の
そんな大騒動をどうにか収め、ボクはスロットにコインを投下した。途端にリールが凄まじい勢いで回転し始める。
「目押しとかあるんですかね?とりあえず止めてみますか」
かなりの高速回転だが、【フォッダー】の経験を経て〈
1つ目は【ジュエルラビット】の絵柄が中央に来る直前でストップボタンを押す。すると絵柄が滑って停止したので、次のリールは滑りを考慮した上で1つ目に合わせてボタンを押した。
しかし2つ目のリールは1つ目の時よりも大きく滑ってから緩やかに停止する。やはりタイミングを合わせれば揃うというわけではないようだ。
そのまま3つ目のリールも揃わずに止まって、再び3つのリールが回転し始める。
今度は【モーションアシスト】に『当たりが出るように』と指示し、最適解に身を任せてみる。するとやはり現状の最適解は
それでも絵柄は揃わない。1つ目のリールは想定通りの絵柄でピタリと止まる。しかしそれ以降が続かないのだ。
「やはりといったところでしょうか。ちょっと試したくらいで当たりが出るような簡単な話ではありませんね」
「じゃあこういうのはどうですかっ?」
そう言うと、灑智は【ストレージ】から黒色の槍を取り出し、ボクの横から絵柄を鋭く突き刺す。……いや、灑智ってこんなにあぐれっしぶでしたっけ?お金を飲まれた恨みですか?
しかし槍がスロットを貫くことは叶わず、甲高い音を立てて弾かれる。どうやらスロットは『不壊』であるらしい。
「物理的に絵柄を止めてみようと思ったのですが、失敗でした……」
「いや、いきなり顔の横から槍が飛び出してきたらびっくりしますからね?やめてくださいね?」
外装で弾かれるなら〈トンネル避け〉で内部に干渉するのはどうか。試してはみたが、やはり『不壊』のオブジェクトである以上、物理的な干渉によって絵柄をズラしたり止めたりすることはできないようだ。
そうして色んな作戦を試すうちに、コインは目に見えて減っていく。このままではめりぃさんのご厚意が無駄になってしまう……!
手を止めて周囲のプレイヤー達に目を向けるが、他の場所でも当然のようにコインを吸われ続けているらしく、最初に訪れた時よりもプレイヤーの数が減っている。
【カジノ】にはスロット以外のゲームも存在しているが、そちらの状況も芳しくないようだ。コインを失い、絶望の表情を浮かべるプレイヤーの姿も見える。
まだ他にやっていないことで、『当たり』を出す方法はないだろうか?そうして思考の迷宮に身を沈めていると、突然ボクの頭の上に重量物がのしかかってきた。
「やっほー、遊びに来たよ♥」
ボクによく似た声で、明日香さんによく似た艶めかしい声色で、楽しそうに話しかけてくる。
「とがみんですか。さっき話題に出したから遊びに来たんですか?」
ボクは頭上のとがみんを持ち上げて胸に抱き留め、撫で回してあげる。すると気持ち良さそうに嬌声をあげ始めたので、すぐに手を止めた。
「灑智と一緒に配信してるみたいだったからね、姉としては見に来るべきかなーって♥」
とがみんの発言に灑智が「お姉ちゃんは私ですっ!」と騒ぎ始めるが、揺らがぬ姉の立場にあるボクとしては、微笑ましく見ていられる。
「せっかく来てくれたみたいだし、もうひと頑張りしますか。コインを入れてっと」
とがみんを片手で抱えながらボクはコインを投入し、再びリールを回転させる。そして目押しで1つ目を【ジュエルラビット】に合わせ、続く2つ目もタイミングを見計らって止める。そうして確定した絵柄は――【ジュエルラビット】。
『リーチ!』
喧騒の【カジノ】の中で、その言葉はフロア中に響き渡った。