卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第367話 ディオニューソスの真髄

 戦いは短期決戦で終わってしまったのでアリンドさんの手札の全容は不明だ。現状でわかるのは絶大な火力と圧倒的な物質干渉力を持つことくらい。シンプルな強みなので、対策も立てやすいだろう。

 

「あたしは攻撃を受け止めるのが仕事だから、単純に上回られると仕事が無くなっちゃうけどねー。なんか対策スキル取ろうかな」

 

「めりぃさんは受け止めてからラーメンで回復するのが得意ですから、回復する間もなく全損させられると厳しいですよね。【ガードジャスト】のようなスキルを使えば威力に関わらず受け止めることはできるでしょうが……」

 

【ガードジャスト】

[アクティブ][自身][支援][ガード]

消費MP:12 詠唱時間:0s 再詠唱時間:75s 効果時間:0.75s

効果:[ダメージ]を[無効化]する。

 

 めりぃさんの耐久力とは噛み合わないスキルだけど、汎用性は高いから取っておいて損はない。ただし瞬間的な攻撃を受け止めるだけのスキルなので、通常攻撃の全てが強力なアリンドさんの猛攻をこれだけで凌ぐのは難しいだろう。

 

「めりぃさんにはひとまず【アンカー】による速度ダウンを試してもらう感じですかね。攻撃が躱せる速度であれば耐久は関係ありません。後は――」

 

「わたくしが最大HPを増加させる料理を提供致しますわ。食材を確保して来ないとですけど――概算で、300%くらい増加するはずですの」

 

「300%!?」

 

「【ビショップ】の【ライフバッファー】でもそこまでは上がらないね♥」

 

 当たり前のように規格外の数値を持ち出す猫姫さんに、ボクととがみんは衝撃を受ける。やはり【黄金の才(ユニークスキル)】というだけのことはある。【『ディオニューソス』】は恐るべきスキルだ。

 

「私は火力を上げる料理が欲しいですっ!」

 

「了解ですわ。灑智さんは攻撃役(アタッカー)型の闇属性【ナイト】ですわよね。それなら闇属性攻撃の出力を増加させる料理に致しましょう。とがみんさんは――聖属性の強化かしら?」

 

「うーん……。今は【ジュエルラビット】のシナジーを考慮して支援(バフ)や回復メインの【ビショップ】でやってるけど、わたしも本来は攻撃役(アタッカー)気質だからなぁ♥」

 

 とがみんは【ジュエルラビット】のスキルである【支配領域】を利用して、【ビショップ】の『エリア』を参照する受動(パッシブ)スキルを常時適用させるのが特異な(ビルド)だ。

 

【支配領域】

[パッシブ]

効果:[自身]を[起点]として、[エリア]を[形成]する。

 

【守護の奇跡】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[自身]の[発動]した[エリア]にいる[味方]の[受ける][ダメージ]を[減少]させる。

 

 極端な話、『エリア』系統の受動(パッシブ)さえ取得していれば、他のスキルはなんでも良い。【転生】アバターは職業(クラス)の1つがモンスター側の専用職業(クラス)で埋まっている為、あくまで【ビショップ】のスキルから選ばなければならないが、【ビショップ】にも攻撃的なスキルはあるし、装備スキルを活かしても良い。自由度の高い(ビルド)だろう。

 

「うん、次は物理攻撃役(アタッカー)で行くから攻撃力を上げる感じの料理でよろしくね♥」

 

「承知しましたの!卍さんはやっぱり炎属性ですの?」

 

「いや、アリンドさんが炎属性耐性で固めてくるのは目に見えてますからね。どうしたものか」

 

 最近はあまり使われることがなかったが、炎属性の耐性装備は単純で手軽なうえ、ボクには非常に辛い対策だ。炎属性で突破する方法は【サモン・フィーニクス】か【不死鳥の加護】による継続ダメージくらいしかない。

 

「風属性で攻めるという手もあります。けれど――ここは炎属性で攻めましょうか」

 

「耐性装備を強要できるから、だね♥【データスキャン】で確認したけど、アリンドさんの炎耐性装備は()()()()()()よ」

 

 あの時、ボクを攻撃したその瞬間――アリンドさんの物質干渉力は明らかに低くなっていた。量子の動きも洗練されていなかったし、場合によっては〈トンネル避け〉で完全回避も狙えただろう。恐らく攻撃力自体もめりぃさんの受けた一撃より低くなっていたはずだ。

 

「だから基本はボクの炎に他の人の攻撃を合わせてぶつけるのがベストでしょう。炎属性の耐性装備を付けている間は他の攻撃が有効打になりますから」

 

「あたしもアリンドさんが耐性装備を付けている時なら攻撃を受け止められるかもしれないってことだねー?」

 

 自身のアイデンティティである物質干渉力を上回られた事が余程ショックだったのだろう。盾役(タンク)として活躍できる可能性を感じ取り、めりぃさんは盾の感情表現(エモート)を出しながら両手を上げ、喜びをあらわにする。

 

「となると、卍さんの料理を炎属性にするべきかが悩みどころですわね。見せ札になる事を考えると――」

 

詠唱時間(キャストタイム)再使用時間(リキャストタイム)を短縮できればありがたいのですが」

 

 普通の料理にその手の要素を求めたことはないが、猫姫さんなら……。

 

「問題ありませんわ。詠唱時間(キャストタイム)再使用時間(リキャストタイム)を35%くらい短縮できるはずですの」

 

「両方を同時に短縮できるんですか!?他の料理系生産プレイヤーは涙目ですね」

 

「わたくしのスキルはランダム要素を固定化させて最大値を出すだけですから、他のプレイヤーでも理論上は同じ料理を作れますわよ。望んだ効果の料理を一度作れればオートで複製もできますしね。要望に応じたカスタムをすぐに提供できるのはわたくしの特権ですけど」

 

 謙遜しながらも、猫姫さんは嬉しそうに微笑む。なるほど。欲しい料理の効果を聞いて、それに圧倒的な速さで対応できる。それが【ディオニューソス】ならではの特権なんですね。




補足説明
他の料理系プレイヤーは猫姫さんと同じ食材を用意しても、ランダム要素次第で有用な組み合わせで効果が付与されなかったり、効果の強度が上限値にならなかったりします。
一度作った効果の組み合わせは複製できますが、その場合も効果の強度にランダム要素が入るので、理論上の上限値を確保する為に素材を集めて量産する必要があります。そもそも上限値がマスクデータなのでその検証も必要です。
猫姫さんの料理が世に出回ると生産可能な効果の組み合わせパターンや上限値を把握する事が出来るので、検証に必要な工数が減って猫姫さん以外も同様の効果を持つ料理を提供しやすくなります。
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