卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第369話 宣誓

 明日香さんが食事を終え、ボク達はアリンドさんのもとへと向かう。激しい爆発やぶつかり合いの音が近づくにつれて大きくなっていき、今も他のプレイヤーが戦っていることを如実に感じさせる。

 

「他の人が戦っていたら、私達はどうするんですか?順番待ちですかっ?」

 

「【パーティ】を組んでいればドロップは平等に抽選されますけど、システム外の共闘をすると抽選漏れの可能性がありますからね。おとなしく待ちましょうか」

 

 確か【A-YS】には【レギオン】という【パーティ】より大きな集まりがあったけど……そう呟くと、コメント欄から『【レギオン】はドロップの分配に関する仕組みは無い』と補足を受けた。そもそもあちらの世界は地面にドロップしたアイテムを拾ってましたからね。情報としての信頼度も高いでしょう。

 

 やがて鋭い剣閃の音が鳴り響いたかと思うと、辺りはしんと静まり返る。どうやら戦いは終わったようだ。

 

 ボク達はアリンドさんのもとへと近づく。

 

「またおまえらか。何度もやられに来てご苦労なことだ」

 

「最初の1回で勝てないのはこのゲームのお約束みたいなものだしねー」

 

「むしろ普通は何度も挑んで行動パターンを掴むのがお約束ですからね」

 

 1回で勝てるとは思ってないし、2回なら勝てるなんて自惚れたことは言わない。勝利を確信するプレイヤーに【モーションアシスト】は力を貸してくれるが、何度でも再挑戦できる戦いに信念を賭して挑む必要はない。

 

 思考と試行を重ねた果てに、最後に勝利を掴み取れればそれでいい。

 

 ――しかし、

 

「今度は私達が大勝利しちゃいますよっ!ねっ、お姉様!」

 

 さも当然のように勝てると断言する我が妹の姿に思わず苦笑してしまう。

 

「――ふふっ、そうですね。3度目なんて要らないですよね?」

 

「当然ですわ!さっきは卑怯な初見殺しに嵌められただけですもの!わかっていればどうとでもなりますの!」

 

「それに、今回は明日香ちゃんも来てるしねー♥」

 

「その心意気や良し。問題は俺に勝てる未来など存在し得ない事くらいだが――」

 

 アリンドさんがそう呟くと、前傾姿勢になり、ボクを目掛けて急接近する。めりぃさんがすかさず割り込んで攻撃を受け止めた。ここまでは先程と同じような流れだが――。

 

「今度はそう簡単には倒されないよー!」

 

 めりぃさんはアリンドさんの物質干渉力を正面から抑えきり、すかさずラーメンを啜ってHPを回復させる。どうやら装備を物質干渉力にさらに特化させたらしい。

 

「小手先の強化で俺の一撃を凌げると思うなよ!」

 

 攻撃を受け止められたアリンドさんは再び剣を振りかぶり、めりぃさんに追撃を繰り出す。ラーメンで回復しているとはいえ連続攻撃を受ければ今の彼女でも危うい。

 

 しかしそれはめりぃさんがこの場に1人だった時の話だ。

 

 めりぃさんのスキルによって呼び出された青い精霊が割り込んで攻撃を受け止める。同時に発動していたのは【ガードジャスト】。一定のタイミングで受けたダメージを0に抑えるスキルだ。

 

「このっ――」

 

「前衛1人も倒せないんじゃ、勇者の名折れだよ?♥」

 

 直後に後方からとがみんがアリンドさんに勢い良く突進した。【サイハンド】を乗せた体当たりは物質干渉力判定で勝利することこそなかったものの――だからこそ、接触が続く限り凄まじい勢いで連続ダメージを与えていく。

 

 【サイハンド】は詠唱時間が0sの攻撃スキル。だから触れている限り、攻撃判定を好きなだけ発生させられるのか!

 

「明日香ちゃんに教えてもらったんだ♥」

 

 HPを一割ほど削ったところで、アリンドさんはくるりと回転しながら剣を振るい、とがみんを弾き飛ばす。「きゃん♥」と嬌声をあげながら吹き飛ばされていくが、HPが全損する様子はない。

 

「ちっ、軽すぎたか……」

 

 【勇者】の一撃は四回攻撃だ。けれどとがみんがあまりにも軽すぎたせいで、一撃目の時点で弾き飛ばされて射程圏外へと逃げ切ったのだ。

 

「お次はボクの番ですよ!」

 

 その隙を突いて、ボクは妖精さんをアリンドさんに接近させる。狙うは接近系炎属性魔法の頂点、【ソウルフレア】――そう思わせるところまで含めた作戦だ。

 

 慌てて装備を炎属性耐性装備に換装したアリンドさんに【ゲールウィンド】が撃ち放たれる。ダメージ的には僅かながらも、牽制だけで装備を切り替えさせた影響は大きい。

 

「めりぃさん!」

 

「じゃあねー。【アンカー】!【ホームリターン】!」

 

 めりぃさんはその場から転移によって離脱する。置土産として残したのは発動者との距離が離れるほど、対象に速度のペナルティを付与できる【アンカー】。

 

 これによりアリンドさんの速度は急速に下降し――。

 

「――【勇者】にそんな搦手が通じると思うなよ?」

 

【王道宣誓】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[妨害]を[無効]にする。

 

妨害(デバフ)の無効化!?むしろ【魔王】が持ってる類のスキルでしょ!?」

 

 アリンドさんは【アンカー】の効果をものともせずにボクを目掛けて疾駆する。盾役(タンク)のめりぃさんがこの場にいない以上、切り抜けるのは困難を極める。

 

「ここはお任せしますよ!明日香さん!」

 

「了解ですわ、【シフトチェンジ】♥」

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