卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第371話 卑怯な勇者

 【キネシス】の力により再びアリンドさんを目掛けて槍が放たれる。しかしその速度も、灑智の放つ槍に比べればあまりにも見劣りする。

 

 アリンドさんもその槍を脅威とは見ていなかったらしく、HPの減った灑智を仕留めるべく剣を天に掲げる。

 

「こいつを避けられるかな?【天罰(ライトニングボルト)】!」

 

 HPが1の灑智は如何なる攻撃でも全損を免れ得ない。死を悟った灑智は【ストレージ】からミニチュアの【ホーム】を取り出して――。

 

「【アトラクト】だよー!」

 

 しかし、うちの【パーティ】には優秀な盾役(タンク)がいる!【ホームリターン】で戦場に舞い戻っためりぃさんが攻撃のターゲットを奪い取り、代わりに受け止める。同時に、とがみんが回復を差し込んだ。

 

「ありがとうございますっ!」

 

 一気にHPが最大値を超えて回復した灑智は、後方から飛んできた槍をむんずと掴み、勢い良くスローイン!灑智の圧倒的な肩力により速度を増した槍は全てを壊し尽くす勢いでアリンドさんへと迫る。

 

「【ガードジャスト】!」

 

「あら、受け止めるのが早すぎますわよ?」

 

 攻撃を絶対の防御スキルで受け止めようとするアリンドさんだが、槍の一撃は確実にHPを大きく削り取る。不意の判定を受けたアリンドさんは大きく後方に仰け反った。

 

「【誘いのレクイエム】かっ――!」

 

【誘いのレクイエム】

[アクティブ][聴覚][詠唱中][闇属性][支援][妨害:確定][魔法][演奏]

消費MP:12 詠唱時間:20s 再詠唱時間:30s 効果時間:5m

効果:

[詠唱中]:[ダメージ]が[遅延]する。

[詠唱後]:[蘇生]した[キャラクター]を[死亡]させ、[蘇生][スキル]を[封印]する。

 

 ダメージを遅延する【バード】の専売特許。ダメージ判定をずらすことで【ガードジャスト】のタイミングを外し、攻撃を命中させて絶対の防御スキルを打ち砕く。

 

「行きます♥」

 

「わたしを忘れちゃダメだよ♥」

 

 同時にとがみんと明日香さんがアリンドさんを目掛けて光をも超える速度で疾駆する。

 

 アリンドさんはすぐさま体勢を整えて、その接近に対応しようとするが――。

 

「――っ!【アームズスイッチ】!」

 

「さすがに察知が早いですね、【アブソーブ】!」

 

 ボクの差し込んだ炎属性魔法に合わせて装備を換装するアリンドさん。しかし装備の換装は炎属性を受け止めるには完璧な策であると同時に、他の攻撃への対処手段を失う大きな穴にもなる。

 

『【サイハンド】!』

 

 明日香さんととがみんの【サイハンド】を受けて、装備による物質干渉力の補正を失ったアリンドさんは大きく後方に弾き飛ばされる。そして飛ばされた先には旋回して戻って来る灑智の槍が――。

 

「くっ!」

 

 〈トンネル避け〉による回避を試みたようだが、灑智の操作能力を上回ることができずに命中する。この一撃によりアリンドさんのHPは2割を下回った。

 

「みなさん、流石ですの!このまま行けば勝て――」

 

「――いや、今の減少量は」

 

 ここまでの攻撃によるHPゲージの減少量から逆算するに、今の一撃は確実に全損まで持っていけるはずのダメージだった。にもかかわらず、アリンドさんは1割弱のHPを残している。これは――。

 

「過剰ダメージによるフェイズスキップを防ぐ、食いしばりですね」

 

「ご明答だ。【魔王】にあったフェイズによる行動パターンの変化が、【勇者】にもまた存在する」

 

 HPによるフェイズの変化は基本的に敵キャラクターに対して設定されるものだ。シナリオ中では仲間である【勇者】にまで設定されているとは思わなかったが――逆に言えば、この戦いもまた開発者に想定されていたのでしょう。

 

 アリンドさんを貫いた槍が再び大きく旋回し、三度目の刺突を狙うが――突如、天から落ちた雷に撃ち落とされる。あのエフェクトは【天罰(ライトニングボルト)】ですね。

 

「【勇者】の特権を知っているか?」

 

 唐突に投げかけられた問い。気にせず攻めることはできるが、フェイズ移行に関する答え合わせをしてくれるのだろう。ボクは過去の記憶を辿って答える。

 

「特殊職業である【ヒーロー】への転職許可に、魔族に対する探知能力、それから国家そのものを自身のエリアとするスキルでしたか」

 

【女神の加護】

[パッシブ][ブレッシング][パーミッション]

効果:[以下]の[効果]を持つ。

1.[自身]の[所属]する[国家]に[エリア]を[形成]する。

2.[自身]の[形成]する[エリア内]の邪智暴虐なる[魔族]を[探知]する。

3.[ヒーロー]に[クラスチェンジ]できる。

 

「文脈から読み取れば、魔族を探知するために国家をエリアとしているように受け取れるだろう。しかし、気がついているかもしれないが――」

 

「――【支配領域】の実質的な上位スキルだね♥つまり……」

 

 とがみんと同様に、エリアを起点としたシナジーを活用できるということだ。

 

「最後に、ここで俺のスキルである【天罰(ライトニングボルト)】の効果を教えてやろう。システムウインドウで表示してやるから、よく確認してくれよな。それじゃ、【ホームリターン】!」

 

天罰(ライトニングボルト)

[アクティブ][キャラクター][聖属性][攻撃][妨害][魔法]

消費MP:16 詠唱時間:5s 再詠唱時間:30s 効果時間:3s

効果:[自身]が[形成]する[エリア]に[存在]する[任意]の[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[命中時][支援]を[全て][解除]する。[麻痺][状態]にする。

 

 アリンドさんが【ホームリターン】でその場から消失すると同時に、天からの雷がボクの頭上に降り注いだ。

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