卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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10章 Invasion ゲームをさせろ!
第376話 チーミング


 【フォッダー】からログアウトして『VRステーション2』から出ると、テーブルの上に料理が載っていた。どうやらゲームをしながら別の作業もしていたらしい。これも〘リアルステーション〙のメリットですよね。

 

 ゲーム内のオムライスに影響されたのかは定かではないが、卵尽くしのメニューだ。スクランブルエッグに目玉焼きとウィンナー、それから味噌汁。どちらかといえば朝ごはんに出てきそうなラインナップだ。

 

 とがみんも遅れてログアウトしたようで、隣の『VRステーション2』から飛び出してくる。そしてテーブルの上のメニューを見て、目を丸くしていた。

 

「えっ、スクランブルエッグと目玉焼き……?」

 

「本当はお姉様に影響されてオムライスを作りたかったんですけど、さすがに被せるのはどうかなって……途中で変更したらこうなりました」

 

「まあいいけどね、灑智のご飯って美味しいし♥」

 

 そしてボク達は席に着いて灑智の手料理を食べ始める。食事中の話題は当然【フォッダー】の話だ。

 

「そういえば、大会の詳細な日程が決まったらしいですよっ。1ヶ月後に本戦が始まるんですって」

 

「問題は試合形式ですけど、書いてありました?やっぱり【シングル】ですか?」

 

「ニュースによると……一回戦は【サバイバル】なんですって」

 

「【サバイバル】、ですか……!」

 

 全てのアイテムを没収された状態で、広大なマップをつかったバトルロイヤルを繰り広げる試合形式だ。炎属性の装備に頼り切りのボクにとっては不利な試合形式で――生産系のプレイヤーにとっては優位を取りやすい。

 

「やっぱり生産系のプレイヤーが活躍できる形式かー♥」

 

「生産に特化してるから戦闘はできない、なーんてプレイヤーはこのゲームではあまりいませんし、強力なライバルになりそうですね」

 

 【サバイバル】は生産系プレイヤーにとって優位な仕組みだが、だからといって彼らは【シングル】では勝てないというわけでもない。二回戦以降が別の試合形式でも獅子奮迅の活躍をすることだろう。

 

「本来の【サバイバル】は勝者が1人ですけど、今回は100人に絞るんですってっ。8つの【サバイバル】を同時に実施するそうなので、800人に絞られるのかな?」

 

 全参加者がごった煮の状態で100人に絞るわけではないんですね。【フォッダー】ならやりかねないと思っていたので、ちょっとほっとした。

 

 灑智の作ったスクランブルエッグをもぐもぐと食べながら、ボクは本戦までの1ヶ月をどう過ごすか考える。やはり生産系のシステムについて知識を深めておくべきでしょうね。とはいえ、もちろんバトル面の準備も必要です。装備はいくら準備しても【サバイバル】では使えないけれど、キャラクターのスキルや【転生】アバターなら、そのまま戦いに持ち込める。

 

 以前に獲得した【アイズ・ファミリア】のアバターを研究していくべきかもしれませんね。

 

「わたしも本戦が始まる前に【願いの石】を集めないとねー♥」

 

「まだ集めきってなかったんですか?不参加なんて許しませんよ!」

 

 とがみんはウィンナーをうさぎのようにちょこちょこと齧りながら、のんびりとした口調で話す。そういえばアリンドさんが【願いの石】を落としましたし、いざというときにはプレゼントしましょうかね。

 

 

 食事を終えて、ボクは『オグメレンズ』で灑智の言っていた大会の情報を集める。どうやら二回戦は【ダブル】のようだ。【サバイバル】が終わった後に、相方を自分で見つけろ!とのこと。どうしてもというときはランダムマッチングで戦うこともできるらしいが、基本は自分の戦術に噛み合う相方を見つけたほうがいいだろう。

 

 そして最終的には【シングル】で【フォッダー】の頂点を決めるらしい。【ダブル】で仲間だった人とも場合によっては争うことになるのだろう。

 

 相方かー。誰がいいかな?今から考えても仕方ないけど、つい考えを巡らせてしまう。

 

 やっぱりゆうたさんかな?純粋に連携を合わせやすいんですよね。灑智やとがみんもいいけれど、二人のどちらかを選ぶと、選ばれなかった方は拗ねちゃいそう。

 

 そんなことを考えていると、『オグメレンズ』に通知が表示された。お客さんのようだ。扉のロックを解除すると、凄い勢いで家の中に入ってくる。

 

「メグさんじゃないですか。どうしたんですか?こんな時間に」

 

「卍さん!!本戦の【ダブル】、私と組みましょうなのです!!」

 

「えっ、今日決めちゃうんですか!?」

 

 ボクだって組む人のことは考えていたが、一回戦を突破する前提で事前に約束をしようとまでは考えていなかった。この時点でそんな約束をするということは、自分はもちろん、相手も一回戦を突破して当たり前――そんな確信があるということだ。

 

「いやいや、そんな先のことを今決めなくても……」

 

「卍さんは人気だから先に唾をつけておかないと取られちゃうのです!!」

 

 感嘆符の感情表現(エモート)を表示させながら、メグさんは断言する。確かにね。さっきボクが候補にあげていたゆうたさんも、対人ではトップランカーですから、人気もあることでしょう。

 

「それもそうですね。それならメグさんと組みましょうか!一回戦の【サバイバル】もどうせチーミングで溢れかえるでしょうしね」

 

 二回戦に【ダブル】があるなら、一回戦の時点で協力をするのは自然なことだ。一般的にはチーミングは恥ずべき行為とされることが多いが、このゲームは仕様上可能なことは全部仕様だ。他のプレイヤーも平気で連携してくるだろう。

 

「やったーなのです!これで【ダブル】の突破は確定なのです!」

 

 もう勝負はついたと言わんばかりに喜ぶメグさんを微笑ましく眺めながら、ボクは1ヶ月後の本戦に思いを馳せた。

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