卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
ボクが【神威:無知なる無能】の付いた短剣を棚に戻し、他のアイテムを探す。
「あっ、卍さん!これとか面白そうなのです!」
【紫の意思】
[パッシブ]
効果:[自身]の[炎属性][ELM]と[水属性][ELM]を[2つ]の[ステータス]の[平均値]にする。[INT]を[下降]させる。
「あーダメですダメダメ。ボクは水属性には魂を売らないので」
----
>特化ステータスを装備で平均化できるのはかなり強いな
>INTへのペナルティ量にもよるけどな。この効果ならめっちゃ下降しそうだ
>まあ卍さんが炎属性以外に手を出すなんてありえない話よ
>風属性は良いの?
>……
----
「風属性はイメージ的にも炎とシナジーがあるからセーフです!【煈颷の刻印】もありますしね!」
燃え盛る炎は風の影響を受けてさらに激しさを増しますからね。逆に水属性はこのゲームでも炎属性のステータスと相反することが多い。システム的に相克するわけではないが、炎属性のELMを増加させるスキルはその多くが代償として水属性を下降させる。
炎属性と水属性の平均値を取るこの装備を有効に利用するなら、片方のステータスが下がるようではお話にならない。そういう意味でもカタログスペックほどの使い道は見いだせないだろう。
「卍さん、良い装備を見つけたょ!」
メグさんの見つけた装備について話し合っていると、視聴者さんに装備を紹介された。どうやら巨大な斧らしく、あからさまに禍々しいオーラを放っている。呪われた装備であることは間違いないが、この店の装備はだいたい呪われてますからね。どれどれ……?
【形稽古の流儀】
[パッシブ]
効果:[マクロ]の[出力]を[増加]させる。[マクロ][非適用時]、[相手]への[ダメージ]を[無効化]する。
「おおお!!これは神装備なのです!!」
「確かにメグさんにとっては神装備ですね!お手柄ですよ、視聴者さん!」
「私の名前はめるるだょ!覚えてね!」
「わかりました!めるるさん!」
どさくさ紛れに自己紹介をされたので、【フレンドリスト】に追加しておく。メグさんも同じくリストに追加したようで、めるるさんはメグさんにぺこぺこと辞儀をしていた。
「今日の収穫はこれで良さそうですね。一応ボクもこの斧は買っておきますか」
「なのです!次の企画は【マクロ】の研究会だから、ぴったりなのです!」
というわけでボクとメグさん、ついでにめるるさんは斧を【邪神ポイント】と引き換えに購入した。店に居た他の視聴者さんも斧を買っているようだったので、ちょっとした流行になるかもしれない。
斧を購入したボク達は【サッド街】の中央にある噴水前までやってきた。どこの街にも噴水はあるので、もしかするとリスポーン地点なのかもしれない。
「この辺なら場所も広くて実験しやすそうですね」
「町の外でやったほうがいいんじゃないのです?」
メグさんは周囲の建物を壊す心配をしているみたいだけど、配信的には町の外よりも町の中でやった方が見栄えも良い。
「周囲に迷惑をかけないように気をつけつつ、検証しましょう!」
----
>どうあがいても迷惑定期
>NPCの建物を不壊にしなかった運営が悪い定期
>ディスポサル城下町とか今毎日アリンドさんが暴れて倒壊してるよな
>暴れてるのはプレイヤー定期
>定期定期うるさい定期
----
「まずはこの前アリンドさんとの戦いの時に教えてもらった【ホームリターン】の【マクロ】を試してみたいですね」
「それなら私が作った【マクロ】をあげるのです」
そう言ってメグさんが【マクロ】を送ってくれたのだけど、数がやたらと多い。1000個以上の【マクロ】が雪崩れ込むようにボクのスキル一覧へ追加された。
「な、なんですかこれ!?多すぎるんですけど!」
「【マクロ】は記録した距離と方角にしか転移できないのです。だから全ての距離と方角を網羅したのです!そして、それらの【マクロ】は«テレポート»という統合管理用の【マクロ】で使い分けできるのです」
なるほど。要は【自動戦闘】の【マクロ】のように、【モーションアシスト】への指示を記録し、最適な選択を行うよう設定した【マクロ】で転移を行えるんですね。
試しに«テレポート»を起動してみると、狙った場所へ簡単に移動できた。近くへも遠くへも、【マクロ】を起動するだけで一発で移動できる。
あまりにも距離が離れた場所に転移しようとすると精度が悪化するのだけど、これは、その位置へ移動するための【マクロ】が用意されておらず、代わりに一番近い位置へ転移できる【マクロ】が使用されるためだろう。
1つ1つ相対座標を記録していく必要がある【マクロ】で全ての射程を網羅するのは不可能なので、当たり前の処理だ。むしろ不発にならないだけでありがたい。
「凄い【マクロ】ですね、メグさん!最強じゃないですか!スキルの【テレポート】は死にましたね!」
いつのまにか付いてきためるるさんも、ぴょんぴょん跳ねながら上空へ転移して遊んでいる。メグさんに【マクロ】を譲ってもらったのだろう。
「この【マクロ】は作るのにかなり時間がかかったのです。だから販売するべきか、悩みどころなのです」
『技能士』であるメグさんは自分の作った【マクロ】を販売しているが、そろそろ大会も近い。自分のためにとっておくべきか、悩んでいるようだ。とはいえ、タッグを組むと決めたボクはまだしも、めるるさんにも簡単に譲っているようだが……。
なんにせよ、メグさんの悩みはある意味で杞憂に終わることだろう。この話を聞いて、ボクはすぐにピンときた。
「いや……この発想は世に出た時点ですぐに真似されますよ。後発は1から手動で登録するなんてことはせずに、もっと楽な手段を選ぶはずですから」
「もっと楽な手段、です?」
「そう――【マクロ】を作る【マクロ】、ですよ」
マクロその15 『マクロテレポート』
【ホームリターン】を記録する事により生み出された«テレポート»を自動で使い分けしてくれる【マクロ】です。使用する前に『どの辺りに移動したい』と考えていれば、【モーションアシスト】が自動的に最適解となる«テレポート»用の【マクロ】を選択してくれます。