卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「メグさんは〘リアルステーション〙を知ってますか?」
「名前だけは知ってるのです。確かパソコンでVRゲームがプレイできるデバイスだとか……。【マクロ】とも相性が良いらしいのです」
「なぜ【マクロ】と相性がいいのか。それは、人間が操作しなくても【マクロ】である程度の行動を自動化できるからです。«自動戦闘»のように、最悪プレイヤーの意志が介在しなくても行動できるタイプの【マクロ】なら、人間が椅子に座ってなくても問題はありませんよね」
ゲームにおいて『マクロ』という言葉は複数の意味合いを持つ事が多い。1つはゲームシステムによって定義された操作簡略化の手段。そしてもう1つはシステム外のツールを利用したゲームの自動化だ。後者は基本的に非合法な物として扱うゲームも多いが、【フォッダー】の場合は公式に用意されたシステムを利用しているし、全てを仕様とするユーキさんの下では活用しても特にペナルティーは無い。
「細かな手順は実際に作りながら考える必要がありますが……座標を変えながら【マクロ】を記録する。この手順自体を【マクロ】で自動化すれば、寝ている間にも進捗が得られる筈です」
「なるほど、なのです!」
「後は会社システムを使うという手もありますね。試してはいませんが、会社システムで雇用できるNPCはスキルを持っています。彼らに【マクロ】を作らせれば効率よく進むかもしれません。【マクロ】は他者にコピーすることができるので、作業の分担もできますよ」
ボクが机上の効率化案を説明すると、メグさんはうんうんと頷く。
「――今、【マクロ】による自動操作で【マクロ】を記録できる事は確認したのです!後は会社システムも試してみたいのですけど……私は会社を立ち上げてないのです」
「それならボクの会社で試してみましょうか」
そうと決まれば善は急げだ。【ギルド】を経由して【ダスター都市】に飛び、町外れにある事務所を訪れた。
事務所の中では十数人ものNPCがせっせと【アンプルアロー】を作っていた。さらに【ロジング砂漠】から採取した妖精さんが部屋中をふわふわと飛び回っている。
その中から3人程を呼び出して【モンク】へ
「いけますね。従業員でも【マクロ】は作れるし、譲り渡すこともできるみたいです。従業員さんはかなり細かな生産指示まで受け付けてくれるので、複雑な記録もできそうですよ」
「えぇ……。私は«テレポート»を完成させるのに2週間掛かったのにです……」
頑張って積み上げてきた努力よりも遥かに効率の良い方法があったと知って落ち込むメグさん。けれどすぐに立ち直って「今度はあんな【マクロ】やこんな【マクロ】を作るのです!」と今後の展望に思いを馳せた。
さっそくボクは従業員に指示を出して、«テレポート»の移動座標をさらに拡充するよう求める。
【マクロ】による«テレポート»の記録方法は簡単だ。【ホーム】を置いて、【ホーム】から一歩離れた所で【ホームリターン】を行う。それを記録したら【ホーム】から二歩離れた所で【ホームリターン】を行う。これを全方向へ延々と繰り返すことで、転移可能な座標が無限に増えていく。
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>凄い地味な絵面だな……
>この苦行をメグさんは2週間もやってたってマジ??
>こんな仕事させるとかなんらかの法律に触れるだろ……
>人権侵害で通報しました。半分犯罪ですよ!
>全部犯罪だぞ
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コメント欄も突っ込みで溢れているが、もともとの仕事も延々と【アンプルアロー】を作り続けるものなので、単純さは変わっていないと思う。
「大丈夫です!1週間以内に【フォッダー】全域を網羅します!ご安心ください、社長!」
「そこまでやれとは言ってないんですけど!?」
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>言わせてて草
>マジかよ卍さん最低だな
>社長の命令は絶対だぞ
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「さすが卍さんなのです。社員からの信頼も厚いのです!」
「いや、たぶんこのゲームの社員はみんなこんな感じなんだと思いますけど……」
と、適当な事を言ったがコメント欄からは『うちの田中はサボってばかりで仕事しません』『有給を与えないと暴れるぞとボイコットされて会社が潰れました』などとタレコミがいくつも寄せられた。どうやら社員の人格に左右されるらしい。
「えっと、有給とかいります?」
「いりません!無限に働かせてください!!!!!」
「この人、旧世代AIの人ですね。間違いありません」
旧世代AIの人は働きたがりだからね、仕方ないね。
ほどほどに疲れたら休んでね、と『命令』して、差し入れに【パインサラダ】をいくつか譲り渡した。
「さて。これで«テレポート»は近いうちに拡張されるでしょう。それでは、次のお題に行きましょうか!メグさん、何かありますか?」
「また私に振るのです!?」