卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第380話 必殺技

「私に聞くって事は、やっぱり【マクロ】についての提案を期待されてるんですよね?うーん……」

 

 さすがに無茶振りでしたかね?首をひねりながらうーんと考え込むメグさんを微笑ましく眺めていると、視界の隅で手が上がった。

 

「はいはーい!私に提案がありますょ!」

 

「おや、めるるさん。お聞きしましょうか!【マクロ】の検証ですか?もちろんそれ以外でも歓迎ですよ!」

 

 めるるさんは高く掲げていた手を下ろし、胸に当てながら答えた。

 

「超強力な必殺【マクロ】が欲しいんですょ!」

 

「なるほど、なのです」

 

 めるるさんの提案は【マクロ】の原点に立ち返った、一周回って斬新な発想だ。

 

 かつて【マクロ】という機能は現行の【モーションアシスト】と同じように、熟練度(プレイヤースキル)の違いを補完するために実装されたものだった。運動が苦手なプレイヤーでも達人の華麗な動きを再現でき、最適に近いアクションを行える。

 

 当時作られていた【マクロ】は『正拳突き』や『パワースラッシュ』、〚ライトニングボルト〛のように攻撃動作に軸を置いていたことも特徴だ。

 

 しかしこのゲームで使われている【マクロ】は当時の必殺技のような立ち位置ではなく、移動のサポートや【モーションアシスト】への指示を効率化するものが多い。

 

 最初にメグさんと知り合った時に教えてもらった«五月雨突き»はスキルめいたものだったけれど……。逆に言えばそれくらいだ。

 

「必殺技ですか。面白そうですね!ボクの発想ではAGIを高めて«五月雨突き»の更新版を作るくらいしか思いつきませんが……何かあるかな」

 

 当時教えてもらった«五月雨突き»は今の光速環境では既に陳腐化している。同じAGIでも、当時と今では最高速度が違うのだ。同じように【マクロ】を記録しなおせば、現環境の基準でも十分に必殺技を名乗れるとは思うけれど……。それだと以前の焼き直しでしかありませんからね。

 

 ボクもメグさんと同じように首をひねりながら顎に手を当てて考え込む。面白いけれど難しいお題だ。

 

「全能技を記録してみるのです?」

 

「いや、全能技はよほど上手くやらないと【マクロ】では記録できないんですよ。蝶の羽ばたきは嵐を呼び起こす……。この羽ばたきという動作を記録することはできますが、同じ羽ばたき方で常に嵐が起きるわけではありません。周囲の環境に応じて羽ばたき方を計算する必要がありますからね」

 

 計算した上で羽ばたくよう【モーションアシスト】に指示する【マクロ】にすることはできるが、必殺技とは趣が違うとボクは思う。仮に全能技を【マクロ】にするなら、あくまで動作そのものを記録したいところだ。

 

 ボクは【ストレージ】から剣を取り出し、適当に振るってみる。すると剣閃に沿うようにして衝撃波が中空を駆け抜けた。

 

「これは一見すると必殺技っぽいですが、【モーションアシスト】を使えば記録するまでもなく使用できますからね。あくまで【マクロ】特有の事前準備を重ねて初めて使えるような技が良いですよね」

 

「【マクロ】は高めたAGIによる動作を記録することはできるけれど……逆に言えば準備できるのはそれだけなのです。STRをいくら高めても実際の威力は【マクロ】を使用したときのステータスに依存するのです」

 

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>まあAGIを上げれば適当に剣を振るうだけでも必殺技っぽくなりそうだけどな

 

>複数のマクロを組み合わせるのはどう?テレポートとマクロテレポートみたいに

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 ボクはおもむろに«五月雨突き»を発動しながら考えてみる。

 

 棒立ちの状態で起動すると、ボクの身体は自動的に武器を構え、剣を鋭く突き出す。どんな姿勢から起動しても、記録したときの姿勢へ移行してから武器を突き出している。

 

「メグさん、この構えに移行する動作は【マクロ】で記録したわけではないですよね?」

 

「なのです。あくまで初期状態の姿勢に移行するための動きなのです」

 

「……この動きって、【マクロ】の一部なんですかね?」

 

 ボクが気になっているのは、この動きが【マクロ】というシステムの原則に従っているのか、ということ。

 

 記録した動作を忠実に再現するからこそ、動作中に後退(ノックバック)させられたり、動きを妨害されたりすることはない。それが【マクロ】だ。確かに理にかなっている。しかし予備動作は記録された手順ではない。つまり妨害することが可能なのか、あるいは――。

 

 ボクが«五月雨突き»を起動すると同時に、メグさんが腕を掴んで予備動作を阻害する。するとどうなるか。

 

 結果はすぐにわかった。

 

「予備動作も【マクロ】のルールに従っている……」

 

「ということはどういうことか、わかりますね?」

 

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>まったく意味がわからんぞ!

 

>だからどうした定期

 

>ヤバイなこれ、環境が変わるぞ

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「【マクロ】は妨害されずにその動作を強引に再現できるという点で、他のあらゆるアクションよりも優先度が高い。にもかかわらず、実際に使用される機会はそう多くありません。それはなぜか? 記録したアクションしか行えないからです。けれど――」

 

「予備動作そのものを発動の目的にしてしまえば、状況に合わせた動きを【マクロ】の優先度で行える、ということなのです」

 

「そういうことです。もちろん使い方は難しいですが、そこは【モーションアシスト】に任せてしまえば問題はないでしょう。そしてこの仕組みを利用すれば――必殺技だってできちゃいますよ」

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