卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第381話 ソーラーレイ

「必殺技!楽しみですょ!」

 

「どんな感じの技にするのです?」

 

「そうですね、今回はレーザービームとかにしてみましょうか」

 

 【マクロ】の動作の幅が増えるのであれば、全能技も記録できるようになる。

 

 当然ながらAGIに補正を乗せることも忘れない。メグさんから【マクロ】記録用のAGI強化装備を借り、ボクはレーザービームを起動する前段階の状態を記録した。ほんの一瞬……刹那にも満たない時間の記録だ。これで身体のポーズを指定するだけの【マクロ】が完成した。

 

 次にレーザービームを発動するための準備状態を記録する。今回は掌に光を集めて放つタイプのレーザーを想定しているので、自らの身体を構成する量子を反射板に変換した瞬間を記録した。

 

 最後に、光を発射する瞬間の状態を記録する。掌に集めた光の反射角を変えて、前方に打ち放つ。この反射角を変えた状態を記録した。

 

 この3つの【マクロ】を連続で起動することで、AGIの補正を受けた最速の挙動でレーザーを放てる。実際にはこれら3つのステップの間には様々な制御手順が存在するわけだが、それらを【マクロ】起動前の予備動作で成立させる。これができれば……。

 

 そしてボクは【マクロ】を起動した。掌に光が瞬時に集まり、『光速』で射出される。

 

 動作だけを見れば【モーションアシスト】でも再現可能だろう。しかし限りなく高められたAGIによって実行される今回の全能は、吸光効率が桁違いだ。

 

 光の速度は不変であり、そして物体が速ければ速い程に時間の進みは遅くなる。となればAGIを上げれば上げるほど、通常よりも速く光のエネルギーを集められるのは当然のことだ。

 

 と、ボクが説明をしているとコメントが流れてくる。

 

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>でもこのゲームってよく光の速度に達したとか、光を超えたとか騒いでるよね

 

>おっ、矛盾か?

 

>光の速度に達したと思い込むことで速さを生み出すテクだよ。俺は詳しいんだ

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「このゲームは光の速度であると断言することで、実際に速度が増加しますからね。けれど嘘はついていませんよ。恣意的な解釈を行ってるだけです」

 

「どういう事なのです?」

 

「光の速度に近づくことで時間は短くなり、空間は縮むでしょう?つまり観測者によっては、光の速度である30万km/sを超える距離を移動できる速度だと解釈できるんですよ」

 

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>後付設定で草

 

>適当ぶっこいてて草

 

>つまり卍さんは嘘つきという事ですね

 

>明日には専門家に刺されて血まみれになってそう

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「まあ細かい理屈は置いておきましょう。とにかくこの一連の【マクロ】を«ソーラーレイ»と名付けます! めるるさん、満足していただけましたか?」

 

「満足したですょ!«ソーラーレイ»……!かっこいいですょ!」

 

 さっそく【マクロ】をめるるさんに渡すと、喜んで連発し始めた。周囲の建物が次々と崩れ去っていく。

 

「だ、大丈夫ですか?指名手配されちゃいますよ?」

 

「大丈夫ですょ!この必殺技でPKしに来たプレイヤーをボコるので!」

 

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>建物の心配をしろ定期

 

>サイコパスの発想である

 

>めるるさんは喜んでるからセーフ

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 実際、この技だけでプレイヤーを相手取れる保証はしていないけれど、うまく当たれば必殺なので問題はないだろう。

 

「さすが卍さん、私には無かった発想なのです!『技能士のお師匠様』という二つ名を進呈するのです!」

 

「わーい、ありがとうございます!」

 

 メグさんから二つ名を進呈されて、ボクはハートの感情表現(エモート)を浮かべながら喜びを表現する。二つ名を貰うのは、これで二度目でしたっけ。以前は漆黒の翼さんに『適応せし者』という名前を貰った気がする。

 

「それでは良い感じに場も温まったので、そろそろ本題と行きますか! それでは――」

 

 ここまでの【マクロ】についての話はただの前座。メグさんとコンビを組むことを決めたボクはこれから2人で【ダブル杯】に殴り込むのだ。そう口にしようとしたボクの意識は、一瞬にして途絶えた。

 

 

 そして『VRステーション2』の中で目を覚ます。視界の前では『サーバーとの接続が切断されました』という一文が表示されていた。

 

「おや、珍しい。回線切れですかね?」

 

 すぐに再接続しようと思ったのだが、『サーバーが見つかりません』とエラーメッセージが無慈悲に表示された。

 

「えっ、嘘でしょ?鯖落ちした?あの【フォッダー】が??」

 

 すぐに『VRステーション2』から飛び出すと、灑智がデスクに座っていた。そしてとがみんが遅れて顔を出した。

 

「お姉様、どうやら【フォッダー】のサーバーがダウンしてしまったようです」

 

「確かに【フォッダー】はクソ運営だし、クソ運営は時に鯖落ちするものですが、このゲームに限ってはそんなことは起こらないと思ってましたね……。ひとまず復旧を待ちますか」

 

 ボクは配信のコメント欄に『復旧したらすぐに再開します』と書き込みを残して、【フォッダー】についての情報を集め始めた。




マクロその16 『ソーラーレイ』
3つの【マクロ】を組み合わせた【マクロ】です。光を一点に集めてから照射する、至ってシンプルな全能をAGIの増加によって強力な出力に仕上げました。
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