卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「必殺技!楽しみですょ!」
「どんな感じの技にするのです?」
「そうですね、今回はレーザービームとかにしてみましょうか」
【マクロ】の動作の幅が増えるのであれば、全能技も記録できるようになる。
当然ながらAGIに補正を乗せることも忘れない。メグさんから【マクロ】記録用のAGI強化装備を借り、ボクはレーザービームを起動する前段階の状態を記録した。ほんの一瞬……刹那にも満たない時間の記録だ。これで身体のポーズを指定するだけの【マクロ】が完成した。
次にレーザービームを発動するための準備状態を記録する。今回は掌に光を集めて放つタイプのレーザーを想定しているので、自らの身体を構成する量子を反射板に変換した瞬間を記録した。
最後に、光を発射する瞬間の状態を記録する。掌に集めた光の反射角を変えて、前方に打ち放つ。この反射角を変えた状態を記録した。
この3つの【マクロ】を連続で起動することで、AGIの補正を受けた最速の挙動でレーザーを放てる。実際にはこれら3つのステップの間には様々な制御手順が存在するわけだが、それらを【マクロ】起動前の予備動作で成立させる。これができれば……。
そしてボクは【マクロ】を起動した。掌に光が瞬時に集まり、『光速』で射出される。
動作だけを見れば【モーションアシスト】でも再現可能だろう。しかし限りなく高められたAGIによって実行される今回の全能は、吸光効率が桁違いだ。
光の速度は不変であり、そして物体が速ければ速い程に時間の進みは遅くなる。となればAGIを上げれば上げるほど、通常よりも速く光のエネルギーを集められるのは当然のことだ。
と、ボクが説明をしているとコメントが流れてくる。
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>でもこのゲームってよく光の速度に達したとか、光を超えたとか騒いでるよね
>おっ、矛盾か?
>光の速度に達したと思い込むことで速さを生み出すテクだよ。俺は詳しいんだ
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「このゲームは光の速度であると断言することで、実際に速度が増加しますからね。けれど嘘はついていませんよ。恣意的な解釈を行ってるだけです」
「どういう事なのです?」
「光の速度に近づくことで時間は短くなり、空間は縮むでしょう?つまり観測者によっては、光の速度である30万km/sを超える距離を移動できる速度だと解釈できるんですよ」
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>後付設定で草
>適当ぶっこいてて草
>つまり卍さんは嘘つきという事ですね
>明日には専門家に刺されて血まみれになってそう
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「まあ細かい理屈は置いておきましょう。とにかくこの一連の【マクロ】を«ソーラーレイ»と名付けます! めるるさん、満足していただけましたか?」
「満足したですょ!«ソーラーレイ»……!かっこいいですょ!」
さっそく【マクロ】をめるるさんに渡すと、喜んで連発し始めた。周囲の建物が次々と崩れ去っていく。
「だ、大丈夫ですか?指名手配されちゃいますよ?」
「大丈夫ですょ!この必殺技でPKしに来たプレイヤーをボコるので!」
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>建物の心配をしろ定期
>サイコパスの発想である
>めるるさんは喜んでるからセーフ
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実際、この技だけでプレイヤーを相手取れる保証はしていないけれど、うまく当たれば必殺なので問題はないだろう。
「さすが卍さん、私には無かった発想なのです!『技能士のお師匠様』という二つ名を進呈するのです!」
「わーい、ありがとうございます!」
メグさんから二つ名を進呈されて、ボクはハートの
「それでは良い感じに場も温まったので、そろそろ本題と行きますか! それでは――」
ここまでの【マクロ】についての話はただの前座。メグさんとコンビを組むことを決めたボクはこれから2人で【ダブル杯】に殴り込むのだ。そう口にしようとしたボクの意識は、一瞬にして途絶えた。
そして『VRステーション2』の中で目を覚ます。視界の前では『サーバーとの接続が切断されました』という一文が表示されていた。
「おや、珍しい。回線切れですかね?」
すぐに再接続しようと思ったのだが、『サーバーが見つかりません』とエラーメッセージが無慈悲に表示された。
「えっ、嘘でしょ?鯖落ちした?あの【フォッダー】が??」
すぐに『VRステーション2』から飛び出すと、灑智がデスクに座っていた。そしてとがみんが遅れて顔を出した。
「お姉様、どうやら【フォッダー】のサーバーがダウンしてしまったようです」
「確かに【フォッダー】はクソ運営だし、クソ運営は時に鯖落ちするものですが、このゲームに限ってはそんなことは起こらないと思ってましたね……。ひとまず復旧を待ちますか」
ボクは配信のコメント欄に『復旧したらすぐに再開します』と書き込みを残して、【フォッダー】についての情報を集め始めた。
マクロその16 『ソーラーレイ』
3つの【マクロ】を組み合わせた【マクロ】です。光を一点に集めてから照射する、至ってシンプルな全能をAGIの増加によって強力な出力に仕上げました。