卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

392 / 542
第383話 第六感

 【OA-YS】の世界に新規アカウントを作ってログインする。ログイン地点の指定を求められたので、【サウスエリア】を選んだ。

 

 瞬間的に視界が切り替わり、牧歌的な雰囲気が漂うのどかな田舎町に飛ばされる。

 

 周囲を見渡すと、すぐ近くにメグさんの姿があった。手を振りながら呼びかけると、メグさんもとことこと近づいてきて、同じように手をあげる。ぱちんとハイタッチを交わして笑いあった。

 

「本当に卍さんなのです?水着姿じゃないからわからなかったのです」

 

「メグさんは現実(リアル)でも知り合いなんだからわかるでしょー!普段は水着なんて着てませんから!」

 

 ボクの初期装備はワークショップで売っていそうな地味な色合いの作業着に巨大なスパナ。どう見てもオンラインゲームの初期装備とは思えない有様だ。

 

 足元には『初心者救済ボックス』と記された宝箱がある。ネットの情報によると、初期資金や武器と防具が入ってるのだとか。

 

 『初心者救済ボックス』は周囲にいくつも点在しているが、基本的に開けられるのは1人につき1つまでだ。

 

 聞くところによると、これはシステム的に実装されたキャンペーンアイテムなどではなく、このゲームの熱心なユーザーであるテトリスさんが用意しているものらしい。ありがたく頂いておこう。

 

「中身は……オーソドックスな剣と盾ですね」

 

「わたしは両手持ちのハンマーだったのです」

 

 エンチャントを見ると、ご丁寧にもゴブリン特攻の効果が3重に乗っている。このゲームのダンジョンでは、序盤のボスがゴブリンだからなのだろう。至れり尽くせりだ。

 

「本来なら『就職システム』とかいうので武器や防具を購入する初期資金を集める必要があるらしいですよ」

 

「ほえー。大変なのです。でも今はもう武器や防具が揃っているから……」

 

「初手ダンジョン攻略でも問題ないということですね!行きますよ!」

 

 配信も早速ONにして準備は万端!以前到達した50階までノンストップで駆け抜けましょう!

 

----

>なんか配信始まったけど誰だこの人?

 

>知らん人とメグさんが配信してる

 

>まさか卍さん、アカウントを乗っ取られたのか?

 

>こんな地味な作業着を着ているプレイヤー、心当たりないぞ

----

 

「みなさん、わざとらしいですよ!!ボクですよボク、卍荒罹崇卍ですよ!」

 

 すっとぼけたコメントを連投する視聴者さん達に文句を言いながら、ダンジョンの入り口へと向かった。

 

 

 ダンジョンに入ると、中には見覚えのある石造りの通路が広がっていた。なんの変哲もない通路にしか見えないが、ボクの『第六感』が警告を発する。

 

「やっぱり(トラップ)だらけですね……」

 

 今のボクは(トラップ)を発見することに特化した【戦略(スタイル)】……【パスファインダー】ではないが、長年の経験から危険な場所が手に取るようにわかる。

 

 危険な予感のする場所を避けながら、メグさんを先導していく。ボクの勘に狂いはないらしく、今のところは(トラップ)に引っかからずにダンジョンを進めている。

 

「どうやって判断してるのです?(トラップ)は【モーションアシスト】でも見破れないはずなのです」

 

「これはまさに勘としか言いようがありませんね。もしかすると無意識のうちに非公開情報を読み取っているのかもしれませんが……《『第六感』》が〈進化(エボルド)〉していると考えた方が自然でしょう」

 

----

>第六感が進化するゲーム

 

>マジかよ俺も第六感欲しい

 

>すまん、モーションアシストでよくね?

 

>トラップの位置とかはモーションアシストで読めないようになってるんだよ

----

 

 いつも理屈をこねくり回してとにかく説明することを心掛けているボクだが、今回ばかりは説明できないとしか言いようがない。

 

 けれどコメント欄でも言われている通り、この能力は――【モーションアシスト】に似ている気がする。

 

 【モーションアシスト】は無限のシミュレーションから最適解を受け取るシステムだが、なぜその行動が最適解なのかという理屈は教えてくれはしない。

 

 《『第六感』》もそれと同じなのではないか?【モーションアシスト】の仕組みが身体に刻み込まれたのでは――なんて思考を巡らせるが、やはりこの説明も妄想に近く、明確な根拠はない。

 

「【モーションアシスト】にマスクされてる情報を感知できるとは、便利そうなのです。私も頑張って〈進化(エボルド)〉してみるのです!」

 

「まあ理屈はともかく、そういう力があるとわかってて、それを手に入れたいと思っていたら、すぐに〈進化(エボルド)〉できると思いますよ。【モーションアシスト】ってそういうものですし」

 

 そんな説明をしていると、通路の曲がり角から【ゴブリン】が現れた。このゲームの敵は基本的に(トラップ)を踏むことがない。一直線にボク達へ接近してくるが――。

 

「いくらなんでも遅すぎる、のです!」

 

 迎え撃つようにしてメグさんが振るったハンマーはゴブリンの頭部にジャストヒット。一撃でHPを全損させた。

 

「特攻武器の恩恵もありますが、この程度ではボク達は止められませんね。どんどん進みますよ!」

 

「おー!なのです!」




進化(エボルド)その4『第六感』
根拠無しに最適な道筋を導く特殊な感覚です。
実際には無意識のうちに得た明確な根拠から結論を出しているのかもしれませんが、
少なくともボクにとっては自覚がありません。
なんとなくですが、【モーションアシスト】の機能に似ているような……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。