卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
確かここには【ダイゴブリン】という巨大なモンスターが出現する筈だ。プレイヤーのHPを一撃で全損させる凄まじい火力を持つモンスターで、〈地形嵌め〉を使わなければ安全に倒せなかったことを覚えている。
部屋に入ると、中央に巨大な魔法陣が浮かび上がり、周囲から粒子が集まっていく。そして体長10mを超える巨大なモンスター、【ダイゴブリン】が出現した。
「以前ならまだしも――」
「――今の私達なら負ける気はしないのですっ!」
メグさんが巨大なハンマーを振りかぶりながら、【ダイゴブリン】の左手側に駆ける。それならボクは右手側だ。
【ダイゴブリン】は腕を高く振り上げ、ボク達を目掛けて叩きつけるように振り下ろすが、さすがに遅すぎる。サイドステップで華麗に回避して、地面についた右手に剣を突き刺した。
メグさんも同じように攻撃を受けていたが、彼女は振り下ろされた左手の上にぴょんと飛び乗り、【ダイゴブリン】の頭上まで駆け登る。そして頭部にハンマーを勢いよく叩きつけた。
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>メグさんの方が動きがアクロバティックだな
>卍さんの動き、地味過ぎて草
>もっと配信を意識しろ定期
>そんな定期は無い
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ボクの攻撃よりも、頭部を叩いたメグさんの一撃のほうが効いているのは間違いないらしい。【ダイゴブリン】はボクを無視して両手を頭部に回し、メグさんの排除を試みる。
これは視聴者さんの言う通り、ボクの意識が低すぎたようですね……!
とはいえ、今から二人で頭部を狙っても仕方ない。ボクは敵視がメグさんに向いているうちに、【ダイゴブリン】の足元へと向かう。そして剣を足と地面の隙間に滑らせるようにして差し込んだ。そのまま剣に軽く力を掛けるだけで、【ダイゴブリン】は勢いよく前方に転倒する。
メグさんは転倒しようとする【ダイゴブリン】の勢いに任せて跳躍し、地面に倒れ込んだその頭部にハンマーを叩きつける。
「これで、『とどめ』なのです!」
その一撃が全てを終わらせた。【ダイゴブリン】は倒れ伏したまま起き上がろうとはせず、沈黙する。【フォッダー】とは違い、【OA-YS】は倒したモンスターの身体がその場に残り続けるのだ。
「さすがメグさんです!よく『とどめ』だとわかりましたね!」
【OA-YS】はモンスターのHPゲージという概念もないので、「これで『とどめ』だ!」と叫びながら放った一撃が致命傷になったかどうかは実際のところプレイヤーにはわからない。
とはいえ、今の一撃で『とどめ』になることはボクにもわかっていた。
「なんか、なんとなくこれが『とどめ』なんだな、って思ったのです。これは……」
「なるほど、それも《『第六感』》でしょうね」
【モーションアシスト】はゲーム的にマスクされている情報を読み解くことができない。けれど《『第六感』》はそういった制約すらも無視して、情報を得ることができる。
その代わり、受け取れる情報は最適解というより曖昧な『勘』に過ぎず、ともすれば見落としてしまうほど僅かなものだ。それでも意識していれば有効に活用できる。
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>もっと論理的に話をしろ。第六感とか勘とか言うな
>勘なんだから仕方ないやろ
>フォッダーのプレイヤーにしかわからない感覚だからね仕方ないね
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「さて、第一層は簡単に突破できました。ここからはノンストップで駆け抜けますよ!」
「目指すは五十層なのです!」
そこからは破竹の勢いでダンジョンを攻略していった。本来のキャラデータではないとはいえ、一度攻略したダンジョンで負けるようなヘマはしない。十層、二十層と攻略を続けていき、【聖雷様】が支配する三十層も危なげなく突破した。
「【フォッダー】のスキルが使えないのは難点ですが、『全能』があれば問題はないですね」
遠隔攻撃を主軸に攻めてくる【聖雷様】は、近接主体では厳しかったかもしれないが、『全能』で火炎放射を軸に押し切ることで対処できた。雷の魔法についても、周囲の湿度を操作して向きを逸らし、対処した。
そして現在のボク達は四十九層にある階段の前にいる。次にあるのは五十層。以前は【レギオン】を組んで、城塞を建てた上で万全の体制で臨んだ階層だが……負ける気はしない。
「多数を相手取るなら【フルバーニング】があった方が望ましいですが……なくてもなんとかなるでしょう」
「ここまでの階層である程度は装備も揃ったのです。厳選はしてないけど、意外といい感じなのです!」
ボクはきらきらと煌めく魔法のローブを華麗に着こなし、真っ赤に燃え盛る剣を手にしている。アンマッチな見た目だが、装備のエンチャントを重視したコーディネートだ。
メグさんは巨大な斧を背負った重戦士の姿になっている。金属の鎧や篭手を着けていて、統一感が素晴らしい。三角帽子を被っているのがマイナスポイントだが、そのミスマッチ感もきゅーとと言える。
「よし、行きましょうか!サポートは頼みますね!」
「近づく敵は対処するのです。安心して攻めるのです!」
そしてボク達は意気揚々と階段を降りて――降りた先にいたのは、モンスターの軍勢。
ボクはおもむろに掌から炎を生み出し――勢いよく爆発させた。