卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第390話 ゲームをさせろ

 アクタニアにかくかくしかじかと現在の状況を説明する。説明を受けた彼は、天を仰いで絶望の表情を浮かべた。

 

《なんだよ、上位次元からの侵略者って……。同次元の格下にも負けるような私が勝てる訳ないじゃないか》

 

「やけに自分を卑下しますね。制約によって能力を縛られていなければ、固有の能力を持つ分だけ我々よりは優位だと思いますが。それにあなた自身が戦うのではなく、我々や灑智を強化するのでも構いませんよ」

 

《……わかった、わかったよ。協力するよ。ただ、個人的には荒罹崇……さんを強化するのは恐れ多い。あなたの妹についてもね、だからそこの人間達でいいか?》

 

「構いませんよ。ゆうたさんとメグさんを強化しちゃってください!」

 

《わかった、それなら改めて説明だ。私自身も荒罹崇さんに負けるまでは自覚していなかったのだけど、この能力は受ける側の認知によって効力が変わる。私は強くなれとだけ命令するから、強くなることの方向性や段階についてはそちらで決めてくれ》

 

「わかったのです!」

 

「了解した。基本的には《『位階上昇(アセンション)』》を意識するが、同じ次元に到達するだけでは勝てぬかもしれないからな」

 

 そしてアクタニアはゆっくりと深呼吸してから、静かに告げた。

 

《そうそう、私の名前は『ActorNya』だ。それじゃいくよ……《『強くなれ』》》

 

 その言葉を受けてもゆうたさんとメグさんの外見には変化がなかった。《『心眼』》でも読み取れない。今のボクの眼では観測できない次元において〈進化(エボルド)〉が行われたからだ。

 

 そこで〈ロールプレイング〉によってアクタニアとゆうたさんの思考を再現し、〈進化(エボルド)〉の過程を主観的に読み取る。肉体をどのように変化させることで《『位階上昇(アセンション)』》が行われたか、それを理解した。

 

 理解してしまえば、後は簡単だ。自分の身体も同じように変化させればいい。【モーションアシスト】による『最適解』がなくても、アクタニアによる『権能』の恩恵がなくても、『答え』を知っていれば〈進化(エボルド)〉させるのは難しくない。

 

 上位次元の存在を観測できるように《『心眼』》を拡張し、こちらから干渉を仕掛けるため、肉体も上位へ拡張させる。

 

「よし、これで準備は整った。行くぞ。荒罹崇、メグ!」

 

「えっ、卍さんも行くのです?卍さんは〈進化(エボルド)〉できてないんじゃ……」

 

「大丈夫です。弾除けくらいはできますよ。行きましょう!」

 

 ゆうたさんの言葉に応えてユーキさんがいくつものウインドウを起動し、プログラムを実行していく。

 

「わかりました、ここから灑智さんの場所にみなさんを転移させます――ご武運を!」

 

 その言葉と共に周囲の景色は瞬間的に切り替わり――ボク達は画面越しに見ていた高層ビルの狭間に転移した。

 

 転移した瞬間にゆうたさんが前方へと加速する。眼前には機械で構成された四足歩行の大型犬が一体いた。ゆうたさんは一瞬でそれに肉薄し、全力で蹴り飛ばす。

 

「らしくない戦い方ですね!」

 

「銃刀法違反なのでなっ!」

 

 渾身の蹴りを受けて大型犬は身体の一部を損壊させながら大きく吹き飛ばされる。上位次元の存在なので周囲の建物に衝突することはない。数kmほど吹き飛ばされたところで体勢を整え、こちらへ迫ってきた。

 

「あいつ、突進以外の攻撃手段がないのです?機械の身体の割には随分と原始的なのです」

 

 そうメグさんが軽口を叩いた矢先、大型犬はおもむろに口を開く。次の瞬間、その口内から強大なエネルギー弾が放たれた。

 

「わわっ、そんな隠し玉があるのですっ!?」

 

 エネルギー弾の性質はひと目見ただけでわかった。あのエネルギーはボク達の暮らす次元には何一つ影響を与えない。上位次元の存在を倒すための攻撃手段だ。

 

「けれど、その程度の攻撃なら――こうなのですっ!」

 

 メグさんが手を軽く振るうと、巨大な上位次元のハンマーが生成される。そして大きく斜め下に構え――掬い上げるように振るった。

 

 それだけでエネルギー弾は軌道を大きく逸らし、明後日の方向へ飛んでいく。

 

 続けて何発かのエネルギー弾が発射されたが、それら全てをメグさんは打ち返した。最後に撃ち返した弾は大型犬へと命中し、頭部がバラバラに打ち砕かれる。

 

 頭部を砕かれても、大型犬の戦意は消えない。破壊された頭部から露出した銃口が、さらなるエネルギーを放出しようとして――。

 

「そろそろ諦めてくださいね」

 

 〚テレポート〛で背後に回り込んだボクが優しく機械の身体に触れると、大型犬はまるで戦意を喪失したかのように倒れ込む。

 

 ボクが触れたのは、先程の攻撃で露出したエネルギー結晶だった。ボクはそこからエネルギーを吸い取り、動力源を停止させたのだ。

 

「やりましたねっ!さすがみなさんですっ!」

 

 後方で戦況を眺めていた灑智が褒めてくれるが……。

 

「状況は厳しいな。この機械……どう考えてもあちら側の主力ではないだろう」

 

「次元こそ違いますが、ボク達の世界なら体当たりとエネルギー砲しか攻撃手段を持たない機械なんて作りませんからね。それにもっと大量に作るでしょ」

 

 ゆうたさんの分析にボクも頷く。だが、メグさんは別の見方を示した。

 

「逆にこれくらいしか手立てがない可能性もあるのです」

 

「えっ?」

 

「エネルギー弾は明らかに私達の世界に対する攻撃手段ではなかったのです。相手は上位次元に対応する兵器と下位次元に対応する兵器を分けて製作している。希望的な見方をすれば――下位次元の物質界に対応できる兵器が、体当たりくらいしかないのかも」

 

「なるほど。こちらが上位次元に干渉するのに一苦労したように、あちら側が下位次元に対応するにも工夫が必要ということですか」

 

 ただしその見方が正しかったとしても、次にさらなる新兵器が開発されない保証はどこにもない。こちらから打って出ない限り、お相手は延々と尖兵を差し向けることができるのだ。

 

 そして何よりこの事態が解決しなければ【フォッダー】も復活しない。

 

 いつまで脇道に逸れてるんですか!ゲームをさせてください!

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