卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第391話 めんへら系美少女

 侵略者を撃破し、ボク達は再びユーキさんの秘密基地へと移動する。今度は灑智も一緒だ。

 

「今のところは更なる侵略者がこの世界に入り込むようなことは起きていないようです。〚世界結界〛も破られていませんっ」

 

「ちなみにその〚世界結界〛ってのはなんなのです?」

 

「私がこの世界に張っているバリアのことです。友好的な存在以外は弾くように設定してあって、破られた場合もそれを認識できるんです」

 

 灑智個人が張っているバリアということか。相変わらずスケールが大きい話だ。灑智の話を聞いて、侵略者に対応できた理由は理解できた。

 

「ちなみに【フォッダー】の運営を妨害している侵略者さんは……」

 

「先程の侵略者と同時に侵入したようです。恐らくは三体……先程の侵略者を除くと二体の侵略者がこの世界に残っているようです」

 

 灑智からは有力な情報を得られた。二体の侵略者か……それらを叩き潰せば【フォッダー】の運営は再開できる。

 

 けれど、再開できたところでなんだと言うのだろう?新たな侵略者が追加で攻めてきたらすぐにでも【フォッダー】はサービスを止められてしまう。根本の要因を解消しないといけない。

 

「下手をすれば戦争になりかねんな……」

 

「どうすればいいのです?わからないのです……」

 

 ゆうたさんもメグさんも、あまりにも広い範囲への対応を求められるこの状況に困惑しているようだ。無理もない。今までなら騒動の中心となる存在を打倒すればそれで終わりだった。けれど今回は違う。世界という集団が相手なのだ。

 

 ユーキさんも判断を下せず、沈黙を保っている。でも、決めなければならない。これからの方針を。

 

「――ユーキさん、意見が無ければボクで決めちゃいますけど、構いませんか?」

 

「……荒罹崇さん?」

 

「いやね、久々に怒ってるんですよ。ボクは」

 

 これまでのありとあらゆる騒動はゲームが中心だった。確かにゲームの存在そのものを冒涜するような事件もあったけど、決着はあくまでゲームの中でついていた。

 

 だからボクは【フォッダー】を良いゲームだと思っているし、これまでのことも楽しい思い出として記憶に収めている。

 

「お相手の世界に殴り込みに行ってきます。この世界の侵略者を潰そうが、根本の解決にはなりませんからね」

 

 そう宣言すると同時に〈ロールプレイング〉を起動し、世界の位置を逆算する。《『位階上昇(アセンション)』》を果たした今であれば、世界を渡ることもそれほど難しくはないだろう。

 

「戦争になるかもしれませんが……」

 

「既にこの状況は戦争でしょう。とはいえ殺し合いをするつもりはありません。なんとか喧嘩で収めてきますよ」

 

「荒罹崇、俺達も――」

 

「――要りません。足手まといです」

 

 ぴしゃりと告げて、ゆうたさんを拒絶する。

 

「足手まといなものか!俺はお前と肩を並べてみせる!」

 

「――《SANチェック》」

 

 ボクがぽつりと呟いたその瞬間、部屋中を混沌たる暴威が覆い尽くす。

 

 名状し難い、根源たる恐怖をその身に受けたゆうたさんは仰向けに倒れ伏した。力を直接受けなかったメグさんも恐怖のあまりにその場にへたり込む。ユーキさんですらこの膨大な力を前に強制再起動を引き起こしていた。

 

「ゆうたさんがいると、この力が薄れてしまうんです。きっと楽しさが勝ってしまうから」

 

 ボクが誰にともなくぽつりと呟くと、灑智が語りかける。

 

「――『邪旺院』の力を使うんですね。飲まれないようにしてください」

 

「なにやら訳知り顔のようですけど、単に怒りのエネルギーをぶつけたいだけですよ」

 

 恐らくはボクが知らない事情を灑智は知っているのだろう。膨大な魔力が灑智に宿っているのと同じように、ボクにも何か秘密がある。

 

 その隠された秘密が怒りのエネルギーを原動力として解かれようとしている。ボクが勝利を確信しているのは、無意識のうちに理解しているからなのだろう。

 

 灑智はボクを止める気はないようだ。アクタニアも我関せずを貫いている。

 

「――あなたが先に楽しさを捨ててしまうの?」

 

「楽しい世界を取り戻すためですよ。"作者"さん。これは必要なことです」

 

 そろそろ〈ロールプレイング〉の演算が完了し、侵略者の世界へ繋がる座標が確定する。そうしたら、全てを終わらせて――。

 

 次の瞬間、背後からボクの頭部へ鈍い衝撃が走った。

 

 たたらを踏みながらも振り返ると、そこには――。

 

「この程度の不意打ちも防げないのに、他人を足手まとい呼ばわりしたのか?笑わせるな」

 

「SANチェッ――」

 

「ダメなのです、卍さんー!!」

 

 今度は1週間は起き上がれないようにしてやろう。そう思って撃ち込もうとした《SANチェック》を、悲痛の叫びが打ち消す。

 

「なんだかわからないけど、ダメなのです、卍さん!いくらなんでも急に暴走しすぎなのです!自分を〈ロールプレイング〉してくださいなのです!」

 

 メグさんに言われて、ボクは普段のボクを〈ロールプレイング〉で引き出す。そして自らを振り返ると……。

 

 いやいや、何やってたんだボク?情緒不安定すぎでしょ!

 

「失礼しました。さっきのボクはどうやらめんへら系美少女になっていたようです」

 

「今は冷静になっているようだが……あくまで演技なのか?解除したらさっきのようになるのか?」

 

「いえ、とりあえずもう大丈夫です。落ち着きました――灑智?なにか知ってますね?なんだか重要なワードを口にしていましたよね?」

 

 話が脱線してしまっているが、聞き逃せないセリフがあった。『邪旺院』の力?灑智だけでなくボクにもなんか凄い力があるんですか?

 

 ちょっとワクワクするけどなんだかダークパワーっぽくて怖い。頭がおかしくなって死ぬような能力かもしれない。

 

「失言でしたね……。覚醒すれば教えた方が制御できるのですが、未覚醒であれば教えない方がマシなのですが……」

 

「教えてください、お姉様命令です」

 

「了解しました。教えますっ」

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