卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第392話 呪い

「それでは灑智、教えてください。『邪旺院』の力とはなんですか?」

 

 灑智にとっては説明したくないことなのだろう。視線を空へ向け、「うーん……」と考え込み、やがて言葉を選ぶように話し始めた。

 

「簡単に言えばこの世に存在するありとあらゆる『良からぬエネルギー』の集合体です。お姉様は疑問に思ったことがありませんか?なぜ『荒罹崇』という名前を授けられたのか」

 

「そりゃあありますよ。自分の名前のこともそうですが、妹は綺麗な名前ですしね。どちらもおどろおどろしい名前なら、そういう方針なのかもとは思いましたが」

 

「あらゆる『呪い(まじない)』に通じる原則なのですが、万物は言葉に支配されます。良からぬ存在に優しい名前を授けることでその力を打ち消したり、怖れられるような存在が恐ろしい名前を授かることでさらに力を高めたりすることがある。〈魔導〉とは異なるこの世界のルールですね」

 

「なるほど、『荒罹崇』という名前はその『呪い(まじない)』にあやかって――」

 

「そういうことです。『邪旺院家』に存在する全ての闇と混沌を受け止めるべく生まれた。それがお姉様なのです」

 

「なるほど。言うなれば人身御供のような経歴だったわけですか。それにしては今も健康体ですし、お父さんにもお母さんにも蝶よ花よと育てられた記憶がありますが」

 

「『良からぬエネルギー』とは言いましたが、『邪旺院家』における『呪い(まじない)』とはその『良からぬエネルギー』を利用する技術です。つまりそのエネルギーを一身に授かったお姉様は、むしろ愛されていると言えますね。……愛されていなかったのは、私の方です」

 

「そっか、灑智が清らかな名前を付けられたのは……」

 

「お姉様が授かったエネルギーを分散させないために、何も持たぬ者として生を得たのが私です。そうして意図的に空けられた『(から)』の空間に魔力が流れ込んだ、と私は推測していますが」

 

 灑智は自嘲気味にそう語る。「ボクは灑智を愛してますよ!」と月並みな言葉を口にするのは簡単だが、そんなことは灑智にもわかっているだろう。あえてそこには触れず、先程ボクに起きた現象へと意識を向ける。

 

「ボクが怒りのエネルギーだと思っていたものは、『呪い』の力なんですね?」

 

「間違いありません。『呪い(まじない)』は感情によって発露し、時に因果を捻じ曲げる。ゆうたさんとメグさんが止めていなかったら、侵略者さんの世界は業火に燃え尽きていたことでしょう」

 

「ヤバイですね。そんな力が覚醒してしまったら【フォッダー】をまともに遊べなくなりますよ。止めていただきありがとうございます」

 

「やはり、気にするのはそこなのだな。荒罹崇らしい」

 

「どういたしまして、なのです!」

 

 ボクの持つ力のことはわかった。その気になれば、今回の問題くらいは一瞬で解決できてしまうらしい。けれど、できればその切り札は切りたくない。となると、話は振り出しに戻ってしまうことになる。

 

「さっき暴走してた時に侵略者さんの世界については座標を把握しました。〚テレポート〛を使えば世界を渡ることもできると思いますが……。先程も言ったように、これは戦争ですよね。このメンバーでどうにかなる話なんでしょうか?」

 

「普通はお国が動いてくれる話じゃないのです?ユーキさんがまた一人で抱えてるのです?」

 

「――すいません、ちょっと再起動していました。日本は当然動いてくれていますよ。【フォッダー】を止めている侵略者を調査中ですが……こちらから攻め込むという話にまでは至っていないようですね。」

 

「他の国はどうなんだ?」

 

「灑智さんと侵略者が戦っていた台湾では、上位次元の存在を視認するレンズの緊急開発を進めているようです。先程の戦闘データを分析中のようですね。他の国だと……アメリカが侵攻の準備を進めているようです。手早いですね」

 

 世界規模の侵略者というスケールの大きい話にしては、足並みが揃っていないようだ。ニュースでも報道されていないし、それぞれが裏で動いているのだろう。

 

「アメリカさんに任せておけば安心なんですかね?最低でもさっきの侵略者に対処できるような兵器はあるんでしょうか?」

 

「アメリカ軍は『次元溶解砲』という兵器がありますが……いかんせん、数が少ないんですよね。やはりアクタニアさんに手っ取り早く《『位階上昇(アセンション)』》させていただくのが早いです」

 

《おいおい。荒罹崇さんやそのご友人ならともかく、アメリカにまで行く気は無いぞ。あっちは『異形』に対する風当たりも厳しいんだ》

 

 アクタニアさんは見た目には人間と同じですし、風当たりとか関係ないと思うんですけどね。軽く脅しを掛けてみたけど、「梃子でも動かん!」と言い張っている。

 

「お姉様、ちょっとだけ様子を見に行ってみませんか?侵略者さんの世界を」

 

「まあ、気にはなりますよね」

 

 大国に任せていればすぐにでも解決する、というわけでもないようだし、【フォッダー】はどうせプレイできない。

 

 ボク達がこの事態を解決する!なんて胸を張って宣言するつもりはないけど、ちょっとだけ偵察してみるのも悪くはない。

 

「ユーキさん、構いませんか?外交問題とか」

 

「大丈夫でしょう。私の裁量で通せる範囲だと思いますよ。なんなら潰してもらっても構いませんし」

 

 『呪い』の力が暴走していた時ならまだしも、今はそんな大それたことは言えない。ちょっと様子を見に行くだけだ。

 

「ゆうたさんとメグさんはどうします?」

 

「当然、ついていくぞ」

 

「当たり前なのです」

 

 ボクと灑智、そこにゆうたさんとメグさん。メンバーはこれくらいかな?

 

「あっ、私も付いていっていい?」

 

「"作者"さん!構いませんよ。道中はお守りします!それと、先ほどは……すいませんでした。ちょっと暴走しちゃってて」

 

「いいよいいよ。これからはもっと楽しくやっていこうね?」

 

「はい!」

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