卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第393話 公園

「それで、〚テレポート〛で侵略者の世界に行けるのです?」

 

「行けますよ!5人を運ぶとなるとボクの魔力的には無理かもしれませんが……灑智ならいけますよね?」

 

「はい。座標を教えていただければ問題なく飛べると思います」

 

 確認も取れたので、ボクは灑智に転移先として問題のなさそうな座標を教える。向こうの世界でいう公園に当たる場所らしいが、人通りも少ないので誰かに見られる可能性は低そうだ。

 

「そう言えば確認だが、俺達は相手先の世界の住民に見つかると不味いのか?大きく姿形が異なるとか……」

 

「うーん……。厳密に言うと不味いかもですが、外国人くらいのノリで誤魔化せる気もします。向こうの世界の人達は、一定の姿形を持たないようなんですよ」

 

 灑智を襲った機械の開発者から読み取った知識によると、そんな感じらしい。

 

「高次元の存在であるが故に肉体という概念が無いようなのです。ただしその世界には高次元に達していない生物もいるようでして、肉体を持つボクらはそういった低次元の存在として見られることになるかもですね」

 

「了解した。推測するに……被差別階級ということか」

 

 ボクが説明に含めなかった部分を、ゆうたさんが読み取って確かめる。恐らくはその認識で間違っていないと思うのだが、あくまでそう思っているのはボクが読み取った開発者の人だけなので、断言はできない。

 

「おっけーなのです!それじゃあさっそく異世界観光に行ってみるのです!」

 

 メグさんが拳を天に掲げて楽しげに笑う。確かに観光みたいなものですね。ボクもみんなも合わせて「おー!」と声を上げた。

 

 さて、それじゃあ灑智に〚テレポート〛して貰って……と思ったところでユーキさんが言う。

 

「灑智さんが居れば大概の事は乗り切れると思いますが……気をつけてくださいね。こちらも異世界に詳しい方にちょっと相談してみます」

 

「はい。〚エデン〛が効力を発揮するようなので、可能な限り展開し続けておきますねっ。それでは――転移します」

 

 その宣言と共に周囲の景色は瞬く間に切り替わり、気がつくとボク達は公園にいた。

 

「ここが公園……。寂れた場所なのです」

 

 錆びた遊具や倒壊した設備がそのまま放置されている。この公園に限った話ではない。公園を囲むように建ち並ぶ家々も、耐用年数をとっくに越えている。いつ崩れ去ってもおかしくない。

 

「我々よりも上位の存在が暮らすとされる世界にしては、随分と悲惨な有様だな……。いや、これは高位次元の存在が暮らす場所ではなく」

 

「そういうことです。ボク達と同じく肉体を持った方々が暮らす場所ですから、多少は大胆に動けますよ」

 

 とはいえ周囲には知的生命体の姿は見えない。それどころか、建物の中にもほとんど気配が無い。機械の開発者の知識では廃村というわけでは無かった筈だが……。

 

「あっ、あそこにたくさん集まってる気がするのです」

 

 メグさんが指差したほうを見ると、周囲の家に比べて一際大きい建物があった。一階建てのようだが、敷地面積がやけに広い。金属を加工するような音がかすかに聞こえる。

 

「工場だな。日中はあそこで作業しているのだろう」

 

「その辺に歩いている人を相手にするならともかく、工場へは出入りしづらいですね」

 

 ボク達が話し合っていると、灑智が明後日の方向をぼんやり見つめていることに気づく。

 

「灑智、どうしたんですか?なにか見つけました?」

 

「あっ、いえ。大気の魔力が薄いなと思いまして」

 

 言われてみれば、確かに日本と比べるとやけに少なく見える。とはいえ、他ならぬ灑智自身から魔力が漏れ出ているので、この辺りはすぐにでも濃くなりそうだ。

 

「基本的に大気に流れる魔力は生物から漏れたものであることがほとんどです。生物から漏れた魔力は時間の経過と共にゆっくりと、魔力の密度が少ない方へと流れます」

 

「つまり魔力は世界全体で均一化されるように動く。この場所で魔力が少ないということは、他でも少ないということですか」

 

「魔力を極端に保有する生物がいたり、大気の魔力を根こそぎ原動力に変えるような装置がない場合の話ではあるがな」

 

 ボク達の世界なら周囲を見渡せば魔力を原動力とする装置がいくらでもある。けれどこの世界には……少なくともこの場所には魔力を極端に消費するような設備は無さそうだ。

 

 あるとすれば工場の中だが……。工場の周囲でも魔力の密度は一定に見える。工場が魔力を吸い上げているなら、密度が偏ってもおかしくない筈だ。世界全体で魔力が少ない傾向にあるのだろう。

 

「あのー。そもそもだけど、この世界の人は魔力をエネルギーとして使う方法を知ってるのかな?」

 

 "作者"さんが疑問を挟む。確か"作者"さんは、ボク達が〈魔導〉を使い始めるまではその存在を知らなかったんでしたっけ。

 

「確かに魔力という概念を認知していない可能性も……いや、魔力について知らなかったら【フォッダー】をハッキングするのは難しいんじゃないですか?」

 

 【フォッダー】は〈魔導〉を組み合わせたコーディングによって成立するゲームだ。その前提を知らなかったら、ハッキングするのは難しいと思うけど……。

 

「アクタニアのように道理を無視した超常能力があれば話は別かも知れんがな。ユーキもその可能性について述べていた」

 

 公園に来ただけで議論は白熱しているが、これはあくまで仮定の話で、結論が出ることは無い。さらなる情報を得るためには……やはり、あの工場へ向かってみる必要がありますね。

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