卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第398話 魔眼

「どうやら厄介な存在のようだな。少々勿体ないが……消えてもらうぞ」

 

 その口ぶりから、初手の札は容易に想像がつく。消滅の〈魔導〉だ。

 

 ボクは〈ロールプレイング〉で発動の範囲を読み取ると、前方へ駆け抜ける。狙うは先程まで相対していた上位次元の存在――!

 

 光を超える速度で接近して右足で左半身を蹴り飛ばすと、大きく体勢が逸れる。これにより魔力を霧散させる魔眼の方向を傾けた。

 

 そして魔眼の視界に消滅〈魔導〉の発動者が映り込み、魔力は一瞬にして霧散する。

 

「くっ、この!」

 

 反射的に手を払う上位存在だが、その程度の攻撃を受けるつもりはない。片足だけで背後に向かって跳躍し、大きく距離を取って回避した。

 

「これだからお前の魔眼は役に立たないんだ!」

 

「申し訳ありません!」

 

 〈魔導〉を打ち消された苛立ちで叱咤する上司と思われる上位存在。戦闘中にもかかわらず、ずいぶん悠長な話だ。その瞳はどす黒い赤色であり、〈魔導〉を霧散させる魔眼とは異なる力を持つ事が伺える。

 

「聞いたことがあるよ。『固有魔導』ってあるでしょ?一般的には『瞳』に力が宿る事が多いんだって」

 

 『固有魔導』……ボクは灑智の使用する〚ノア・イース〛の事しか知らないが、あの〈魔導〉はまさに強力無比だった。

 

 あの力を基準とするならば、かなり厄介な存在だ。種族的に『固有魔導』を発現させやすいのだろう。仮に眼前の二人を片付けられたところで、更なる強力な〈魔導〉の餌食となる可能性がある。

 

「えっと、ボク達はちょっと観光に来ただけの一般人でして……。すぐに帰るので見逃していただけませんか?」

 

「そんな話が通るか!我々に『干渉』できる存在を帰す事などできぬわ!」

 

 先程の蹴りの事を言っているのだろう。本来なら下位の存在には干渉されない筈なのに次元の壁を越えて触れてきた。それを見逃すつもりはないという事だ。

 

「良いんですか?干渉できるという事は、すなわち――殺される覚悟があるということですね?《SANチェック》」

 

 ただの〈感受誘導〉など比べ物にならない、圧倒的な恐怖の根源を向ける。その一撃で魔力を霧散させる力を持つ上位存在は白目を向いて気絶するが……上司と思われる上位存在はたじろぎながらも応じる。

 

「……ッ!肉体も捨てられない下位存在に負ける道理など無いわ!」

 

 そう啖呵を切ると同時に上位存在の眼が怪しく光る。『固有魔導』の発動だ。

 

 しかしその力はボクに対して何の効果も及ぼさない。腕の中で"作者"さんがぷるぷると震えだしたが、それくらいだ。

 

「対象の体内に流れる電気信号を操り、感覚を狂わせる〈魔導〉ですか……。上位次元の存在に対しては通用しない、格下殺しの能力だ」

 

「……なぜ喋れるッ!なぜ動けるッ!?肉体に縛られた存在の癖に――」

 

「遮断するならまだしも、狂わせる程度で制御が失われる訳がないでしょう?量子の動きを計算できるボク達の領域なら、多少計算を崩されようが補正で対応できる」

 

「何を言っている……」

 

「わからないのは怖いですか?わざとそうしてますからね――《SANチェック》」

 

 短時間に連続の《SANチェック》を打ち込むのは恐怖への『慣れ』へと繋がるが、新たな恐怖の種を仕込んだ後であれば話は別だ。

 

 一度目の《SANチェック》では気絶に至らなかった存在であっても、上回られる恐怖には敵わなかったらしい。彼は白目を剥いてその場に立ち尽くし――同時に魔眼の影響から解放される。

 

「危なかったー!全力で演算しても口しか動かせませんでしたからね。あのまま攻められてたら負けてましたよ」

 

「そうなの?私は動けなかったのに卍さんは余裕ぶっこいてたからまさか無敵なのかとてっきり」

 

「そんな訳ないじゃないですか。ほら、とっとと帰りますよ。今なら〈魔導〉も打ち消されないし、〚テレポート〛で――」

 

「そうはさせぬぞ!侵入者!」

 

「うわぁあああ!またですか!」

 

 〚テレポート〛の〈魔導〉を発動させようとしたその瞬間、大きく世界が歪む。周囲は先程の倉庫ではなく、黒い闇のような空間に切り替わる。

 

 座標を大きく変えられてしまった。〈魔導〉の《『テレポート』》は相対座標によって発動する。現在位置を再計算しないとどこに飛ばされるかわからない!

 

 そしてボクの眼前に佇むのは黒いシルエットのような姿をした上位次元の存在だった。先ほどの二人は青白い光を放っていたが、それとは様子が違って見える。

 

「さっきから口調がみんな同じなんですけど、上位世界で流行ってるんですか?」

 

「威厳を保つ為の口調だ。我々同士では別の口調で話している」

 

 こちらの軽口にも応じてくれる、優しいお人だ。先程戦ってきた方々もそうだったが、どうにも憎めない。一方で下位次元の存在を奴隷のように扱う外道である事にも間違いは無い筈だが……。

 

「『神作家になろう』を嗜んでいるだけの事はあるよね」

 

「ほう、侵入者は『神作家になろう』を知っているのか!推しの作品によっては見逃してやってもいいぞ」

 

「『上位次元を統べる絶対神をパシリにしてみたw』ですね。どうでしょう、お眼鏡に叶いましたか?」

 

「残念だが我の趣味には合わぬな。有名作品ではなく、自分の言葉で語ってもらいたいのだが」

 

「でしたらボクはクリエイターなのでね。ボク自身が描く人生をお披露目したいのですが」

 

「ほう、我好みの回答だな。気に入った!題はなんとする?聞かせてみろ」

 

「『卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!』なんて如何でしょう?ボクの可愛らしさに見惚れる事、間違いなしですよ?」

 

「題は良し、それなら後は中身であるな。見せてみよ!」

 

 そう告げながらも魔眼に魔力が溜まっていく様子が伺える。その瞳の色は黄金――これまでの魔眼とは桁違いの魔力を消費するようだ。

 

 随分と話のわかる上位存在――無限に侵入者として戦い続けるよりも、この人なら和解の余地がありそうだ。

 

 それなら華麗な闘いで釘付けにしつつ、きゅーとに勝利をもぎ取ってやりましょう!

 

 そして魔眼の力が解き放たれる――。

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