卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第399話 名前

 上位存在の魔眼が怪しく光り、その力が解き放たれる。

 

 次の瞬間、ボクの胸に一本の剣が刺さっていた。

 

「創造系の魔眼ですか……」

 

 ボクは軽く足を踏み鳴らし、剣を引き抜いて宙へと浮かばせる。

 

「そう言う貴様は念動力の使い手か?その能力でよくここまでやって来たものだ。いや……キズの治りも早いな」

 

 どうやら相当に切れ味の鋭い剣のようだが、これをそのまま突き返したところで上位次元の存在を切り裂くことはできないだろう。

 

「卍さん、大丈夫?修復くらいなら私もできるよ」

 

「いえ、この程度であれば問題ありません。むしろ手伝っていただけるのであれば……」

 

「――なるほどね、了解」

 

 "作者"さんと〈ロールプレイング〉で打ち合わせをしていると、上位次元の存在は顔を歪める。

 

「この期に及んで両腕を使わぬつもりか?見下されたものだな」

 

「見下しているのはそちらでしょう?下位存在の愚行なんて気にしなくても構いませんよ」

 

 ボクは剣を〈流水誘導〉によって勢い良く投射する。光の速度で放たれた剣は意図的に大気と激しく摩擦し、炎上した。

 

 しかし発火もまたボクたちの次元の現象であり、本来ならば上位次元の存在にダメージを与えることなどできないが――。

 

 それでも上位存在さんは大きくサイドステップして攻撃を回避する。

 

「今の一撃――なにをした?」

 

「さてね、気になるなら受けてみればどうですか?」

 

 彼は今の一撃になんらかの脅威を感じた。それにより、()()()()()()()()()()。〈感受誘導〉によってもたらされた仮初の脅威が彼を貫く時、確かな痛みと熱を感じ得ることだろう。

 

 先ほどの"作者"さんとの中身のないやりとりすら演出。しかしその無価値な演出は次元を切り裂く刃となる。

 

 再び魔眼が怪しく光り輝く。その力の性質も、彼の動きも既に読めている。次に狙うのはボクの腕の中にいる"作者"さんだ。

 

 再び剣が出現して"作者"さんを貫くが――先ほどとは違う。剣は彼女に対してなんら影響を与えない。

 

「貴様ら……不死身か?」

 

 〈トンネル避け〉だ。剣の出現するポイントさえ読めていれば、攻撃を回避することなど造作もない。

 

「まず第一段階ですね――《SANチェック》」

 

 自身を打倒し得る手札があり、こちらの手札を無効化することができる。そんな存在を相手にして恐怖を抱かないはずがない。

 

 しかし上位存在さんはほんの一瞬だけたじろぐも、すぐに立ち直る。彼の恐るべきはその力ではなく、恐怖に対する抵抗力――精神力だ。

 

 直接的に干渉を掛けずとも、ここまでは《SANチェック》一本で突破できていたが、彼にはそれが通用しない。演出を重ねて、裏打ちされた恐怖を叩き込む必要がある。

 

「あなた、名前は何ですか?遺言として聞いておいてあげますよ」

 

「……ゼタシアだ」

 

「ゼタシアさんですか、良いお名前ですね。ボクの名前は 邪旺院(じゃおういん) 荒罹崇《ありす》。呪い(まじない)の名家に生まれた呪い(のろい)の専門家です――ところでご存知ですか?ボクが呪いを行使するには、必要な要素があるんですよ」

 

 ゼタシアさんの顔がさらに歪み――再び創造の魔眼を発動させる。今度は大量の水を出現させて窒息させるつもりのようだが、その程度で死ぬつもりはない。

 

「呪いを掛けたい存在の一部が必要なんです。髪の毛ですとか、爪ですとか――あとは()()()()()()()()()()()()

 

 水球を顔に押し付けられながらも、〈流水誘導〉によって声だけは確実に届ける。それが勝利の前提条件だからだ。

 

「もちろん、フルネームが必要です。ゼタシアさんの名前ですと、何かが欠けているようですね。これでは足りません」

 

 ボクは明後日の方向に飛んだ剣を遠隔で引き寄せ、ゼタシアさんを背後から狙う。僅かに違和感を覚えたのだろう。横に飛んで剣を回避しながら、消滅の〈魔導〉を発動させた。

 

「〚アンチマジック〛」

 

 しかし如何に強大な力も〚アンチマジック〛の前にはかき消される。魔力だけが無駄に消費され、力の行使は不発に終わる。剣は大きく旋回しながら再びゼタシアさんに狙いを定める。

 

 剣を狙っても無駄だと悟ったのだろう。魔眼が再び光り輝くと、次の瞬間には水が地獄のような熱湯へと変化する。あらゆる生命が瞬間的に死滅するような、恐るべき攻撃だが――直前に展開した〚エデン〛の障壁が水を押し出し、全ての干渉を無効化する。

 

 その隙に剣がゼタシアさんを掠めた。ほんの僅かな接触で、彼の身体は大きく削り取られる。

 

 身体の異変を顧みず、魔眼を起動しようとするゼタシアさんだが――その前にボクの声が空間に響く。

 

「――読めた。あなたのお名前はゼノス。ゼノス・ゼタシアさんですね?」

 

「……ッ!なぜ――」

 

「たった今、あなたを剣が掠めたでしょう?」

 

 本当は剣なんて関係ない。〈ロールプレイング〉で読み取っただけだが、悠長な演出こそがこの戦いにおいては最重要だ。

 

 ボクは一歩、また一歩と歩みを進めて熱湯の外へと出る。〚エデン〛を展開できる時間には限りがあるので、ゆっくりを演出しながらも、少しだけ早足で脱出した。

 

「名を奪った以上、ボクの勝ちは確定しました。とどめを刺しても良いですが……降参してください」

 

 既に《SANチェック》で気絶させるための条件は満たしている。けれど――ゼタシアさんとなら話が通じる。

 

 いきあたりばったりで始まったバトルだけど、戦争を終結させることができるかもしれない。

 

「そう――だな。貴様の勝ちだ。我は降参――」

 

 次の瞬間――ゼタシアさんが上位次元の槍に貫かれていた。

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