卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「ゼタシアさん!」
「こんな子供騙しの手に掛かるとはな……軍団長が聞いて泣かせるわ」
倒れ込むゼタシアさんの後方に、一人の上位存在が現れた。先程まではいなかった。〚テレポート〛により出現したのだろう。
白く輝くようなシルエットの男はくつくつと笑う。
「その口ぶりを見るに、ゼタシアさんよりもお偉い方のようですけど」
「我は全ての上位次元存在を統べる神の中の神――アノ・ゼプテンよ。おっと、名前を言ってはいけないのだったかな?」
わざとらしく口元に掌を当て、ゼプテンは笑う。こちらのトリックが読まれているらしい。この分だと《SANチェック》で倒すのも難しそうだ。
ボクはゼプテンを視界に捉えながら"作者"さんに語りかける。
「"作者"さん、どうやらあなたを抱えて戦うのも限界のようです。魔力を渡しますので、離れたところで身を守っていてください」
そう言って"作者"さんをそっと地に降ろすと、彼女は――。
「私が守られるだけの存在だと思った?大丈夫、戦えるよ――私はあなた達の創造者なんだから」
はにかむように笑いながら、左手に一本の剣を作り出す。それは間違いなく上位次元の剣だった。ボクですら、この〈
「これだけ時間があれば解析くらいできるよ。今ので卍さんもわかったよね?」
お手本を見ればわかる。上位次元に手を伸ばす方法が。
彼女は圧倒的な上位次元の存在でありながら、下位次元のボク達に全てをひっくり返された。だからこそ、わかったのだろう。
「だから危険なのだ――貴様らは我々の領域に容易く手を伸ばす。神は我々だけで十分だというのに」
基本の原理は〈感受誘導〉と同じだ。相手が観測できる手段であれば上位次元の存在に干渉をかけることができる。仮初の炎は確かな熱を錯覚させ、仮初の剣は身体を容易に分断する。
そしてそれができるなら――嘘すら真にできる。
"作者"さんは
やっていることはアクタニアと同じだ。『異形』の『権能』を独自の手法で再現しただけ。
アクタニアの『権能』はついぞボクには再現できなかったが、〈感受誘導〉の範疇であれば再現できる。観測によって箱の中身という事実が確定するのなら、観測結果を歪ませるだけで事実すら捻じ曲げられる。
ボクは軽く指を鳴らし、燃え盛る上位次元の業火を生み出す。この手に生じた
「そうですね……。一応お聞きします。戦いをやめる気はありませんか?ついでに我々の世界への侵攻もやめていただければ、こちらとしても争う理由は無いのですが」
まあ――無理な相談だろう。この炎は確かに比喩抜きでこの世界を終わらせる力を持つが、実際に放つ気がないことは向こうもわかっているはずだ。だからその回答は既に読めていて――
「……良いだろう、降参だ」
「ですよね、やっぱり戦うしか――え?」
想定を上回る素晴らしい回答が得られたというのに、ボクの全身に怖気が走る。
そう、上回られた。
ボクが再現した彼の思考とは異なる解答。確かにボクの再現が絶対である保証はこれまでも無かったが、伝聞からの再現ならまだしも、本人が目の前にいるのに?
そんな動揺を隠しつつ、続けて要望を伝える。
「ついでにゼタシアさんも治療したいのですが、構いませんか?」
「構わん。これでも我々の中では貴重な戦力だ」
貴重な戦力なら無意味に致命傷を与えないでください!と思いつつも、ゆっくりとゼタシアさんに近づく。そして槍を引き抜いてからゼタシアさんのキズを〈感受誘導〉の全能で回復させる。
「これで要件は終わりだな?帰っていいぞ」
「あ、はい。帰ります。ご迷惑おかけしました」
そしてボクはしばし時間をかけて現在座標を特定し、〚テレポート〛を起動させる。景色が瞬間的に切り替わり、ユーキさんの秘密基地に戻ってきた。
「あ、卍荒罹崇卍さん。おかえりなさい。……もしかして、何かしてきました?たった今、【フォッダー】への攻撃が止んだのですけど……」
「えっと、なんか降参するとか言われて帰ってきたんですけど……本当に撤退したんですね」
正直に言って、信じていなかった。先の発言を受けて〈ロールプレイング〉に情報を反映し直したが、それでもなお本当に撤退するとは思っていなかった。
「私もあの苛烈な性格なら、戦いになると思ったんだけどね。まだ魔眼の力も行使していなかったのに」
「はい、ボクの予想では彼の魔眼は『次元の歪曲』でした。戦わずに済んで良かったのは確かですが、その手を試さずに降参するとは考えられなかった」
ボクの〈ロールプレイング〉を事前に知った上で、思考パターンを意図的に変化させていたのか?仮にそうだとして、それをボクに警戒されるリスクは考慮する必要がないと考えた?
「なんにせよ……。さらなる【フォッダー】への攻撃に備えて対策は打っておこうと思います。わかった事があれば教えてください」
「そうですね……あの人達は先天的に魔眼という力を持っていて――」