卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「話を聞いた限りですが――私でもそれは降参を選びますよ」
「そうですか?だってまだ自分の切り札を使ってすらいないんですよ?」
「だよね。『次元の歪曲』なら全能での延命もできずに即死させられた可能性もあるし」
ゼプテンさんが持っていたと思われる『次元の歪曲』の力には〈トンネル避け〉も通用しない。【フォッダー】における範囲魔法と同様に、その一撃は空間に対して振るわれるからだ。
「ゼプテンさんは恐らくその前に戦っていたゼタシアさんと卍荒罹崇卍さん達の戦いを見ていたのでしょう?それで〈感受誘導〉のからくりに気づいて勝てると踏んで出てきた。それなのに土壇場で急に虚像ではない次元の剣を出してきたら、そりゃあ焦りますよね」
ユーキさんにそう言われると、確かにその通りかもしれない。彼女の上では、呆れ顔の人が溜息をつく
「その上で――ただ、勝ち目がないと悟ったから降参したというだけではない、そう考えるのも自然な話です。もしかしたら、後で準備をすれば勝てると考えたのかも……」
相手の思考をただ再現するのではなく、ユーキさんは合理的な判断で話を詰めていく。さすがこの世界でも最高峰のAIというだけのことはある。
「後で準備、ということなら、【フォッダー】への攻撃をやめる必要はないよね。年単位で準備をして対応策を得るとかなら別だけど――いや……そういうことか」
「"作者"さんも気づきましたか。そう、【フォッダー】です。相手は【フォッダー】を利用する利点に気づいたのでしょう」
「それって、【フォッダー】で〈
上位次元の方々と【フォッダー】の中で戦うだけならボクとしては大歓迎だ。しかし軽口を叩いたボクも、真の意味で融和が訪れるとは思っていない。ゲームを楽しむのではなく、最短経路で〈
「新しいプレイヤー層が訪れるのであれば、大会は少し延期したほうが良さそうですね。しばらくサーバーがダウンしていたこともありますし」
「いやいや、そんな呑気な発想で良いんですか?たしかにその程度の懸念で済むならそれに越したことはないですけど――」
「卍荒罹崇卍さんこそ、戦いで思考が昂ってませんか?簡単な話ですよ。戦争であれば卍荒罹崇卍さんが敗北することは考えられます。他の名だたるゲーマーでも同じことでしょう。しかし――遊びの土俵に上げた時点で、あなたがただの戦争屋如きに負けるわけがないじゃないですか」
「というわけで、【フォッダー】は復活しましたけど……どうします?普通にのんびりと大会に向けて準備しますか?」
「一回戦の【サバイバル】はちょっと延期されて二ヶ月後になったらしいのです。まだまだ時間はあるのです」
どうやら大会の進行は集中的に行われるのではなく、長い期間にまたがって実施されるらしい。二回戦である【ダブル】は【サバイバル】が終わってからまた二ヶ月後の予定なのだとか。
そういう意味では、【サバイバル】は事前にアイテムを集めても意味がないので、わざわざ準備するものも少ない。【マクロ】を揃えたり、レベル上げをしてスキルを揃えたり、あとは対人経験を積んでテクニックを磨くくらいだろうか。
「そんなことは普段からやってることですしね。それよりも――この世界にやってきた新しいお客さんのことが気になっちゃいます」
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>お客さん?
>ニュースでやってたけど異世界からフォッダーを遊びに入国して来た奴らがいるらしいな
>わざわざ他の世界から来てやる事がクソゲーかよ(呆れ)
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コメント欄でも『お客さん』の噂は流れているようだ。ただし侵攻を仕掛けてくるような危険な存在という認識はなく、あくまで他の世界から遊びに来た人だというふうに報道されている。【フォッダー】が落ちたのも、『お客さん』がゲームをプレイできるように緊急アップデートが行われたことになっている。
「ただ……残念ながら配信可の
「でも、一度でいいから確認しておきたいのです」
「でしたら今日の配信は無しにして、他の
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>だったら最初から配信すんなカス
>一日の予定くらい事前に決めとけ
>大会に向けて秘匿で訓練するつもりか?失望した
>卍さんが配信やめるとかこれ半分犯罪だろ……
>全部犯罪だぞ
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「そんなにボクの配信が見たかったんですか?やっぱりボクって愛されてますね!」
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>まあ卍さんなんか一日見なくても困らんしな
>そもそもチャンネル登録してないし
>フォッダーの情報なんてあかりちゃんさんで解決するし
>卍さんの配信ってきゅーとさ以外の取り柄無いよね
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ボクの一言で面白いように変わる論調をにやにやと眺めていると、最終的にコメントが流れなくなった。そもそもコメントしてる時点で敗北だということに気づいたらしい。この先まったく流れなくなったら嫌なので、軽く謝ったらすぐに復活した。
「それじゃあみんなの卍さんは私が独占するのです!」
「はーい、独占されちゃいます!それではさっそく他の