卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第402話 畜生の技術

 別の世界(チャンネル)を見に行くと言っても、当然ながら世界(チャンネル)は無数に存在する。その中でも上位次元の方々が活動しているとされるのは配信不可の235chだ。

 

 基本的に世界(チャンネル)は若い番号ほどユーザーが多く、活動も活発な傾向にある。235chともなればあまり他の人に会いたくない恥ずかしがり屋さんが集う場所だろう。

 

「にしては世界(チャンネル)の表記が『やや混み』になってますね」

 

「お客さんが活動している世界(チャンネル)ならそれを見に行く人がいるのも当然なのです」

 

 メグさんの意見にボクは首肯する。ボク達もそれを目当てに世界(チャンネル)を変えるわけですからね。

 

 ちなみに今ボク達がいる配信可の1chは『超混み』だ。具体的に何人いるのかは表記されていないが、配信不可の1chである『神混み』に次ぐユーザー人口だと思う。

 

「じゃあ早速ですが、世界(チャンネル)を変えてみましょうか」

 

 そうメグさんに声を掛けて、ボクはシステムから世界(チャンネル)を切り替える。1chで活動していた周囲のプレイヤー達が瞬間的に消失し、代わりに別のプレイヤーが表示された。

 

「今見えているのが235chで活動しているプレイヤーさんですね。外見的には上位次元の人には見えませんが……」

 

 現在位置は【アンネサリーの街】の噴水前。アリンドさん達が住む城下町と比べて利便性は劣るが、飲食店や観光施設に特化しており、カジュアルなプレイヤー向きの街だとされている。

 

 それにしてはやけに周囲のプレイヤーが多い。カジュアルなプレイヤーなら、当然ユーザーが多い1chや、逆に誰もいない過疎chを利用するはずだ。にもかかわらず、この噴水の周りには30人ほどのプレイヤーが屯し、雑談に花を咲かせている。

 

「おや、卍さんか。君達もマジ卍しに来たのかい?」

 

「そういうあなたはおっさんですか。マジ卍の意味はわかりかねますが、目的は同じだと思いますよ。……やけにプレイヤーさんが多いようですけど、この付近にいるんですか?」

 

「ああ、ベイビィ達は南にある【インカパタ雪原】でパーリーしてるよ。ここにプレイヤーが集まってるのは、デスペナルティ時の復活拠点だからさ」

 

「ちょっかいを掛けてPKされちゃったのです?」

 

「俺はまだ挑戦してないけどね」

 

 自分も挑んで敗れた側だとは思われたくないのだろう。「しゃかりきじゃ無かったしね」「アウトオブ眼中だしね」と言い訳し始めるおっさん。そんなこと誰も聞いてないのに……。

 

「じゃあボク達も現地に行ってみますか。おっさんはあまり戦いの事を話したくなさそうですし」

 

「了解なのです!」

 

「そもそもマジで戦ってないから話そうと思っても話せないんだけどね?」

 

 ということで【アンネサリーの街】の南側にある【インカパタ雪原】へと向かう。なぜかついてくるおっさんも連れて街を抜け、雪原へと足を踏み入れる。

 

「この雪原も不思議なのです。【アンネサリーの街】には雪なんて積もってないのに」

 

「ゲームだからって言われたらそうかもしれないですけど、理由があるんですかね?」

 

 まるでそこに境界線があるかのように【インカパタ雪原】と【アンネサリーの街】は綺麗に分断されている。マップ切り替え型のゲームならまだしも、シームレスなシステムなら、徐々に雪が増えていくような描写もできると思うのだけど。

 

 【インカパタ雪原】にもプレイヤーは山のように集まっていた。この世界(チャンネル)が『やや混み』である所以が垣間見える。

 

 受動(パッシブ)のモンスターには目もくれず、ケンカを売ってきた【山男】だけを雑に処理しながら、ある一点へ集まろうとしている。おそらくその中心に上位次元の人がいるのだろう。〈ホームタクティクス〉用の小型の家が周囲に散らばっており、それを起点に【ホームリターン】で戻ってくる人もいた。

 

「どうやら戦ってるみたいですね。挑戦者を受け付けているのでしょうか」

 

 人混みを掻き分けて最前列まで来ると、3人のプレイヤーが上位次元の人に攻撃を仕掛けているところだった。

 

 お相手はゼプテンさんだ。白く輝くシルエットのアバターが【フォッダー】の中でも忠実に再現されている。

 

 〈魔導〉によって生み出された破壊の雷がゼプテンさんに向けて放たれる。雷は周囲に炎を撒き散らしながらジグザグと駆け抜けていった。あれは〈魔導〉を起点に全能を同時に引き起こしているのでしょう。かなり高度なテクニックだ。

 

 しかしゼプテンさんの瞳が紫色に輝くと、雷と炎はぐにゃりと歪み、何事もなかったかのように消失する。それと同時に攻撃を仕掛けたプレイヤーのアバターがばらばらに分解された。

 

 ただそれだけでHPが全損し、プレイヤー達は消失していく。今ごろは【アンネサリーの街】に戻っているでしょうね。

 

「厄介なのです。ゲームシステム以外の攻撃方法は、スキルと比べると威力が減衰する傾向にあるのですが……あの力はそれを差し引いても一撃なのです?」

 

 本来なら〚ライトニングボルト〛は地上から放つだけで月にクレーターを作り出すことができるほどの射程と威力を持つ。そんな大技も【フォッダー】の中では通常攻撃の範疇に収まるほどに弱体化されている。それを覆して高威力を出せるのは、膨大な魔力を持つ灑智か、〈改造行為(チート)〉の力で〈魔導〉を多重起動できるああああさんくらいだ。

 

 そして《『魔眼』》の力は〈魔導〉に該当するはずなので同じように弱体化処理されている。にもかかわらず、ここまでの破壊力ともなると……単純によほどの高威力なのか、あるいはゲームのダメージ計算式と噛み合ってしまっているのか。

 

 3人のプレイヤーが敗れ、次の挑戦者が現れる。今度のプレイヤーはゲーム内スキルで攻めるようだ。【アサシン】のスキルである【デッドリーポイズン】の矢を射出し、圧倒的な速度を活かし、防がれる前に命中させる算段のようだ。複数の装備効果で矢の投射速度を大きく引き上げているように見える。

 

【オールレンジド】

[アクティブ][自身][支援]

消費MP:2 詠唱時間:0s 再詠唱時間:30s 効果時間:30s

効果:[キャラクター]が[発動]する[近接]を[投射]に[変更]する。

 

【デッドリーポイズン】

[アクティブ][近接][攻撃][物理][妨害:確定]

詠唱時間:0s 再詠唱時間:120s 効果時間:999d

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[毒][状態]にする。

 

 矢は刹那にも満たない時間で命中し、ゼプテンさんにダメージを与える――かと思いきや。

 

「くそっ、〈トンネル避け〉か!」

 

 次元の性質によってすり抜けたわけではない。当たる可能性はあったし、当たれば間違いなくダメージはあった。

 

「なるほど?この技術は使えるな。下等な畜生の発想にしては上等な技術だ」

 

 そう呟きながら《『魔眼』》を光らせ、対戦相手を捻じ曲げて破壊する。

 

 このままゲームとして遊んでいてくれるなら良いけれど、その発言を見る限り望み薄だろう。

 

 確かに遊びの土俵であれば勝ち目はある。けれど彼は――いつまでも土俵の上に居座り続けてくれるのだろうか?




進化(エボルド)その5『魔眼』
ゲーム内に持ち込まれたので、便宜上〈進化(エボルド)〉として解説します。
いわゆる『固有魔導』を発動させる為の媒介とされており、あくまで〈魔導〉なので〚アンチマジック〛で無効化可能です。
ただし通常の〈魔導〉と比べると、現象の大きさに比して必要な魔力量がやけに少ないらしく、撃ち合いになったら間違いなく押し切られます。
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