卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第403話 詰み

 しばらくゼプテンさんとプレイヤーさん達の戦いを見ていたが、今のところは対人を通じて修行をしているだけのようだ。

 

「どうするです?私達も参戦するです?」

 

「……別に参戦したとして、勝とうが負けようが改心はしないでしょうからね。多数のプレイヤーとの交流を通じて自然と心変わりしてくれる事を願うしかありませんね」

 

 今のところは別に迷惑をかけてるわけでもない。ゲームとして真っ当にプレイしているだけだし、これからもそれを続けてくれるなら手強いライバルが増えただけのことだ。ゲーム外から持ち込まれた《『魔眼』》がやけに強いのも【フォッダー】というゲームにおいては別に糾弾されるようなことじゃない。

 

 所詮はゲーム、されどゲームとはいえ、やっぱり所詮はゲームだ。これまでの様々な騒動がゲーム内で解決したのはたまたまに過ぎず、森羅万象の全てが遊びで解決するような甘い世界ではない。

 

 まだ何も起きていないにもかかわらずなんとなく胸のつかえが取れない。そんな悶々とした心持ちのまま、彼らが切磋琢磨する光景を眺め続けるしかなかった。

 

 

 それから2ヶ月後の【サバイバル】に向けてボクを含めたプレイヤー達は【フォッダー】での活動を続ける。

 

 配信映えするような事件が毎日のように起こるわけではない。定期の【サバイバル杯】に出場して経験を積んだり、視聴者さんや知り合いを交えた身内の【サバイバル】で訓練したり、特筆する事柄もなく平穏な日々が続く。

 

 

 そして一ヶ月が経過したある日――あまりにも唐突に()()が起きた。

 

「みなさんこんにちばんは!今日もメグさんと【サバイバル】の配信を――」

 

 いつものようにログインしてメグさんと一緒にオープニングトークを始めようとした瞬間、唐突に視界が暗転する。

 

 気がつくとボク達は噴水の前にいた。

 

「あれ?リスポーンして――」

 

 そう呟こうとした途端、再び視界が暗転し、座標が少しだけ変化する。次々と周囲に多数のプレイヤーが死に戻ってきて、それを確認している間にもボクのHPは再び全損する。

 

「リスキルされてるのですー!?」

 

「どうなってますの!?」

「おいおい、バグか?」

「ユーキちゃん早く修正しろ!」

 

 周囲のプレイヤーはバグだと思っているようだが、ボクも何度か殺されて、ようやく状況を理解する。次元を捻じ曲げられている。それも、リスポーン地点だけを対象にしたものではない。マップの全てを同時に相手取った大規模攻撃だ。

 

 噴水の前には、この世界(チャンネル)で活動していたほとんど全てのプレイヤーが集まり、まるで有名アーティストのコンサート会場のようだった。

 

 〈トンネル避け〉も【ガードジャスト】も意味をなさない。空間そのものに面で攻撃を仕掛ける次元の歪曲は回避できず、判定時間の長さにより瞬間的なダメージの無効では受けきれない。

 

 この状況に対応するために【モーションアシスト】に指示を出すが――なんのアクションも実行されない。アシストの計算ですら、最適解を導けなかった。

 

 苦し紛れに《『位階上昇(アセンション)』》を試みるが、攻撃されているのはあくまで肉体であり、それを捨てない限りはいくら次元で上回ろうが躱せない。

 

 ――完全に詰んだ。あらゆるゲーム外の法則を受け入れる【フォッダー】のシステムは、破綻してしまった。ユーキさんが個別に〈魔導〉に弱体化処理を施さない限り、突破することはできない。

 

「何が遊びの土俵なら勝てるですか、土俵から出てもいないのに勝ち目が無いじゃないですか!クソゲー!」

 

 諦めて世界(チャンネル)を変更すると、さすがに他の世界(チャンネル)に及ぶ攻撃ではなかったらしい。しばしの平穏が訪れる。

 

 遅れて世界(チャンネル)を変更したメグさんと合流し、話を始めた。

 

「この世界(チャンネル)にまで攻撃はしてこないみたいなのですが……それは敗北宣言なのです。この攻撃への対応を諦めるなら――」

 

「――大会の優勝を諦めるに等しい、ですね。彼が大会に出るのかは存じ上げませんが……仮に出場しないとしても、最強を除外した次点決定戦に意味はありません」

 

 ユーキさんがパッチで弱体化したとしても同じことだ。プレイヤーに対して個別にナーフを入れるなんて許されることではない。

 

 平時ならまだ受け入れられただろうが、事前告知されていた大会の一ヶ月前にナーフなんて白けるに決まっている。かといって弱体化しなくても白けるのは確定だ。だからこその『詰み』だ。

 

「まあ、範囲爆撃でプレイヤーを全損させて回るのだけはペナルティを入れて欲しいですがね。あくまで《『魔眼』》の性能に対しては我々自身が対応する必要があります」

 

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>無差別PKとか害悪過ぎて草

 

>このゲームって別に全損してもデメリット無いけど、やっぱむかつくよな

 

>こうなれば俺達も魔眼とやらを獲得して対抗するしか無いか!?

 

>聞くところによると魔眼の性能ってガチャらしいぞ

 

>どうせクソ魔眼しか覚醒しなそう

 

>仮に対抗できる魔眼が引けてもただの怪獣戦争になるだけでゲームとしての要素全部死にそう

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「そうなんですよねー。怪獣戦争はゲームとしての面白みを損なうんですよ。その点で見ると、これまでのクソ要素はなんだかんだでゲームスキルとのバランスが取れてましたね」

 

「ちなみに今は帝王龍さんが【『クロノス』】を連打してゼプテンさんと戦ってるらしいのです」

 

「本人が全く使ってなかったから気が付きませんでしたが、既に怪獣がいましたね。ここに来て【黄金の才(ユニークスキル)】が復権ですか?ボクも課金するしか無いのかなー?」

 

 もはや全てを投げ出したい気持ちだ。実を言えば、ボクは1億円くらいなら支払えるので【黄金の才(ユニークスキル)】を得ることはできる。

 

 なんだか負けた気がして、これまでは通常スキルとテクニックで戦ってきたが、そろそろフェアな戦いとかを期待できる領域ではないかもしれない。どうせクソゲーなのだから信念なんて捨てて課金コンテンツを楽しんでも良いのでは?

 

 そんな自暴自棄な思考が脳裏を駆け巡るくらいには、参ってしまっているらしい。けれど、相手はマップ兵器の使い手ですよ?どうやって対抗するんですか?

 

 【シングル】ならまだしも、広大なフィールドで戦う【サバイバル】が迫ってるんですよ?愚痴くらい言わせてください!

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