卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
ゼプテンさんが再び《『魔眼』》を発動させる。それをボクが〚アンチマジック〛で打ち消す。そのまま光の速度で距離を詰め、拳を振りかぶる。
ゼプテンさんは立ち尽くしたままだ。そのままボクの拳が命中――しない。〈トンネル避け〉によってあっけなくすり抜ける。
「この技術はやはり成果だったな」
隣接したボクを睨みながら、ゼプテンさんが再び《『魔眼』》を起動する。ボクはそれを打ち消しながら大きく距離を取る。
〈トンネル避け〉をここまで使いこなすとは、腐っても上位存在ですね。掠りすらしなかった。ゲーム内ならまだしも、【モーションアシスト】のない環境ではかなり高度な演算と操作が求められるでしょうに。
「言っておくが、我の《『魔眼』》は1つでは無いのだ」
その言葉と共にゼプテンさんの片目が黄金色に変化し、虹彩の中心から螺旋状の紋様が浮かび上がる。瞬時に放たれた光は正午の太陽めいた熱を帯び、空気を震わせた。同時に片方の眼は紫色に輝き、ボクは反射的に〚アンチマジック〛を発動させた。
無効化の〈魔導〉は次元を捻じ曲げる《『魔眼』》の力を確かに打ち消し――それでも、ボクを貫くように出現した鋭い刃までは消し去れなかった。
なんとか〈トンネル避け〉で躱し、刃を身体から引き抜いたが……。厄介ですね。〚アンチマジック〛は一つの〈魔導〉しか打ち消せない。
「この力は、ゼタシアさんの《『魔眼』》ですね」
「必要だと思ってな。奴の瞳を抉り取ってきた」
外科的な手法による〈魔導〉の獲得――《『魔眼』》でありながら〘魔眼〙でもあるということですか。
このままでは千日手だが、実際に千日を指し続けたらボクの方が先に魔力が枯渇する。ここは攻めるしかない。
ボクは引き抜いた剣に全能の力で炎を纏わせ、勢い良く投擲する。
ゼプテンさんはまたもその場から動かず、〈トンネル避け〉でやり過ごそうとしたが、命中する直前に大きく身体を曲げて刃の軌道から逸れた。
「そうか、熱を帯びた攻撃は――」
「アシスト無しの〈トンネル避け〉では躱しきれませんよね」
熱を帯びた量子は常温に比して激しく振動し、周囲の空間にかすかな鳴動を生む。その動きを演算できなければ〈トンネル避け〉は成立しない。
お返しとばかりにゼプテンさんは加熱した大量の刃を空中に生成して撃ち放つが、ボクは刃を掴み取って投げ返しつつ、身体に当たるものだけは〈トンネル避け〉ですり抜けさせていく。
後方にあるユーキさんの秘密基地が心配だったが、どうやら〈魔導〉による障壁が張られているらしい。〚アンチマジック〛を使われない限りは気にしなくていいだろう。
「貴様は演算できるというのか?アシスト無しで?」
「【フォッダー】を見切るのが早かったですね。もう少し特訓してからのほうが良かったんじゃないですか?」
ゼプテンさんは肉体の動きで投げ返された刃をなんとか躱しつつ、時には腕を切り離して〈トカゲの尻尾避け〉で回避しようとするが、全てを躱しきることはできない。脚を掠めそうになったその瞬間に〚アンチマジック〛で自らの創造した刃を消し去った。
同時に宙を舞っていた全ての刃が消滅する。なるほど。〚アンチマジック〛でも刃は一つしか消せないと思っていましたが、一度の発動で同時に消せるわけですか。
「さぁ、次はどうします?あなたの〈トンネル避け〉は完成していない。優位なのはどっちでしょう?」
「ほざけッ!」
二つの《『魔眼』》が再び光り輝く――それと同時にボクはゼプテンさんの体内で魔力が脈動する気配を《『第六感』》で感じ取る。通常の発動手順で〈魔導〉を発動させるつもりだ。同時に発動される三つの〈魔導〉、その中で打ち消すべきは――。
「〚エデン〛!」
〚エデン〛による絶対的な障壁の前では次元を捻じ曲げる《『魔眼』》も、物質を創造する〘魔眼〙も、万物を消滅させる〈魔導〉も効果を示さない。障壁表面には無色透明の薄膜が波紋のように走り、衝撃は雫が弾ける音さえ残さず霧散した。ボクは全てを受け切ってから即座に障壁を解除する。
〚エデン〛は魔力消費が大きいが、消滅の〈魔導〉を切ったゼプテンさんの方が消耗は多い!
即座に大地を蹴り、空気との熾烈な摩擦で火花を散らしながら弾丸の如く光速域へと滑り込む。〈流水誘導〉を使わず意図的に空気抵抗をその身に受けることでボクの身体は熱を帯び――燃え盛る炎を纏いながら全身をぶつける!
消滅の〈魔導〉を切った直後のゼプテンさんは隙だらけだった。ボクの突進をまともに受け、跳ね飛ばされる。周囲の建物を突き抜けて派手に吹き飛んだゼプテンさんは、すぐに体勢を整えて遥か遠くから次元を捻じ曲げようとする。
苦し紛れの一手だ。視界に映っていなければ不意の命中もあり得ると考えたのだろうけど、〈ロールプレイング〉によってその行動は読めている。〚アンチマジック〛で発動の前兆ごと打ち消し、ゼプテンさんの
「おのれ……ッ!〈ロールプレイング〉、その力さえ防げればッ!」
「矮小な家畜の考えている事なんて、再現したくないんでしょう?だからあなたには出来ません」
初めて会ったときには既にボクの存在を認知していたのだろう。だから思考パターンを歪ませることで〈ロールプレイング〉を阻害できた。
けれどそのジャミングすら突破したボクに対抗するなら、最低でも〈ロールプレイング〉という技術自体を獲得する必要がある。
だからボクには勝てない。
「おのれおのれおのれおのれッ!おのれ!」
苦し紛れに《『魔眼』》を連発するゼプテンさんだが、既に見せられた手札はすべて封じた。次元の歪みを摘み取るように打ち消し、〈トンネル避け〉で刃を幽霊の如くすり抜け、〚エデン〛の残光で消滅の〈魔導〉までも撥ね返す。
「さぁ、残りの魔力はもう少ないでしょう?消滅の〈魔導〉を切らなければ五百日手くらいは出来たかもしれませんが……」
「――畜生に負けるくらいなら……」
その瞬間、ゼプテンさんの姿が変化する。白いシルエットのような姿ではなく、人間そのものの姿へ。上位次元の身体を捨てて、彼はこの世界に受肉する。
「《『
下位の次元に身体の部位を拡張する〈
それになんの意味があるのかというと……。