卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第409話 敵に塩を送る

「みなさーん、おはこんばんにちはー!!卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねるにようこそー!!」

 

 いつもの2倍くらいの発声で、元気よく視聴者さんに挨拶する。久々に後腐れなく【フォッダー】をプレイできる喜びもあって、ボクの声色はやる気に満ち溢れていた。

 

「『技能士』のメグなのです。卍さん、聞いたです?結局【サバイバル】は仕切り直しになるのだとか。ただ、既に決着がついていた私たちは突破した扱いになるらしいのです」

 

「えー!何を言ってるんですかー!あんな災害みたいな闘いを突破したところで真の実力は計れませんよ!ボクたちの枠も仕切り直してください!」

 

 当然ながら配信前に仕入れていた情報だが、今知ったばかりみたいに大げさな驚き顔を浮かべながら運営に文句を付ける。

 

 あの戦いは、次元を歪ませる攻撃をいかに受けきるか、それだけで全てが決まってしまっていた。それも実力のうちだと言われればそうかもしれないけれど、本来ならもっと勝ち残れたようなプレイヤーさんが、マッチング運だけで落とされてしまったことだろう。

 

「仕切り直しの時には私たちの組で落ちてしまった人も、もう一度チャンスを貰えるらしいのです。安心なのです!」

 

 なるほど、それなら問題はないか。それはそれで、優遇だ何だと怒る人もいるかもしれないけれど、ゼプテンさんの暴威は【フォッダー】でも広く知られていた。反対意見も少数に留まると思う。

 

「それならボクたちも一回戦の通過権を捨てて、もう一度【サバイバル】で競いましょうか!」

 

「え」

 

「きっとユーキさんならそういう需要も考えてくれるはずです。要望メールを送りましょう!」

 

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>バトルジャンキーかな?

 

>いや、ゼプテンさんの攻撃を往なせるなら十分に一回戦の突破資格があると思うんだが……

 

>ゼプテンさんが例外扱いされたのと同じように、卍さんが再参戦してくるのもそこそこ有害では?

 

>スマーフ行為やめろ定期

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「いやいや。ボク如きが再参戦したところで問題は無いでしょ。常勝無敗のトッププレイヤーとかじゃないですからね?」

 

「私は卍さんと戦いたくないから卍さんと組んでるのですけどねです」

 

 メグさんもボクを過大評価しすぎです。どこぞのおっさんも同じようにやたらと評価してましたけど、少なくともそんな自覚はボクにはない。

 

 『邪旺院』の力――呪い(まじない)の力とやらを活用できれば話は別かもしれないが、今のボクに引き出せるのはちょっと便利な〈魂の言葉(ソウルワード)〉程度のものだ。

 

「とにかく、ボクたちは今日も【サバイバル】に向けて特訓開始です!二回戦の【ダブル】なんて考えてる場合じゃありませんよ!」

 

「ちょっとは考えさせてなのですー!?」

 

 

 

「ふふっ、お姉様は相変わらずですね」

 

 いつも通りに始まる配信を眺めながら、灑智はぽつりと呟く。自身の力をまるで理解していないその有り様に、呆れた表情を浮かべていた。

 

「確かにお姉様の視点から見れば呪い(まじない)の力はアドバンテージたり得ないでしょうが――ゲームの環境を支配していたのは、いつだって貴女()()()()()

 

 万象に呼称を授けて区分けし、()()()()()()()()()その力――それさえ無ければ〈魂の言葉(ソウルワード)〉は超越者しか持ちえない『権能』のままだった筈だ。

 

 〈ロールプレイング〉はその中でも最たるものだ。かつては〈魂の言葉(ソウルワード)〉としてTRPGに造詣の深いプレイヤーにしか使えない『神業』であった筈なのに、いつの間にか単なるテクニックにまで堕ちてしまった。

 

 そもそも荒罹崇は呪い(まじない)の力を単なる〈魂の言葉(ソウルワード)〉の原理の一つだと捉えているが、〈魂の言葉(ソウルワード)〉そのものが世界を揺るがす外法なのだ。解釈を根本から間違えている。

 

「まあ――お姉様にとっては、敵に塩を送っているだけなのですがね」

 

 荒罹崇の持つ他者の追随を許さぬ至高の『権能』――その力が、己の力を配り歩く為だけに用いられているのだから、自己評価が低くなるのも当然とも言える。

 

 真の意味で己の為だけに呪い(まじない)の力を行使すれば、一切の比喩抜きに世界は終わりを迎えていただろうが――。

 

「そんな日はもう訪れないでしょうね、その力を仮に『自覚』してしまったとしても」

 

 区分を与えられた無数の力はこの世界に根付き、荒罹崇の手を離れてさらなる発展を遂げている。至高の『権能』すらも最早例外では無い。

 

 完全独自に発展した魑魅魍魎の蔓延るその環境で、荒罹崇が頂点に君臨できるかは定かでは無いが――。

 

「応援していますよ、お姉様。だからといって――私も負けるつもりはありませんがね?」

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