卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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11章 Tournament 混沌渦巻く大決戦!
第410話 マイクロアロー


「みなさんおはこんばんにちはー!卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねるにようこそー!」

 

「アシスタントのメグなのです!」

 

 いつものように元気な呼び掛けで配信をスタートする。それに合わせて、今やすっかり常連となったゲストのメグさんも挨拶した。

 

 今ボクたちがいるのは【闘技場】だ。【シングル】や【ダブル】、【パーティ】から【サバイバル】まで様々なPvPを行える会場で、定期的にイベントも開催されている。

 

「前回の【サバイバル】で勝利したプレイヤーも、希望者は本戦の【サバイバル】に参加できる事が決まりましたよー!」

 

「私だけなら別に希望しなくても良いかと思ったのですけど……卍さんが参加するなら仕方ないのです」

 

 ちなみに再参加であっても敗北したら敗退だ。メリットは皆無に等しいのだが、ボクは正々堂々と猛者達を薙ぎ倒して出場したいのだ。

 

 再び行われる【サバイバル】の開催日は今から一ヶ月後。何度も延期ややり直しを繰り返しているけれど、そろそろ予定通りに進んでほしい。

 

「というわけで本戦に向けて、今は定期の【サバイバル杯】が開催されてるので見学にやってきた所なのですが……」

 

 観戦用の中継画面に視線を向けながら、ボクは言葉を濁す。代わりにメグさんがそのカオスな現状を端的に伝えてくれた。

 

「……とんでもない魔境になっているのです」

 

 中継画面に映るプレイヤーは当たり前のように未鑑定装備で完璧に武装している。アイテム持ち込みが可能となった現環境の【サバイバル】は中核のコンセプトが完全に崩壊し、単なる『バトルロイヤル』と化していた。

 

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>サバイバルとはなんだったのか

 

>森マップだからサバイバルっぽいだろ!

 

>市街地マップとかもあるけどね

 

>ユーキちゃん早く修正しろ

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「それだけなら良いんですけどね。広いマップで戦うというコンセプトは残ってますし。……でも、見てくださいよ、これ」

 

 しばらく眺めているとプレイヤーが唐突に瞬間移動し、別のプレイヤーへハンマーを振り下ろす。相手はそれを瞬間移動で回避したかと思えば、大量の矢を撃ち放った。それに対しハンマーを持ったプレイヤーは転移を連発して回避を繰り返す。

 

「«マクロテレポート»環境になってるのです……」

 

 【ホームリターン】を記録することで、コストも詠唱時間(キャストタイム)再詠唱時間(リキャストタイム)も不要で自在な転移を可能にする新世代のテクニック、«マクロテレポート»。

 

 これにより移動手段のほぼ全てが転移で代替可能となり、光の速度すら軽く超える最速の戦闘が常態化している。

 

「うわぁ、今の見ました?振り下ろす時間すら割きたくないからって、相手プレイヤーに武器が貫通する位置で転移しましたよね」

 

「あんなの避けられないのです!誰なのです!?こんな【マクロ】を生み出したのは!」

 

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>おまえらじゃい!

 

>初心者が束になってもガチ勢に勝てなそう

 

>これは末期ですわ

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 そんな終わり切った対戦環境だが、当然ながら【フォッダー】のプレイヤーは対策も見出している。

 

 ハンマーによる連続攻撃を受けきれないと悟ったのか、相手のプレイヤーは【ストレージ】からアイテムを取り出して周囲にばら撒く。それは一見すると粉のように見えるのだが……。

 

「〈定義侵食〉によって生み出された極小の矢ですね。あれがばら撒かれた範囲で«マクロテレポート»を使うと、多大なダメージを負うことになるんですよ」

 

 【〈マイクロアロー〉】といったところか。プレイヤーが普通に移動する分には〈流水誘導〉で避けたり〈トンネル避け〉で回避したりするのは簡単だ。

 

 けれど«マクロテレポート»はあくまで記録した体勢で転移を行う【マクロ】であり、周囲環境に応じて回避しながらの転移ができるほどの拡張性が無い。

 

 【〈マイクロアロー〉】をばら撒かれると、転移を主軸にした戦いは封じられる。あるいは転移先の粉を除去する手順が必要になる。

 

 他の転移手段を用いれば――とも思ったが、スキルによる【テレポート】は転移先に障害物があると発動できない。〈魔導〉の〚テレポート〛ならうまく避けられるかもしれないが、消耗が大きすぎるので連発はできない。

 

 こうなると«マクロテレポート»を扱いたい側が粉を風などで除去しようと試みるのは自然だが――。

 

 画面の先にいるプレイヤーも足を踏み鳴らして風を引き起こすが、粉が取り除かれることはない。まるでその影響を受けていないかのように等間隔に周囲へ張り巡らされている。

 

「うわぁ……【キネシス】なのです」

 

【キネシス】

[アクティブ][アイテム][補助]

効果:[アイテム]を[任意]に[移動]させる。

 

「【キネシス】はアイテムの操作可能数に上限が無いんですね……。装備のスキルで【キネシス】を覚えたほうがいいかもしれません」

 

 こうなると«マクロテレポート»を主軸にしていたプレイヤーは手も足も出ない。最終的には散布された粉を【キネシス】で大量にぶつけられ、呆気なく全損した。

 

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>サイキック強くね???

 

>キネシスに加えてジョーカーも持ってるとかTier1だな

 

>【悲報】アサシンさん、Tier2に落ちてしまう

 

>アーチャーも格が上がりそうだな

 

>粉戦術は弓を媒介としてないからアーチャーである必要は無いぞ

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「これはボク達がこれまで戦ってきた環境とは別物になりそうですね……!」

 

「こうしちゃいられないのです。【キネシス】付きの装備を入手するか、サブを【サイキック】にするか、急いで決めないと!」

 

「装備と言えば新しいフォルダさんですね。さっそく会いに行きましょう!」




テクニックその127『マイクロアロー』
極小に作られた粉のような矢のアイテム、あるいはそれを扱う戦術を指します。
微細な矢がばら撒かれた環境で«マクロテレポート»のような転移を行うと、大ダメージを受けてしまいます。これにより実質的に転移を抑制する事ができるのです。またスキルによる【テレポート】は転移先に障害物があるとそもそも転移できません。これを突破して転移するには〈魔導〉の〚テレポート〛が重要ですね。

テクニックその128『パウダーキネシス』
【サイキック】のスキルである【キネシス】はアイテムを遠隔で制御する事ができますが、制御できるアイテムの数に制限はありません。微細な粉の1つ1つを制御して空中に留めたり、大量の武器で物量攻撃を仕掛ける事が出来ます。
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