卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第415話 アイテムショップ、再び、再び、再び、再び

 【キネシス】のスキルは手に入れたが、当然ながら〈パウダーキネシス〉のテクニックを活用するためには散布するアイテムが必要だ。

 

 ということでやって来たのは『アイテムショップ』。猫ですさんが考案した多数のアイテムを取り扱っているお店だ。

 

 もはやボクはこの店の常連と言っても過言ではないくらいに通い詰めており、そのたびに斬新な発想から生み出される新テクニックに感心させられている。

 

 新しいフォルダさんもそういったアイテムを取り扱っていることがあるのだが、彼はあくまでも鍛冶によるランダムガチャに人生を賭した廃人プレイヤーだ。斜めに逸れているどころか明後日の方向を向いた発想は彼にはできない。

 

「こんにちはー!遊びに来ましたよ!」

 

「いらっしゃいませですにゃん!お待ちしておりましたですにゃん!」

 

「卍さんを待っていたのです?」

 

 猫耳を付けた元気な看板娘兼店主の猫ですさんが出迎えてくれる。この雰囲気、何か自慢したいことがあるようですね?

 

「そうですにゃん!卍さんの配信に紹介されれば新製品のアイテムが飛ぶように売れることは間違いなし!環境を征することもできちゃうにゃん!」

 

「その分だと、〈パウダーキネシス〉に用いるアイテムのようですね?」

 

 猫ですさんはカウンターの下から一本の瓶を取り出す。瓶の中には一見すると何も入っていないように見えるが――視力を強化することでようやくわかった。やたらと屋根の尖った家のような物体が山のように積まれている。

 

「こ、これって……家なのです!?」

 

「普通の武器を作っても壊されてしまったらおしまいですにゃん。それなら壊されないためにどうするか――結論は家の形状で作る、それしか無いにゃん!」

 

 まじまじと見つめてようやく家だと認識できるほど小さな物体だ。1つ作るだけでも大変そうなのに、粉末として辺りにばら撒けるほどに量産化している。鋭利に尖った三角の屋根は、迂闊に転移してしまえばプレイヤーの身体をズタズタに引き裂いてしまうことだろう。

 

「凄いですね……。確かに単なる小型の刃物を作っても、壊されてしまえばおしまいですからね。破片でも一定の効力はあるでしょうが、壊されないに越したことはありません」

 

 ボクがそのアイテムに評価を下そうとしたとき、違和感を覚える。

 

 猫ですさんがその程度の発想で満足するか?確かに作るのは難しいだろうけれど、家を武器にするなんて発想自体は常識の範疇だ。まだ何か――

 

 ――家の中に、何かがある?

 

 ボクは【キネシス】を使用して家を1つ取り出して、扉をゆっくりと開ける。

 

 玄関には寝具が鎮座していた。恐らくは上級モンスターの羽毛で作られた高品質なベッドで、HPやMPの自然回復量が大きく増加する家具だ。

 

 ベッドは家の床と綺麗に接着しており、取り外すことはできなさそうだ。恐らくは『不壊』――ベッドもまた家を構成する部品として扱われている。

 

 つまり――この家はベッドである。

 

 ボクは【イグニッション】を発動させてHPを消費する。そして家の外壁に指で触れてみた。次の瞬間、瞬く間にHPが回復していく。ベッドの特性である自然回復量の増加が確かに効果を発揮した。

 

 そしてボクはもう1つだけ家を取り出し、2つの家に同時に指で触れる。すると回復量はさらに跳ね上がり、あっという間にHPは満タンに達した。

 

「ま、まさか……。寝具の効果は――」

 

「――そう、寝具の効果は重複するんですにゃん」

 

 ボクは取り出したばかりの2つの家ではなく、瓶の中にある無数の家に目を向ける。恐らくあれは全てが家であり、ベッドだ。たった2つの家でここまでの回復が見込める。それなら瓶いっぱいの家に接触すれば?

 

「でも、場合によっては相手も恩恵を受けることにはならないのです?触れているだけで自然回復の恩恵を受けられるなら――」

 

「大丈夫ですにゃん。【ホーム】に紐づけされた家具は、所有者にしか扱えないのですにゃん」

 

「そうなのです!?」

 

 猫ですさんの回答により、唯一の懸念点にも穴がないことがわかった。これは革命的なアイテムだ。«テレポート»が全ての環境を塗り替えたように、このアイテムもまた最新環境に台頭することだろう。

 

「これは環境が読めなくなりましたね。このアイテムや«テレポート»が支配する環境となることは間違いないでしょうが、それに対抗する様々なテクニックもまた頭角を現すでしょう」

 

 ――猫ですさんは気づいていないようだが、この極小の【ホーム】にはさらなる活用法がある。単なる«テレポート»の対策などではない。その使い方こそが最も暴力的で、環境を席巻する要因となる筈だ。

 

 ――その扱い方を、示すべきか。

 

 【フォッダー】の頂点を決める大規模大会、その一回戦である【サバイバル】の始まりは近い。わざわざ手札を晒す必要もないだろう。それにこのアイテムが出回ってしまえば誰でもすぐにでも真似できるテクニックだ。ボクが示すまでもなく大会が始まる頃には浸透しているかもしれない。

 

 配信映えや手札を公開することのデメリットなど、様々な要因を天秤にかけた結論は――単なる検証の模擬戦なんかで公開するのはもったいない。

 

 本番の戦いで、華々しくでびゅーさせてあげましょうか!

 

「それではこのアイテム、【〈パウダーホーム〉】ですか?購入します!」

 

「私もなのです!」

 

「ありがとうございますですにゃん!ご一緒に【ふわもこソファー】もお付けしますにゃん!」

 

「わーいなのです!早速座ってみるのです!」

 

 メグさんはソファーに座り込み、そのままだらけ始める。みるみるうちに彼女の身体は沈み込んでいく。まるでソファーに食われているかのような恐るべき光景だった。

 

「うわー!助けてなのです!」

 

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>人食いソファー怖すぎだろ

 

>トラップかな?

 

>今世紀最大の邪悪な家具

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テクニックその130『パウダーホーム』
〈パウダーキネシス〉用のアイテムです。『不壊』である【ホーム】を利用する事で、衝撃を受けても破壊されない圧倒的な耐久性を確保。うかつに«テレポート»してきた相手には鋭利な屋根が突き刺さります。
さらにこの【ホーム】はベッドでもあります。ベッドはプレイヤーの自然回復力を大きく引き上げるため、この粉に触れているだけで瞬く間にHPとMPが回復します。さらに『仕様』として【ホーム】に紐づけされた家具は所有者以外は使用不可能!まさに無敵のアイテムです。
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