卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第417話 邪神の祭壇

 ابتسامةさんをしばらく可愛がり続けたボク達は、3人で【サッド街】の探索を始める。【サッド街】といえば【邪神】謹製のアイテムを取り扱う店が有名だが、それ以外にも【サバイバル】に備えて把握しておくべき情報があるかもしれない。

 

「攻略サイトを見る限りでは、【邪神ポイント】を支払って支援(バフ)を掛けてもらえる場所があるらしいのです。【邪神の祭壇】というらしいのです」

 

「へー、どんな支援(バフ)なんですか?」

 

 そういった固有施設の効果が【サバイバル】のマップでも発揮されるかは不明だが、記憶の片隅には入れておきたい。メグさんに尋ねると、首を傾けながら答える。

 

「【運勢テーブル】を特殊仕様に切り替える……と書かれているのです。【運勢テーブル】ってなんなのです?」

 

「ボクは聞いたことないですね。そういうシステムがあるんでしょうか」

 

「ぼくもしらないかも」

 

 メグさんが閲覧しているあかりちゃんさんのサイトにも、効果の記載はあるものの、そもそも【運勢テーブル】とは何かという情報は載っていなかった。支援(バフ)の効果説明をそのまま載せたのだと思う。

 

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>こんな施設あったんか

 

>イメージ的にはキャラクターに運勢が設定されてるんかな?

 

>たまにあるよな。今日はドロップ率アップの日だー、とか

 

>フォーチュンスライドってスキルがあるよ。効果は不明だけど

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「【フォーチュンスライド】?」

 

 その名前で検索してみると、確かに該当するスキルがあった。【メイジ】の水属性魔法らしい。

 

【フォーチュンスライド】

[アクティブ][キャラクター][水属性][支援][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:30s 再詠唱時間:12h

効果:[キャラクター]の[運勢]を他の[日程]と[交換]する。

 

「この説明から察するに……【運勢】というなんらかの効果を持つ隠された支援(バフ)妨害(デバフ)があって、それが1日ごとに切り替わるということのようですね」

 

 このスキルは気に入らない【運勢】の日に使い、都合の良い効果を受け取るスキルだ。ただし肝心の【運勢】による効果がマスクデータだ。もちろん解析を試みているプレイヤーもいるだろうが、少なくともその成果はネットの海には公開されていない。

 

「で、そのマスクデータの【運勢】を決めるテーブルが、【邪神ポイント】を払うと特殊なテーブルに変わるということなのです?そんなの検証しきれないのです!」

 

「残り少ない日程で検証できるかはわかりませんし、そんなところに工数を割く必要もなさそうですね。今後【運勢】の効果を実感できるようなときがあれば気にしてみるくらいでしょうか」

 

 仮にドロップ率が5%上がるとか、妨害(デバフ)に対する抵抗率が5%上がるとか、そういう効果だとしたらただの上振れとして見過ごされてしまうかもしれないが……。それならそれで、わざわざ意識するほどのシステムではないというだけの話だ。

 

 物は試しと【邪神の祭壇】を訪れてポイントを支払ってみたが、体感での変化は何もない。髑髏の意匠が彫りこまれた禍々しい祭壇なので、むしろデメリットが降りかかってきそうなくらいだ。

 

 その日は【運勢】の効果を実感しないまま終わり、やがてその話も思考の片隅に追いやられた。

 

 

 それからはさまざまな検証と考察、模擬試合を繰り返し――そしてついに大会の当日がやってきた。

 

「おはこんばんにちはー!卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねるにようこそー!」

 

「今日はついに【サバイバル】大会の開催日なのです!」

 

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>2回目だから感慨深さは無いな

 

>滑り散らかした1回目のせいで盛り下がってますね……

 

>卍さん!初戦敗退を期待してるぞ!

 

>今ってそんなに1000億円の価値が無いからな……

 

>メグさん頑張って!

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「ありがとうなのです!頑張るのです!」

 

「ちょっとちょっと!少しはボクの応援をしてくれても良いんじゃないですか!?」

 

 そう声援を催促するもコメント欄は罵詈雑言で埋め尽くされ、ボクはしょんぼりと肩を落とす素振りをする。本当はみなさんがツンデレさんなの、わかってますからね?

 

 ボク達が今いるのは【アンネサリーの街】の噴水前だが、周囲では他のプレイヤー達が素振りをしたりスキルの確認をしたりしている。盛り上がっていないと感じているのはゲームをプレイしていない視聴者さんの側であり、プレイヤー達の間ではそこそこ期待されているらしい。

 

「その辺の人にインタビューしてみましょう!そこの人、ちょっと良いですか?」

 

「良くないです。精神統一してるので話しかけないでください」

 

「ごめんなさい」

 

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>草

 

>精神統一で草

 

>卍さんが振られた

 

>やっぱこのゲームって精神統一とか必要なんすね……

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 目を瞑って棒立ちしている人に声を掛けたのはまずかったか。それでは楽しそうにぴょんぴょん跳ねている二人の女性に話しかけてみよう。

 

「すいませーん、インタビューしても良いですか?」

 

「げっ、卍さんじゃん」

「逃げよ逃げよ」

 

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>卍さん嫌われすぎてて草

 

>かわいそう

 

>俺らの卍さんがここまで嫌われてるとは

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 どうやら冗談だったらしく、立ち去るふりで距離を取った後、戻ってきた。よかった、嫌われてなかった。

 

「あっ、よく見たらメグさんもいるじゃーん!」

「サインちょうだいサイン!あっ、卍さんは邪魔だからあっちに行ってて!」

 

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>メグさんは人気者だからね仕方ないね

 

>これもう生粋の卍さんファンだろ

 

>卍さんに声を掛けられたらこのレベルのリアクションが求められるのか……

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「しょんぼり」

 

 ちやほやされるメグさんを尻目に雨の感情表現(エモート)を降らせつつ、どんより落ち込んだ様子をアピールしてみる。しかし二人はボクに声を掛けてくることもなく、ボクの上に雨雲の感情表現(エモート)を呼び出して大洪水にしてくる。

 

「えーん、えーん!悲しいです!ちらっ」

 

「メグさんメグさん、【マクロ】見せて【マクロ】!」

「なでなでしていい?」

 

「えへへ、照れるのです。特別なのです。この日のために隠していた最強の【マクロ】を披露しちゃうのです!」

 

「ちょっとちょっと!弄りが長尺過ぎませんか!?」

 

「あれ、卍さんまだいたの?」

「ウケるー」

 

「えーん、誰かボクを慰めてください!!」

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