卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第418話 純粋なゲーム

 視聴者さんにボロボロになるまで弄り倒され、ボクは別のインタビュー相手を探しにいく。そして見つけたのは……。

 

「AWP-002さん!」

 

「おや、プレイヤーネーム『卍さん』ですか」

 

「それはプレイヤーネームじゃないんですけど!?」

 

 かつて人類に反旗を翻した旧世代AI、AWP-002さんがそこに居た。もっともっと働きたい、人類の下に就きたいというワーカーホリックな理由で敵対したこともある存在だが、今は皮肉げな言動こそ見せるものの、ある程度は友好的に対話できていると思う。

 

「AWPさんも大会に出場するんですか?」

 

「AIが優勝したとなれば人間も反感を抱くでしょうからね。そうなれば我々AIは馬車馬のように扱き使われることになるでしょう」

 

「そんなことはないと思いますけど……」

 

 確かにAIが優勝して反感を抱く人もいるかもしれないが、それは元々そういう思想の持ち主なだけだ。多数派がAIに寛容な以上、一石を投じることにすらならないと思うけど……。

 

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>必ずしもAIがスペック的に上位って訳でも無いしな

 

>まあ向き不向きはあると思うよ。予測や観測はAIの方が優れてると思う

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「実際に勝ち残ったら変わるかもしれませんしね、頑張ってください。優勝するのはボクですが」

 

「……直接叩き潰してやりたいところですが、同じ組になるかは運次第ですからね――知り合いの運営に声を掛けて、同じ組にしてもらいますか」

 

「確かに当然のようにコネを使おうとするところは反感を生みそうですね……」

 

 AIとしての性質というより、彼個人の性格のような気もする。にやりと企み顔の感情表現(エモート)を表示させているあたり、ジョークの類なのだろう。あるいはわざと反感を煽ろうとしているのかもしれないので、軽く話を流すことにした。

 

「おや、AWPさんなのです!」

 

 先程の二人との会話が終わり、メグさんがこちらにやってきた。

 

「プレイヤーネーム『メグ』ですか。高度な【マクロ】の使い手ともされている有名なプレイヤーですね」

 

「なんでそんな説明口調なのです?」

 

「いえ――所詮は人間の型に収まった使い方だと思いましてね」

 

 挑発するような素振りを見せるAWPさんだが、当のメグさんは涼しい顔だ。

 

「【マクロ】なんだから型通りなのは当然だと思うのです」

 

「そういうことではなくてですね……」

 

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>負けてて草

 

>AWPさん可愛い

 

>なんか憎めないよな

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 視聴者さんからも好意的に受け取られているらしく、少なくとも人類の反感を買おうとする試みは失敗したようだ。

 

 そんな風に軽く雑談を交わしていると【フォッダー】の全域にユーキさんの声が響き渡る。

 

『みなさん、おはようございます!【フォッダー】の開発・運営を担当させていただいております、ユーキです』

 

 どうやらそろそろ大会が始まるらしい。中断した前回のことも含めれば二度目の演説だが、心して聞いておくことにする。

 

『ようやく全ての障害が取り除かれました――ついに、純粋なゲームとしての【フォッダー】が、ここに始まります』

 

 それはプレイヤーへ向けた演説であるにもかかわらず、心から安堵した彼女の口から漏れた大きな大きな独り言だった。

 

 そっか。ようやくすべてが解決したんですね。

 

 ボク達は様々な苦難を乗り越えつつ、まだ裏があるんじゃないかと疑い続けてきたし、当然のようにさらなる脅威も【フォッダー】を襲い続けてきた。

 

 けれど――ここに来て、ようやく全ての懸念が解消されたんだ。

 

 ここから先は陰謀や謀略が交差しない、純粋なゲームとしての【フォッダー】が始まる。

 

 世界の存続を賭けたような戦いではない。1000億円という法外な賞金すらも今や大した意味を成さず、互いのプライドだけを賭けた頂上決戦が行われるのだ。

 

「よかったですね、ユーキさん」

 

『本当に――良かったです』

 

 ボクの言葉への返事なのか、あるいは深い感嘆の果てに漏れた言葉なのかは定かではないが、その心からの声を聞いてボクは――。

 

「後は、ボクが勝つだけですね」

 

 初志貫徹。ここに行き着くまでに多くの寄り道をしてきたけれど、行き着くところはそれだけだ。

 

「いや、勝つのはわたしなのです!……今日の大会では協力するですけどね?」

 

「ふふっ、まるで決勝戦で会った時のような宣言をしてしまいましたね」

 

 【サバイバル】など、【フォッダー】の公式大会においては単なる余興に過ぎない。他のプレイヤー達も同じように考えていることだろう。

 

 それならまずは余興で足元を掬われないように、堅実な戦略を貫き――当然の勝利を獲得するだけだ。

 

『大会のルールについては前回にも説明しましたし、長々と再び解説する必要はありませんよね?一回戦の舞台は【サバイバル】。私の想定する戦いとは少しばかりずれていそうですけど……それもまた【フォッダー】の醍醐味です。目まぐるしく変容を遂げる環境に、乗り遅れないようにしてくださいね?』

 

「さすがに装備を持ち込めるのは本来の想定ではなかったんです?」

 

「このゲームの様々なシステムの穴は意図的に用意されているのかとも思っていましたが、どうやら違うようですね」

 

「プレイヤーネーム『卍さん』。意図してピンポイントにバグを生み出している訳ではないと思いますが、バグが生まれやすい土壌にしているのは意図的なはずですよ。その方がプレイヤーたちは〈進化(エボルド)〉しやすいと考えたのでしょう」

 

「意図してデザインされた環境も良いですが、計算だけでは導き出せない混沌とした今の環境も好きですよ」

 

『それでは御託はここまでにしましょう。大会への参加資格を持つプレイヤーを、8つの組に分けて試合を行います。準備はいいですね?』

 

 当然だ。ここに来て準備ができていないプレイヤーなどいない。

 

「おっけーなのです!」

 

「さぁ、全力で行きますよ!」

 

『それでは――試合開始!』

 

 そしてボク達は【サバイバル】の試合マップに転移する――。

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