卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
試合が始まった瞬間にボクは«テレポート»を発動させて【サッド街】へと転移する。瞬時に切り替わった景色の先には、今まさに多数のプレイヤー達が転移してくる姿があった。
「【アームズスイッチ】――【フルバーニング】!」
瞬間的に炎属性特化装備へ切り替え、そのまま範囲攻撃を発動させる。周囲一帯に爆炎が広がり、エリア内のプレイヤーを一掃――できていない。確かに一部のプレイヤーは装備すら着けておらず、その一撃によって全損したが、多くのプレイヤーはスキルの発動に合わせて【ガードジャスト】を発動したり、そもそも最初から当たり前のように炎属性耐性装備を着けていたりと、思い思いの方法で爆炎から逃れる。
当然ながら攻撃というアクションを取れるのはボクだけではない。最適化された《『第六感』》からスキルの予兆を感じ取る。
【ダイダルウェイブ】が来る!
瞬間的に«テレポート»を起動して発動者から大きく距離を取ると案の定と言わんばかりに大量の水が放出される。ボクのいた地点を目掛けて放たれたようだが、その周囲にいたプレイヤー達が巻き添えを食らって大きく弾き飛ばされていく。
次の瞬間、水色の弾丸がボクの頬を掠めた。反射的に顔を逸していなかったら直撃していたはずだ。その一撃を放ったのは、水属性魔法を放ったプレイヤーとは別のプレイヤーだ。
明らかに他のプレイヤーを無視してボクにだけ狙いを定めている。水属性を選んでいるのは、炎属性の使い手が装備やスキルの構成上、水属性のELMが低い傾向にあると踏んでいるからだろう。
【焦熱の加護】
[パッシブ]
効果:[炎属性][ELM]を[増加]させ、[水属性][ELM]を[低下]させる。
そしてボクを目掛けて更なる弾丸が放たれる。使い手の周囲には3つの【アクアスプリンクラー】が設置されており、それら全てがボクだけを狙っている。
【アクアスプリンクラー】
[アクティブ][座標][エリア][水属性][攻撃][設置][魔法]
消費MP:6 詠唱時間:5s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m
効果:[アクアスプリンクラー]を[設置]する。[アクアスプリンクラー]を[起点]として[形成]された[エリア]内の[敵][キャラクター]に[アクアショット]を[発動]する。
【アクアスプリンクラー】から射出された【アクアショット】は〈流水誘導〉の流れに乗って光の速度でボクに迫り――瞬く間に明後日の方向へと逸れていく。
〈流水誘導〉は空間に空気抵抗の少ない道筋を作り、弾道を制御しつつ速度を保つ技術だ。裏を返せば、より空気抵抗の少ない道筋を作り出せば、攻撃を受ける側がその軌道を変えることもできる。
相手プレイヤーは手数で勝負するつもりなのか、攻撃を逸らされても気にせずに【アクアスプリンクラー】を量産していくが――そこでボクはエリア形成スキルの発動を予知する。
このスキルは――【ミラクルファウンテン】だ。
「メグさん!」
「【シャラップ】!」
ボクの横へ«テレポート»したメグさんが詠唱段階でスキルの発動を止め、すかさず振り返って【エレウテリア】を発動させる。
煌めく緑色の風は燃え盛る炎を纏いながら光の速度を越えて吹き荒び、【ミラクルファウンテン】を発動させようとしたプレイヤーに命中する。大きく後方に
【ガードジャスト】で攻撃自体を無効化されたのではなく、瞬間的にHPを回復されたのでもない。攻撃を受けたこと自体が、なかったことにされた。
【ディヴィジョン】
[アクティブ][支援]
詠唱時間:0s 再詠唱時間:480s
効果:[攻撃]を[受けた][直後]に[発動]できる。[攻撃]を[無効]にする。
その現象を目の当たりにして、ボクは即座に【ファストリカバー】を起動する。HPゲージは減っていない。しかし、回復しておかなければまずい。
「――察しが良いね」
【ディヴィジョン】を使った推定【アサシン】のプレイヤーは感心するようにそう漏らす。聞かせるつもりで言ったわけではなかったようだが、ボクの耳には届いていた。
間違いない、【フェイクショット】を撃ち込まれていた。
【フェイクショット】
[アクティブ][投射][攻撃][物理][妨害:確定]
詠唱時間:0s 再詠唱時間:120s
効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。この[スキル]による[ダメージ]は[キャラクター]の[HP表示]に[反映]されない。
不可視で、物質干渉力を持たず、HPゲージにも影響を及ぼさない。そんな【アサシン】の持つ極めて特異性の高いスキルだ。攻撃されていたことにも気づかず全損させられる。
実際のダメージ自体はそこまで大きくはないものの、【アサシン】特有の【デュアルスキル】によるスキルの重複取得から繰り出される【フェイクショット】は、気づかぬ間に戦況を変えていることがある。
恐らくあのプレイヤーは水属性の【メイジ】と【フェイクショット】に特化した【アサシン】という
後方のプレイヤーについて分析しながらも、ボクは前方の水属性【メイジ】への対応を行う。この期に及んで【アクアスプリンクラー】を量産しているところから読み取れるのは、彼もまた【デュアルスキル】を取得した【アサシン】であるということ。
背後にいるプレイヤーと組んで、水属性で圧力を掛けながら【フェイクショット】で削り取ろうとしていたんだ。
ボクは妖精さんを前方に飛ばして接近させようとするが、«テレポート»を連打して距離を取りながらも四方八方に【アクアスプリンクラー】を設置し続けていく。妖精さんでは近づけない。さらにキャラクターを対象に発動する【アブソーブ】も射程外だ。この分だと【メテオ】も躱されるだろう。ボクにできることは少ないが――
――メグさんなら話は別だ。
「«ソーラーレイ»、なのです!」
転移を繰り返して妖精さんをのらりくらりと躱し続けるプレイヤーを、一条の光が貫く。その一撃でHPは大きく減っていき、ほんの僅かにゲージが回復に転ずるも、そのまま全損してしまう。
恐らくは【ディヴィジョン】を発動させたのだろうが、«ソーラーレイ»はスキルによる攻撃とは違い、実質的には多段の継続攻撃だ。一定時間の無敵を得る【ガードジャスト】なら防げるのだろうが、単発の攻撃を防ぐことしかできない【ディヴィジョン】では足りない。
「卍さんにばかり構って――私を忘れちゃダメなのです!」