卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第421話 背水の陣

「確かに配信映えはしませんが、しばらくは待ちの姿勢でしょうね」

 

 元々【サバイバル】は自分が戦わなくても他の人が蹴落とし合ってくれればそれでいいルールだ。

 

 それを防ぐために用意されたのがエリアの縮小というシステムなのだが、潤沢な回復アイテムで問題なくペナルティのダメージを受けられてしまう以上、最適解は戦わないことになってしまう。

 

 しかしその最適解があまりにも普遍的な答えであるが故に、戦況が膠着してしまっている。とはいえ、痺れを切らして他の布陣に攻め込みに行くのは自分の実力に余程の自信があるプレイヤーくらいだろう。

 

「このゲームはそんな自信のあるプレイヤーが少なくないんですけどね。まあ――すぐに戦況は動きますよ」

 

 そう解説した途端、状況が動いた。ボク達のお家から50mほど離れた場所にプレイヤーが«テレポート»して来る。キャラクターの上部にはHPが表示されており、なぜか瀕死の状態のようだが――。

 

「あれは――」

 

 ボクがそのプレイヤーの名前を呼ぼうとしたその瞬間に、無数の矢が射出される。

 

「AWP-002さん!」

 

 即座に〈マイクロダム〉で矢を止めようと考えたが、それは無意味か。空気抵抗で減衰されないことに定評のある【アーチャー】のスキル、【ピアースショット】だ。キャラクターを貫通するという説明にもかかわらず、アイテムだろうがオブジェクトだろうが、多少の抵抗は容易く突破してしまう。

 

【ピアースショット】

[アクティブ][投射][攻撃][物理][条件:弓][矢]

消費MP:2 詠唱時間:0s 再詠唱時間:25s

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。この[スキル]は[キャラクター]を[貫通]する。

 

 AWP-002さんの矢であれば〈トンネル避け〉で躱すのも難しい。そもそも【アーチャー】自体がDEXに長けた職業(クラス)なのだから当たり前だ。となれば、なんとかして相殺する必要がある。

 

「«絶対防壁»なのです!」

 

 メグさんが【パーティストレージ】から取り出したのは、巨大な鉄板だった。ボクを守るように前に出ながら鉄板を突き出すと、一瞬で矢が粉々に砕けていく。

 

 貫通に特化した最強の矢を受け止める最強の鉄板、その正体はダンジョンの外壁だ。

 

 〈トンネル避け〉を無効とする特定のダンジョンの外壁を盾として使うことで、すり抜けることすら許さない最高レベルの防御壁にしたのだ。

 

「【フェアリーブレス】!」

 

 鉄板の陰からお返しとばかりに輝く風を撃ち放ち、それに合わせて【フェアリーストームワンド】が【ゲールウィンド】を起動する。

 

 吹き荒ぶ二種類の風は威力では先の矢に遠く及ばない。見ればAWP-002の周囲にはボク達と同じように【〈パウダーホーム〉】が展開されている。そのまま直撃させることは叶わないが――。

 

「【シルフストーム】!」

 

【シルフストーム】

[アクティブ][6回][特殊][エリア][風属性][攻撃][魔法]

消費MP:12 詠唱時間:0s 再詠唱時間:15s

効果:[自身]が[発動]した[投射][魔法]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。

 

 投射魔法を中心点としてエリア型の魔法を発動させる【シルフストーム】が、ドーム状に展開される。その範囲にいたAWP-002さんは攻撃を無効化できずにダメージを負った。そう、エリア系のスキルは範囲内の対象にシステム的なダメージを与える攻撃だ。〈マイクロダム〉では減衰できない!

 

 【シルフストーム】の発動により【タクティクスフラッグ】が補充され、即座に使って再詠唱時間(リキャストタイム)を踏み倒すと、【フェアリーブレス】を撃ち放つ。

 

 次は攻撃を受けまいと«テレポート»で後方に下がるAWPさんだが、その背後にメグさんが転移し、巨大な斧を振り下ろす。転移と同時に叩き込まれた斧の一撃は【ガードジャスト】で無効化された。

 

「やれやれ、迂闊に【〈パウダーホーム〉】の範囲から抜けるべきではありませんでしたか」

 

 AWPさんは未鑑定の弓を回転しながら横薙ぎに振るい、メグさんを攻撃する。メグさんは«テレポート»で後方に下がるが、弓の先から放たれた矢を見て即座にボクらの陣地へ転移し直す。

 

 メグさんは【〈パウダーホーム〉】の圏外の上空へ転移し、屋根に着地するとポーションを使用してHPを回復させた。

 

「あの人――『フェイク』系スキルの使い手なのです!」

 

「またですか!」

 

「プレイヤーネーム『メグ』。【フェイクショット】は観測できない攻撃のはずですよ。根拠なしに他者のスキル構成を語らないで頂きたい」

 

「とは言っても――《『第六感』》が疼くのです。今の矢を受けていたら全損していた、間違いないのです」

 

 先程AWPさんが放った矢は【アーチャータクト】によって放たれた単なる通常攻撃だ。ボクのようなか弱い【メイジ】ならまだしも、メグさんを仕留めるほどの火力があるとは考えられない。

 

 ならば想定されるのは――気づかぬ間にHPを減らされていたということだろう。メグさんはそう結論づけた。

 

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>キルエリアだな

 

>アサシンってほんとクソゲーだな!!

 

>HPが減ってると思ってたがそういう事か

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【キルエリア】

[アクティブ][エリア][攻撃][物理]

詠唱時間:0s 再詠唱時間:120s

効果:[自身]の[HP]が[10%][以下]の[時]のみ[発動]できる。[自身]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。この[スキル]による[ダメージ]は[キャラクター]の[HP表示]に[反映]されない。

 

 自身のHPが10%以下である時にしか使えない【アサシン】の必殺技【キルエリア】。気づかぬうちに無動作で最速の一撃を叩き込む恐るべきスキルだ。

 

 他にも【アサシン】にはHPが10%以下の時にしか使えない強力なスキルが複数存在する。間違いない、今のAWPさんはそれらのスキルを活かす『背水の陣』(ビルド)だ。




マクロその17 『絶対防壁』
【マクロ】は絶対に妨害されない、その性質を利用して物質干渉力の影響を受けずにその場に留まり続ける【マクロ】です。
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