卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

435 / 542
第424話 事前準備

 ボクは【キネシス】で【〈パウダーホーム〉】を操作して、無数の弾丸を受け止めようとする。

 

 しかし弾丸は針で糸を縫うような動きで【〈パウダーホーム〉】を避けていく。弾がボクの身体を掠め、HPが大きく削られる。

 

 ベッドの回復効果で多少は抑えきれるが、それでも全く足りない。

 

「【アームズスイッチ】――【アトラクト】なのです!」

 

 ボクのHPが危ないと判断したメグさんは装備を変更しつつ【アトラクト】を発動させ、全ての弾丸を自身へ集約させる。フォローしに来たのに逆にフォローさせてしまうなんて、てくにかるじゃありませんでしたね。ごめんなさい!

 

「私は【黙想】があるからこの程度は無問題なのです!それよりも!」

 

【黙想】

[パッシブ][スイッチ][条件:素手]

効果:[自身]の[HP]を[継続的]かつ[大幅]に[回復]させる。

 

「それよりも、攻めるべきですね!」

 

 ボクは«テレポート»を発動させて寿美礼さんの頭上に転移する。

 

「読んでたわよ!」

 

 即座に寿美礼さんが銃口を向けて引き金を引くと、想像を絶する大きさの弾丸が射出される。これがなんでNPCの〈特権行為〉なのかはわからないけれど――。

 

「二度目はありませんよ!【フルバーニング】!」

 

「そっちこそ!範囲魔法で打ち消せると思ったら大間違いよ!」 

 

 巨大な弾丸を範囲火力で一撃のもとに消し飛ばす――投射攻撃には有効な選択だが、今回に限っては別だった。その弾は破壊されることなく、そのままボクを目掛けて突き進む。

 

「『不壊』――いや、炎属性耐性の弾丸――ッ!」

 

 ただ『不壊』なだけであれば、破壊されずとも物質干渉力の影響を受けて爆風に弾き飛ばされるはずだ。

 

 つまりこれはわざわざボクに対して用意したメタアイテム――。

 

「さぁ、潰れなさい!」

 

 «テレポート»は間に合わなかった。弾丸が命中し、HPを『1』まで削り取られたまま、物質干渉力の影響で大きく弾き飛ばされる。

 

 即座に【ファストリカバー】で回復しながら、ボクは空中で体勢を整えた。

 

 ちらりとメグさんの方を見ると、無事に彼女は全ての攻撃を受け止めきったようだ。【黙想】にベッドの回復を重ね、満タンまで回復し切っている。

 

「«ソーラーレイ»なのですっ!」

 

 メグさんが周囲の光を集めて多大なエネルギーの光線を撃ち放つ。光による攻撃を【〈パウダーホーム〉】で受け切るのは至難の技である筈だが――。

 

「その程度かしら?」

 

 平然と光子を捌き切り、お返しとばかりに今度はボクへ反射させる。

 

「《ガゼルフット》!」

 

 〈魂の言葉(ソウルワード)〉の力で回避の意思を高めて横移動で光を避けるが、その直後に弾丸がボクに向けて放たれる。

 

 炎属性耐性の弾丸であれば風属性で――そう思考を巡らせようとした矢先、〈ロールプレイング〉が寿美礼さんの思考を予測する。

 

 あれは――風属性耐性の弾丸だ。

 

「【ソウルフレア】!」

 

 ボクは杖を大きく振るって迫り来る弾丸に当てながら、炎属性の魔法を発動させる。白銀の炎が激しく燃え盛り、弾は一瞬で燃え尽きた。

 

 透かさずボクは【ゲールウィンド】を発動させる。

 

「【ゲールウィンド】?その程度の攻撃が――ッ!?」

 

 そう、ボクが発動させたのはただの【ゲールウィンド】ではない。【《イグニッション》】で出力を上乗せした大火力の魔法だ。

 

 連続攻撃という魔法の性質上、当たれば【パインサラダ】すら貫いて即死は免れない。だからこそ寿美礼さんは【〈パウダーホーム〉】を使って攻撃を防ごうとするが――。

 

「くっ……!?」

 

 先の小競り合いでは演算能力で上回られたが、今のボクは【《イグニッション》】の効果で思考を大きく加速させている。

 

「さぁ、お返しですよ!」

 

 針で糸を縫うような制御で【〈パウダーホーム〉】を迂回し、寿美礼さんに【ゲールウィンド】が命中する。

 

 その一撃で決着はついた。瞬く間にHPゲージが下降していき、寿美礼さんは全損する。案の定【パインサラダ】を食していたようだが、風の連撃はそんな保険すらも容易く貫いて、ボク達を勝利に導いた。

 

「よし、勝利です!もぐもぐ」

 

 間髪を入れずに【パインサラダ】を取り出して頬張るボク。【サバイバル】は常在戦場。漁夫の利を狙いに来るプレイヤーの可能性も考えて補給は欠かせない。

 

 すぐに«テレポート»で陣地に戻り、【〈パウダーホーム〉】を張ってからようやく一息つくことができた。

 

「おつかれさまなのです!私は今回は活躍できなかったのです……」

 

「いやいや。メグさんが【アトラクト】で攻撃を吸ってくれなかったら全損してましたよ。――それにしても、寿美礼さんが使っていたNPCの〈特権行為〉とはなんだったのでしょうね」

 

 そもそも寿美礼さんはNPCではないのだが、かつてはNPCとして働いていた。どうせ【フォッダー】の事だから、解雇されたのに権限が残ったままだった……と考えれば、そこに疑問を挟む余地はない。

 

「あの巨大な弾が〈特権行為〉?いや、それよりも――この地面に設置されている銃が特権なのかもです」

 

「銃、ですか」

 

「普通に考えれば、これだけの銃が埋め込まれているのは不自然なのです。そこに何か特権があったのだとしたら――」

 

「なるほど――試合の開始前に埋め込んでおく。それが〈特権行為〉の正体ですか!」

 

----

>言い逃れできないレベルの不正で草

 

>ヤバすぎて草

 

>これもうどこぞの女神に匹敵するレベルだろ

 

>確かにそこらの下見を遥かに超える準備だな、さすがだわ

----

 

「もしかすると巨大な弾丸の方にもからくりがあるのかもしれませんが、あちらにどんな特権が関わっているのかはわかりませんからね」

 

「なんにせよ〈特権行為〉にはもう懲りたのです。修正よろしくです!」




テクニックその133『特権行為』
運営側のNPCとしての特権を活用するテクニックです。実際にどんな特権があるのか全容は明らかではないのですが、大会用のマップに事前の準備としてアイテムを設置しておく程度の事はできるようです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。