卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第430話 残心

 炎上の妨害(デバフ)によりHPを減らし続ける帝王龍さん。こうなるとエリア外ペナルティの影響も大きい。もちろん炎上ダメージだけで全損にまでは至らないが、それでもこちらが優位な状況だ。

 

 短期決戦を狙い、矢をつがえながらスキルを発動しようとする帝王龍さんだが――それを中断して背後に向けて弓を横殴りに叩き込む。

 

 直後にメグさんが転移して斧を振り下ろした。弓による打撃はあっけなく押し切られ、帝王龍さんは大きく弾き飛ばされる。

 

「読みは鋭いけれど、解が適切ではないのです!」

 

 【マクロ】の使い手であるメグさんに物質干渉力で受け切ろうなんて無理な話だ。

 

 ボクの方に向かって弾き飛ばされてきた帝王龍さんは、空中で体勢を制御しながらもボクに向かって矢を放つ。

 

「【ラピッドショット】【ダブルショット】!」

 

 どちらも単なる投射攻撃であり、回避は可能――だからこそそれを命中させるための手筋を踏んでくるのが目に見えている。

 

 ボクは奥歯に仕込んでいた防御力アップの【タブレット】を噛み砕き、【ファストリカバー】でHPを回復させる。

 

「【『クロノス』】!」

 

 そして世界が停止した。にもかかわらず帝王龍さんの放った矢は空間を駆け抜けてボクへと迫りくる。

 

「【アローレイン】ッ!」

 

 それに加えて三の矢がボクの頭上から降り注ぐ。この攻撃は演出的には避けられそうにも見えるが、実際にはエリア型のスキルだから回避不能だ。HPを大きく削り飛ばされるが、防御力の支援(バフ)に加え、【ライフバッファー】で最大HPが増加していたおかげで余裕を持って凌ぎ切る。

 

 そして先行して放たれた二つの矢も――()()()()()()()()()()

 

 そして時間は再び動き出す。

 

「【『クロノス』】の影響下で避けるか?おい!」

 

「避けたわけじゃないですよ。当たらなかっただけです」

 

 【『クロノス』】は全てのキャラクターの動きを停止させるが、それでもなお止められないモノがある。

 

 それは思考だ。スキルは発動できず、魔力すら動かすことは叶わないが、強い意志の下に心で叫ぶ〈魂の言葉(ソウルワード)〉は、止まった世界にすら影響を及ぼす。

 

 実際に発動した〈魂の言葉(ソウルワード)〉は《ガゼルフット》だ。意識の誘導により残像を生じさせ、自身が避けるのではなく相手が狙い定める攻撃位置をズラした。ただそれだけだ。

 

 仕切り直しとばかりに帝王龍さんは«テレポート»を発動して上空に逃れるが――。

 

「【メテオ】!」

 

 星空からの落とし物は、対象の位置が高いほど発生から命中までが早い。帝王龍さんのすぐ真上に隕石が現れ、即座に命中する。

 

 【ガードジャスト】では受け切れなかったようだ。直後に【ディヴィジョン】で攻撃を受けたという事実を無効にしたようだが、貴重な防御札を切らせることができた。

 

【ディヴィジョン】

[アクティブ][支援]

詠唱時間:0s 再詠唱時間:480s

効果:[攻撃]を[受けた][直後]に[発動]できる。[攻撃]を[無効]にする。

 

「【オールレンジド】――【アブソリュート】!」

 

 狙い澄まして撃ち込まれたその攻撃は、ボクの【モーションアシスト】を停止させる。この効果は矢が消滅するまで続く。おそらくそれ自体を命中させるためではなく、次の攻撃への布石――。

 

「«テレポート»【アトラクト】なのです!」

 

 しかしメグさんがその攻撃のターゲットを吸い寄せたことによって、ボクは再び行動可能となった。悠長にも次のスキルの詠唱を始める帝王龍さんの正面に転移して、

 

「【ソウルフレア】!」

 

 最大級の一撃を叩き込む! その一撃は帝王龍さんのHPを『1』にまで削り取り、残されたわずかなHPは【不死鳥の加護】の炎上妨害(デバフ)が燃やし尽くした。

 

「よし、これで勝利――」

 

 そう宣言しようとしたその瞬間、ボクの身体を矢が貫いた。

 

「残心は……忘れちゃダメ……」

 

「ぼくもいるよー」

 

 振り向くと、そこにはぷにりんさんとابتسامةさんがいた。この場は【サバイバル】。なんでもありの試合会場だ。確かに勝利の後にも警戒を怠るべきではありませんでしたね。

 

 【ライフバッファー】の効果もあってか【パインサラダ】が発動するほどではないが、逆に言えば状況によっては即死の可能性もあった。ボクは【オートユーザー】で【エリクサー】を消費してHPを回復させながら、二人に対して杖を向ける。それと同時にボクの横へメグさんがやってきた。

 

「メグさん、【ライフバッファー】は生命線のようです。効果が切れる前にもう一度支援(バフ)をお願いします」

 

 当然ながらそんな事前準備を見逃してくれる状況ではない。ぷにりんさんは即座に【ピアースショット】をメグさんに向けて撃ち放つ。ابتسامةさんはなにやら長尺の詠唱を始めたようだ。

 

 ぷにりんさんの【ピアースショット】は危険だ。そう判断したボクは矢の前に立ち塞がるように躍り出て、ほんの一瞬だけ〈魔導〉を発動させる。

 

「〚エデン〛」

 

 あらゆる物理的干渉を防ぐ最強の結界は貫通の性質を持つ【ピアースショット】すら遮断する。

 

 そしてボクは支援(バフ)をメグさんに掛ける。

 

「〈派手に弾けろ〉【《イグニッション》】!」

 

 それとほぼ同時にメグさんの【ライフバッファー】がボクに付与された。【イグニッション】によって効果が大きく上乗せされ、莫大なHPを獲得する。

 

「さぁ、準備は万端ですよ。派手に行きましょう!」

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