卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第432話 第二形態

「【車輪】【開眼】【秘孔】【一掃】【圧倒】――」

 

 ابتسامةさんは次々と【モンク】のスキルを発動させながら、身体の一部を歪ませて拳を象る。そして、

 

「――【正拳突き】!」

 

 勢いよく身体から切り離し、射出する。単なる投射攻撃なら対処法はいくらでもあると言いたいところだが、今回のロケットパンチは一味違う。

 

【圧倒】

[アクティブ][自身][支援][条件:素手]

消費MP:2 詠唱時間:0s 再詠唱時間:30s

効果:[キャラクター]が次に使う[攻撃]は[相殺]されない。

 

 スキルの効果により【〈パウダーホーム〉】などの絡め手でも容易には減衰させられない。

 

 それなら逃げ回ればいいのかというと、それも困難だ。【正拳突き】の発動状態はいつまで待っても中断されない。なぜなら()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 剣なら振り下ろせば一撃として見做されて、命中の有無に関わらずスキルは発動したと判定される。【正拳突き】なら拳の突き出しが止まればそれで終わり。

 

 そしてロケットパンチはその気になれば無限に突き出し続けることができる。

 

 ああああさんがロケットパンチを使ってきた時から考察していたが、やはりこの挙動は【モンク】の為せる王道戦術になりましたか!

 

「【《イグニッション》】!」

 

 ボクは自らに支援(バフ)を掛けながら、〈トンネル避け〉でその拳を躱し切る。身体をすり抜けた拳は大きく旋回し、再びボクへと戻ってきた。

 

 ああああさんの時は当たり判定そのものを飛ばすことで反撃を受けやすくなるという欠点があったが、ابتسامةさんは絶対的な『障壁』によってその欠点をカバーしている。

 

 一回ではまだ足りない。【タクティクスフラッグ】の効果で再詠唱時間(リキャストタイム)を回復させ、再び【《イグニッション》】を発動する。

 

 そして後方から迫りくるロケットパンチに向けて、振り返りながらも杖を叩きつけた。

 

「【ソウルフレア】!」

 

 瞬間的に白銀の炎が燃え上がり、それと同時に『障壁』がガラスのように砕け散る演出が走る。それでも全損には至らなかったようで、拳は勢いを緩めずボクに衝突するが――。

 

「効きませんよ!」

 

 その拳がボクのHPを削ることはなかった。

 

【ファイアエンチャント】

[アクティブ][装備][炎属性][支援][魔法]

消費MP:2 詠唱時間:5s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m

効果:[装備]に[炎属性]を[追加]する。

 

 本来なら【モンク】のスキルに【ファイアエンチャント】で炎属性を付与することはできない。武器を装備していないからだ。ابتسامةさんも当然ながら外見からは武器を装備しているようには見受けられない。

 

 しかし【転生】アバターのように人間の武器を装備できない姿形のプレイヤーは、システム上の装備判定を行うことで装備のグラフィックを反映させずにステータスを増加させたり、スキルを得たりできる。

 

 そして【モンク】のスキルは発動さえしてしまえば後から武器を装備することが可能だ。見た目に変化はないが、間違いなく装備を切り替えていると踏んでいた。どうやら読み通りだったみたいだ。

 

 障壁を打ち破ったことで完全に勝利を確信していると、背後でابتسامةさんがスキルを発動させる。

 

「〈呪縛の雨に狂え〉【サミダレ】ー!」

 

「えっ、ちょっと待って??それって【魔王】のスキルですよね?いつの間に【コントラクトカード】したんですか!?」

 

 最大HPを削り取る黒い針が大量に撃ち放たれる。所詮は投射攻撃だと思い、【〈パウダーホーム〉】を展開したが、黒い針は微細な家々の壁をすり抜け、真っ直ぐ宙を駆け抜ける。これは〈トンネル避け〉ではない。スキル自体に壁を透過する特性があるのか!

 

「【サミダレ】は【魔王】がしょーへきを破られてからおぼえるスキルなんだよー。だからつかえるの」

 

「ま、まさか……『障壁』のスキルに、『打ち破られたら第二形態になる』効果が付随してるって事ですかー!?」

 

 なんとか〈トンネル避け〉で針を避けようとするが、全ては躱しきれない。最大HPを削るスキルなだけあって一つ一つの威力は大したことがないのだが、このままではジリ貧だ。

 

「【ファストスペル】【スロウアイ】【トリプル】!」

 

【ファストスペル】

[アクティブ][自身][支援][奥義][魔法]

消費MP:0 詠唱時間:0s 再詠唱時間:6h

効果:[自身]が次に[発動]させる[詠唱時間][30s]以下の[魔法]の[詠唱時間]を[0s]にする。

 

【スロウアイ】

[アクティブ][キャラクター][視界][支援][妨害][魔法]

消費MP:12 詠唱時間:20s 再詠唱時間:30s 効果時間:2m

効果:[効果時間中][視界]の[キャラクター]の[詠唱時間]を[増加]させる。

 

「【魔王】でもやらなかった通常の職業(クラス)スキルとのコンボはやめてくださーい!」

 

 ただでさえ厄介な詠唱時間(キャストタイム)増加のスキルが三重に重なり、もはやどうすることもできなくなる。

 

 たまらず«テレポート»でメグさんの下に転移すると、

 

「ちょっと!合流して私まで【スロウアイ】の視界になんて入ったら、何にもできなくなっちゃうのです!」

 

「【マクロ】は詠唱時間(キャストタイム)が0じゃないですかー!なんとかしてください!」

 

 とりあえずなけなしの風属性スキルを適当に発動させて【タクティクスフラッグ】を獲得しておく。

 

 メグさんはぷにりんさんの矢を«絶対防壁»で受け止めながら、«五月雨飛ばし»で衝撃波を飛ばしていく。だが、所々で挟まれる『命令』に動きを鈍らされ、全てを防ぐには足りていないようだ。

 

「【ヒーリング】」

 

 一方でぷにりんさんは回復魔法を持っており、«五月雨飛ばし»で受けたダメージを悠々と回復していく。

 

「【ファストリカバー】!」

 

 ひとまずメグさんを回復させつつ、ボクは思案する。スキルの詠唱を引き伸ばされ、徐々に削られゆくこの状況でできることは――。




テクニックその134『半永久継続動作』
能動(アクティブ)スキルは一般的にその動作を終えたら発動完了と見做されて効果を失います。剣なら振り下ろした時ですね。逆に言えばその動作を半永久的に継続できるなら、その能動(アクティブ)スキルは延々と発動し続けます。ロケットパンチで拳を前に突き出し続ければ、【正拳突き】は永久に終わらないのです。
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