卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
それからしばらくして、ペナルティのダメージは凄まじい勢いで増加していった。今では1時間ごとにダメージ量が増えていくのをはっきり体感できる。
「指数関数的に増加しているようですね。【ファストリカバー】による回復だけではきつくなってきました」
「【アルティマヒーリング】〈癒やしの神に希う、森羅万象の理を導き、至高の祝福をここに示さん〉」
メグさんはすでに【ビショップ】に
どうやらペナルティのダメージには乱数も絡んでいるらしい。安全マージンを取らないと、次の瞬間には全損しかねない。次の刻みで急激に跳ね上がれば即死――死神のルーレットを回し続けている心地がする。
定数ダメージと割合ダメージが複合しているらしく、【ライフバッファー】で最大HPを増やすほどダメージ量も増えてしまう。かといって増やさなければ、定数ダメージだけで致命傷に追い込まれる。ステータス画面のライフバーは月蝕を待つ夜空のように、じわじわと漆黒に侵食されていく。
「【イグニッション】!」
「【ライフバッファー】なのです!」
ボクの【イグニッション】でメグさんを強化し、通常よりも強力な【ライフバッファー】をボクに付与してもらう。プレイヤーの撃破報酬である【エリクサー】はHPを100%まで回復させる。だからこそ、HPは積めるだけ積んでおくのが得策だ。
「まだペナルティエリアになっていない場所は――もうないみたいですね」
SNSで情報を集めてみたところ、エリアの縮小は1か月に及ぶ戦いの果てに、ついに終わりを迎えた。安全地帯は存在しないらしい。
他のプレイヤーも回復アイテムやベッドだけではペナルティに耐えきれなくなっているようで、参加者数がみるみる落ちていく。
「この状況で他のプレイヤーに攻め込まれたら……いや、今やそれどころではなさそうですね」
【黙想】
[パッシブ][スイッチ][条件:素手]
効果:[自身]の[HP]を[継続的]かつ[大幅]に[回復]させる。
「【黙想】がある分、私はまだ余裕を保てるのです。【エリクサー】は卍さんが使ってください、なのです」
「ボクも【黙想】を使いたいところですが、【ビショップ】と【アイテムマスター】が必須である以上、【モンク】のスキルは使えませんからね……。〈大いなる癒やしの導きを授からんことを〉【オールプレイヤー】!」
【オールプレイヤー】
[アクティブ][キャラクター][パーティ][聖属性][支援][魔法]
消費MP:12 詠唱時間:20s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m
効果:[キャラクター]に[ヒーリング]を[追加]する。この[効果]で[追加]された[スキル]は[自身]の[魔法攻撃力]で[出力]を[計算]する。
発動させたのは【ビショップ】の
こうした
「【ヒーリング】!【フルバーニング】!」
しかし回復に専念しても、やがてペナルティのダメージが回復量を上回る。スキルによる回復だけではまったく間に合わない! これまでに入手した【エリクサー】を湯水のようにつぎ込み、メグさんと二人で必死に耐え忍ぶ。
ボクたちが必死にHPを回復させている間も参加者数は恐るべき勢いで減少していく。カウントが100に届く瞬間まで耐え抜けば勝利は転がり込む。
【ファストリカバー】と【ヒーリング】を回しつつ、炎属性のELMを利用してわずかな隙を拾っては【フルバーニング】でHPを焼き直す。【帝神の加護】で回復スキルの消費MPを引き上げ、回復量を増やしてひたすらに連発していく。
おそらくボクたちのように参加者を積極的に倒して回らなかったプレイヤーはすでに脱落しているだろう。HPの回復だけでなく、消費MPをカスタマイズしたスキルを行使するにも【エリクサー】は必須に近い。
ここまでがユーキさんの設計通りだったのかどうかはわからない。1か月もかかる時点で想定内だとしても、無能運営の誹りは免れないだろう。けれど積極的に戦いに参加していたプレイヤーが報われるのは悪くない。
そんな思考を巡らせながらも、ひたすらHPの回復だけを続けていき――
【一回戦通過:卍荒罹崇卍】