卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第443話 ドロップ率

 結局【ヒュマデサタン】の【カード】を入手することはできず、本日の配信は切り上げることにした。

 

 【ディスポサル城下町】の噴水前に戻ってきたところで、明日香さんが口を開く。

 

「ごめんなさい、おねえさま。本当は私の【ヒュマデサタン】の【カード】をお譲りしたい気持ちなのですが……」

 

「そういう施しは受けない(たち)だと知ってるってことですよね。その通りです。最低でも売買という形でなければ受け取るつもりはありませんよ」

 

 もちろん、ボクのエゴに沿った形だけの対価では意味がない。明日香さんが真の意味で『この取引なら対等だ』と感じられるものでなければならない。

 

「その上で明日香さんが交換条件として欲しいものとかはありますか?」

 

「私は今までおねえさまに本当にお世話になりました。そのお礼としてはレア【カード】くらいではまだ足りないと思っているのですけど……」

 

 明日香さんが本気でそう思っていることはわかる。彼女の意思だけを踏まえるなら【カード】を無償で提供することが『対等な取引』たり得るのだろう。だからこそかえって難しい。

 

「だとしても……やっぱり【カード】は受け取れないですね……。ボクも今回みたいな配信に付き合ってもらえただけでお礼は十分に受け取ってる気がしますし。それでまだ足りないというなら、今後も配信に付き合ってもらうということでいいですか?」

 

「はい、わかりました。生涯をお供させていただきますわ♥」

 

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>重くて草

 

>かわいい

 

>言うほど明日香さんって卍さんのお世話になってたっけ?

 

>異形関連でなんかあったらしいよ

 

>ここにキマシタワーを建てよう

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 明日香さんがにじり寄りながらボクにそう宣言する。ボクはそんな明日香さんの頭に手を乗せてなでなでしてあげた。

 

「あっ♥」

 

 耳まで赤く染めた明日香さんが、小さく身じろぎする。

 

「すみません。なんだか撫でてみたくなってしまって」

 

「いえ、構いませんわ。もっと撫でてください♥」

 

 前もそうだったけど、やたら官能的な声をあげられると撫でづらいのですけど……という言外の意思が通じたのか、その後は嬌声をあげることもなく、撫でさせてくれた。

 

 そんなしばしのひとときを楽しんでから、ボクたちはログアウトした。明日の予定も【ヒュマデサタン】狩りだ。ドロップ率も低く、かなりの苦行だけど、明日香さんと一緒なら乗り切れる気がする。

 

「よーし、明日も一日頑張りますよー!」

 

 

 

「【カード】がドロップしない……」

 

「ぜんぜんですね♥」

 

 朝から【ヒュマデサタン】狩りを始めてから4時間が経過したが、相変わらずドロップしない。

 

「さすがにそろそろ出てもいい頃だと思うのですけど……♥」

 

 このゲームは古のオンラインゲームのようにドロップ率が低いアイテムもあるが、さすがにここまでではないはずだ。単純に運が悪い。そう結論づけるほかなく、理屈は何も残らなかった。

 

「逆に20時間くらい粘れば1枚出る計算なら、【ヒュマデサタン】を抱えているプレイヤーの数は少なくないでしょうね。手放すプレイヤーは少ないでしょうが、【フォールダウン】というゲームにおいて大会に出場するようなプレイヤーは基本的に持っているという認識でいたほうがいいかもしれません」

 

 となればここで狩りを打ち切るなんて選択はできない。出ないなら出るまで倒し続けるだけだ!

 

 

 

そして二日後。

 

「【カード】がドロップしない……」

 

「我が言うのもなんだが、一度仕切り直したほうがいいのではないか? お祓いにでも行ってきたらどうだ?」

 

 ついに討伐対象である【ヒュマデサタン】にまで心配されてしまった……。

 

「AI側の配慮でドロップ率とか上げてくださいよー!」

 

「残念ながらそういったシステムには干渉できないのでな」

 

「……もう一度お伝えしますね。おねえさまが良ければ【カード】をお譲りしても……」

 

「正直に言って、受け取って終わりにしたい気持ちでいっぱいです……。そろそろ【フォールダウン】の大会も近くなってきましたし」

 

 まだ一回しか対戦してないカードゲームの大会に出られるわけがない。必須【カード】を集めるのも大事だが、対戦の経験も積まなければならない。とはいえ、それでも【カード】を受け取るわけにはいかない。

 

 【ヒュマデサタン】や【勇者アリンド】はコスト8の【カード】だ。つまり最速で場に出すなら8フェイズもの間は何もせずにマナを貯める必要がある。

 

 つまり、この8フェイズまでの間にプレイヤーのライフ30点を削り切れる構築が存在すれば――理論上、強力な【カード】によってフィールドを蹂躙する戦術はまるで意味をなさないことになる。

 

 まあ普通に考えれば、そういった戦術も考慮された上で【ヒュマデサタン】を出せるまでマナを貯め続ける戦術が最適解になっているのでしょうがね。

 

「とりあえず【ヒュマデサタン】狩りは一区切りにしましょうか。お互いに【ヒュマデサタン】を最速で召喚したとしても、実際にはその後の戦術や【カード】の出し方で勝敗が変わるわけですからね」

 

「その通りですわね♥ それに巷で流行中の【ヒュマデサタン】に頼るスタイル以外にも優秀な戦術があるかもしれません」

 

「よーし、それならまずは他のプレイヤーの対戦を見学に行きましょう!」

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