卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第447話 リジェクション

「というわけで今回は物質干渉力のプロ、『戦場のフードファイター』ことめりぃさんに来ていただきました!」

 

「今は意外とみんなも戦闘中にお食事してるけどねー。」

 

 『戦場のフードファイター』という二つ名について思うところがあるようだが、他のプレイヤーはパンなどを掴んで食べる程度なのが精々で、両手で箸と丼を持ってラーメンを食べるような人はかなりの希少種だと思う。

 

「それにしても……少し見ないうちにずいぶんと装備が変わりましたね」

 

 今までのめりぃさんは典型的な【ナイト】と言わんばかりの全身鎧を身に着けていて、おそらくその重みこそが物質干渉力の根源のはずだった。しかし今のめりぃさんは純白のシャツにホットパンツという物質干渉力からはほど遠いスタイルだ。もしかして(ビルド)を転向したのだろうか?

 

「あ、この装備?これねー、こう見えて凄い装備なんだよー。等級も『LEGEND』だしー」

 

 【願いの石】を素材にしなければ作成できない、現状の【フォッダー】における最高級の等級だ。付与されるスキル効果がランダムなこともあって等級の割にハズレ率は高いが、うまくハマれば非常に優秀な装備となる。

 

「新しい(ビルド)ということですか?」

 

「いやー、一応は物質干渉力に特化してるんだけど、やっぱりそうは見えないよねー?」

 

 まったく見えませんね。なんならシャツが風にひらひらとはためいているようにすら見える。

 

 しかし試しにめりぃさんの肩に手を添えて押してみると、まったく動かない。力を入れて両手で押してみてもびくともしない。

 

「もともとボクの力ではめりぃさんを動かせませんでしたから、違いはわかりませんが……確かに物質干渉力はかなり高そうですね。普通は多少の差がある程度なら、押し倒すまではいかなくても多少の揺らぎくらいは発生しますし」

 

「卍さん、あたしを押し倒そうとしてたのー?やーん、卍さんのえっちー」

 

「はいはい、それよりも問題は目の前の【祠】です。おそらく【黄金の才(ユニークスキル)】でなければ突破できない難易度に設定されているはずですが……」

 

「わからないけど大丈夫ー!だってこっちにも【黄金の才(ユニークスキル)】の力はあるからねー」

 

 そう言いながらめりぃさんは【ストレージ】からカップラーメンを取り出した。真紅のロゴが描かれたカップから白い湯気が勢いよく立ち上る。できたてほやほやで、今すぐにでも食べられそうな状態だ。蓋をめくると、鶏ガラ出汁と焦がしネギの香りがふわりと立つ。

 

「その食事アイテムは……」

 

「猫姫ちゃんの特製料理だよー!」

 

「……確かに【黄金の才(ユニークスキル)】ですね。【『ディオニューソス』】が受け付ける料理の幅はかなり広いようで」

 

「ちゃんとネギがトッピングしてあるから立派な料理なんだってー。元のカップラーメンは【OA-YS】で売ってた健康食品らしいよー」

 

 そう言いながらめりぃさんは箸を片手にずるずると麺を啜る。見ていると、麺を啜る速度がかなり速い。戦闘中に食事を取るために磨かれた早食いの技術なのか。

 

「ごちそうさまでしたー!これで物質干渉力が2倍になったよー。早速扉を押してみよー!」

 

 そしてめりぃさんはゆっくりと扉に手を掛ける。「えいやー!」と声を上げて押したが、扉はうんともすんとも言わなかった。

 

「やっぱりダメかー。そうだよねー。【黄金の才(ユニークスキル)】が対象だもんねー」

 

「残念でしたね……。めりぃさんでダメだとすると、他に手は無いのでしょうか」

 

 と思考を巡らせていると、背後から声を掛けられた。

 

「カカッとどきなお前らの番はもう終わった今度は俺の番だ」

 

 白銀の髪が特徴的な男性プレイヤーがそこにいた。その髪と同じ白銀の鎧を身に纏い、右手には禍々しい色をした剣が握られている。間違いなく職業(クラス)は【ナイト】だ。

 

「もうつきましたか!はやい!きた!盾きた!メイン盾きた!」

 

「卍さん、どうしたのー?お知り合いー?」

 

「いえ、知り合いではないかもしれませんが、どうやらボクが知っている人物のロールプレイヤーのようなので」

 

「稀によくある誤解だがこれはロールプレイではないどちかというと大反対」

 

 VRMMOをプレイしていると彼と同じような独特の言語センスを持つプレイヤーにたびたび遭遇する。いつも同じ人かと思えば初対面だったり、逆に以前に話したことのある人だったりする。

 

 古のゲームプレイヤーとしてある意味大活躍した()()()()に憧れるゲーマーは少なくない。キリトさんよりは希少だが、逆に言えばキリトさんを比較対象にできるレベルの存在だ。

 

「ちなみにボクのこと知ってます?卍荒罹崇卍って言うんですけど」

 

「誰それ?外人?歌?」

 

「やっぱりこんなもんですよねー。言うと思ってました」

 

 結局ボクの知り合いなのかは不明なままだが、どうやら【祠】に挑戦しに来たようだ。

 

 彼の(ビルド)は〈ロールプレイング〉をしなくてもわかる。【混沌流】の使い手だ。

 

【混沌流】

[パッシブ][流派][条件:他流派/未取得]

効果:[光属性][スキル][発動時]に[以下]の[効果]から[1つ][適用]する。

1.[自身]の[妨害]を[1つ][回復]させる。

2.次に[発動]する[条件:暗黒の力/オン][スキル]の[出力]を[増加]させる。

3.[ナイトフラッグ]を[加算]する。

[闇属性][スキル][発動時]に[以下]の[効果]から[1つ][適用]する。

1.[自身]の[状態異常]を[1つ][キャラクター]に[共有]する。

2.次に[発動]する[条件:神聖の力/オン][スキル]の[出力]を[増加]させる。

3.[ナイトフラッグ]を[加算]する。

 

 【ナイト】には聖属性と闇属性を扱う(ビルド)が存在するが、その両方を扱うのが【混沌流】だ。

 

 その中でも聖属性には多大な物質干渉力を伴う攻撃スキルが存在する。

 

 白銀の【ナイト】――Burontさんはカカッと駆け足で扉に近寄る。

 

「おそらく範囲スキルを使うはずです。めりぃさんは離れてください」

 

「うんーりょーかいー」

 

 めりぃさんが離れるのを見計らって、Burontさんは剣を天に掲げ、スキルを発動させた。

 

「【リジェクショん】!」

 

 その瞬間、Burontさんの周囲に多大な衝撃波が発生する。

 

「わわーっ!?」

 

 少し距離が近すぎたのだろう。めりぃさんがまるで弾かれたかのように距離を取る。その結果からもわかる通り、Burontさんの物質干渉力はめりぃさんのそれを完全に上回っている。

 

【リジェクション】

[アクティブ][範囲][自身][エリア][攻撃][物理][条件:神聖の力/オン]

消費MP:6 詠唱時間:2.5s 再詠唱時間:1m

効果:[自身]の[物質干渉力]を[増加]させる。[自身]を[起点]に[エリア]を[形成]し、[範囲]の[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。

 

 【リジェクション】による物質干渉力の増加は一説によると3.5倍だと言われている。逆に単発の能動(アクティブ)スキルでも3.5倍なのに継続的に2倍にできるカップラーメンの性能のほうに疑問が湧くが、何はともあれ途轍もない破壊力だった。

 

 扉がそれでも開かなかったという事実を除けば。

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