卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

46 / 541
第46話 ロケットパンチ

「勝つことを強いられてる……ですか。賞金が桁外れに大きいですしね。それともスポンサーである課金者への妨害を目的としたものでしょうか?」

 

「目的まではわからんがな。なんにせよ強力なバックアップが背後に存在していることに違いはない。このゲームの仕様を洗い出す専門部隊がいるかもしれないな。――まあ、俺の勘に過ぎないのだが」

 

 賞金が1000億円ともなれば、企業が参戦することは当然の帰結ですしね。ゆうたさんはただの勘で言ったのかもしれませんが、このゲームにそういった勢力が存在するのは間違いないでしょう。

 

 あくまで()ではあるけれど、この話はそこらの()とは重みが違います。ゆうたさんの場合は、実際にそういった社会で生きてきた上で得た経験則。妄想癖や陰謀論の類ではありません。

 

「これはボクが出張らなくても無課金が勝てるのでは!? ……と言おうと思いましたが、そういうサポートがある会社なら普通に1億円を払ってもおかしくないですね」

 

----

>成金エンジョイ課金厨を超えるサポート付きガチ課金勢まで出張ってくるのか……(絶望)

 

>企業のプロまで参戦したら本格的に勝ち目ないぞ

 

>一般人を放置して大会は神々の戦いになってそう

 

>戦いが速すぎて常人には目で捉えられない系大会

 

>興行性最悪すぎる……

 

>でもさ? 一般人がそんな戦いで勝てたら凄いよな? 努力しようぜ!

 

>仕事でやってる奴のほうが努力する定期

----

 

「もうコメント欄で葬式ムードですが、まだ諦めませんよ。まずはこの大会で勝利を掴んで証明しますね」

 

「企業は研究した仕様を秘匿している。しかし荒罹崇が研究したバグは配信によって相手も知ってるわけだからな。勝ちたいなら配信をやめるしかないな?」

 

「いやいや、配信はボクのアイデンティティですよ。それに配信が有利に働く場面もあるんですからね??」

 

「わたくし、企業のサポートなんてないのですけど。もしかしてボロ雑巾にされちゃうんですの?」

 

 と、そこで今まで黙っていた聖天使猫姫さんが口を開く。まあ、所詮そこらの個人プレイヤーは課金しててもカモですね。ボクたち有象無象(フォッダー)とどっこいですよ。

 

「今からサポートとか雇ったりできないんですか? お金自体はあるんでしょ?」

 

「ママにおねだりして課金しただけだから、そんなお金は動かせませんの……」

 

 かわいそう。

 

----

>一般庶民がゲーム買ってもらうくらいの勢いで1億円課金してもらうな

 

>経済感覚が化物すぎる

 

>かわいい

----

 

 しょんぼりと小さくなっていた聖天使猫姫さんだったが、名案をひらめいたとばかりに手のひらを軽く打ち鳴らす。

 

「そうだ! あなたがたがわたくしの忠実なるサポートになればいいんですわ!」

 

「は? (威圧)」

 

「わたくしが忠実なるサポートになりますわ」

 

 怒りの感情表現(エモート)を出しながら威圧をかけると、彼女は一瞬にして屈服する。こうしてボクたちは聖天使猫姫さんを仲間に迎えた。

 

 《SANチェック》並みとはいかないけれど、ボクも〈感受誘導〉が扱えるようになってきたんでしょうかね?

 

「さて、大会が再開される前に対策会議といきますわよ!」

 

 なぜか聖天使猫姫さん主導で開催されたこの会議。けれど、傍から見た限りでは、なんか銃っぽいなー? 程度の情報しかない。猫姫さんに情報を吐いてもらわないことには始まりません。

 

「あの攻撃って、結局どんな攻撃だったんですか?」

 

「わかりませんの。気づいたら戦闘不能になってましたのよ」

 

「対策しようがないじゃないですか」

 

 残念ながら、なんの情報も引き出せませんでした。

 

「高威力の遠距離攻撃に対する対策か……。いくつか考えられるが、やはり攻撃の種別を掴まなければ最適な対策は行えないな」

 

 大会が始まる前は、対策が必要ないくらいの戦術で自分のやりたいことを押し付けるのが一番、なんて話がありましたけど、やっぱり現実は甘くありませんね。

 

 物理攻撃に対する対策と魔法攻撃に対する対策。それぞれあるけれど、両面対策はコスパが悪いし効力も低くなる。

 

 せめて、どちらに寄せればいいかぐらいは知りたいなあ。

 

「もう一度対戦映像を確認しましょうか。猫姫さんが瞬殺されるシーン」

 

 先ほど見た映像を再び開き、じっくりと観戦してみる。

 

『おーほっほっほ! 空を支配する究極の権能【『アイテール』】にそこいらの庶民が敵うはずありませんわ。叩き潰して差し上げます! 卍荒罹崇卍! 待っていなさい!』

 

「結果だけ見るとかなりダサいですね」

 

「やめて」

 

----

>恥ずかしい

 

>完全にフラグだったな

 

>5秒でやられそうな三下ムーブ

 

>このあと一撃で倒されたんだよね……

----

 

 ログを見ながら注意深く映像を追っていると、ローブの男が攻撃するシーンに入った。

 

 ローブの下で腕がゆっくりと掲げられ、乾いた銃声のような音が響き渡るその瞬間、

 

System >ああああがスキル【正拳突き】を発動しました。

 

 映像とは完全に乖離した、スキル発動のシステムログが表示された。

 

 そしてスキルがシステムに観測されたのと同時に、猫姫さんは一気に体勢を崩し、そのまま垂直落下し始める。

 

 続けて猫姫さんの相方も【正拳突き】で瞬殺され、映像は終わった。

 

「……腕を飛ばしてるんですか? 『ロケットパンチ』とかですかね?」

 

----

>ロボットかな?

 

>腕を切り落として投げつければロケットパンチになるテクニック!?

 

>↑このゲームの法則的にはできないほうがおかしい部類だなこれ

 

>さっそく検証してくるわwwwwwwwwwww

 

>さすがに腕が飛んできたら目で見えるけどな。銃声の問題も解決しないし

----

 

 少なくとも通常では考えられない動作なのは確かだ。【モンク】の基本スキルにして最強火力を誇る【正拳突き】。【モンク】は武器を装備せず素手で戦う職業(クラス)であるという都合上、そのスキルには、他の近接スキルに比べて補正が上乗せされているものが多い。

 

 小回りが利くスキルが多いのも特徴だが、リーチの差という最大の欠点を克服する方法はない。おっさんのように素手で【メイジ】の魔法スキルを行使するというテクニックもあるが、職業(クラス)の本質はやはり物理であることに変わりはないだろう。

 

「コメントでも指摘されているが、さすがに腕が飛んでいるようならすぐにわかるだろう。何かを素手の判定と誤認させているのか……?」

 

 からくりは不明だが、攻撃の正体そのものは掴めた。物理だと分かれば、防御力を底上げして受け止める策も取れるし、【モンク】相手なら他にもやりようがある。

 

「ゆうたさんは対策用の装備を用意しておいてください。ボクは別の準備に入ります。猫姫さんもこちらに回ってください」

 

「それは構いませんけれど……別の準備、ですの?」

 

「相手が強みを押し付けてくるなら、こちらも強みを強化しないといけませんからね――リフォーム大作戦で行きましょう!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。