卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「【マナキャスト】して【軽量なダイナモファング】と【ジュエルラビット】で攻撃!さらに【連撃のディバインウルフ】を召喚し【クラスチェンジ:アサシン】を適用!追加攻撃です!」
「【マナキャスト】――な、なによこの火力は!?」
【連撃のディバインウルフ】
COST:2 HP:2 AT:3
効果:[ダブルアタック]を[持つ]。[自身]の[攻撃]が[成功]した[時]、[自身]の[AT]を[1][ポイント][増加]させる。
【クラスチェンジ:アサシン】
COST:3
効果:[任意]の[モンスター]に[ファストムーブ]を[付与]する。
『卍荒罹崇卍 ライフ:30 マナ:1→2→0 マナの欠片:0』
『ロック☆シュター ライフ:25→16 マナ:4→5』
【軽量なダイナモファング】の効果により、【ジュエルラビット】のHPが0になり破壊された。とはいえ召喚コストはすでに【マナの欠片】によって還元されており、相手のライフを削るには十分な戦果を上げてくれた。
そして【連撃のディバインウルフ】は【ファストムーブ】の適用により、召喚されたターンから疾駆する。鋭い爪の二連撃が稲光のように奔り、ロック☆シュターさんのライフを瞬く間に7点も削り取った。
「くっ……【マナキャスト】……!」
「【連撃のディバインウルフ】と【軽量なダイナモファング】で総攻撃です」
『卍荒罹崇卍 ライフ:30 マナ:0→1 マナの欠片:0』
『ロック☆シュター ライフ:16→3 マナ:5→6』
「……降参するわ」
【ゲームセット WIN:卍荒罹崇卍 LOSE:ロック☆シュター】
勝負が終了すると、眩い転送光が視界を白で塗り潰し、次の瞬間には競技エリアの外へと放り出されていた。耳に残っていた演出めいた歓声が遠ざかり、肺の奥からようやく長い息が漏れる。
ひとまず一回戦に勝利したことに安堵し、大きく息を吐いていると、ロック☆シュターさんが声をかけてくる。
「なによ、あのインチキ効果は。あれだけで決着が付くレベルじゃない!」
「まあ【ヒュマデサタン】を出すために棒立ちしている相手なら簡単に仕留められますね。けれどHPは2しかないですから、止めようと思えば止められますよ」
だからこその【ファストムーブ】による奇襲だった。仮にコストが溜まってから即座に召喚したとしても、簡単に止められる。欲を言えば、召喚ターンと次のターンで確殺したかったが、今回はライフを残してしまった。
とはいえ【連撃のディバインウルフ】を除去されてしまったとしても【クラスチェンジ】で【軽量なダイナモファング】を強化すれば削り切れる圏内だった。
「低コストの【ファストムーブ】持ちが2体いればギリギリ凌げたけれど……それでも【ヒュマデサタン】のために溜めたコストを使わせられる時点で勝ち目はなかったわね」
ロック☆シュターさんの分析の通りだ。ライフが3しかなければ【ファストムーブ】持ちによるさらなる奇襲に対応しきれない。
同時に行動を選択する都合上、召喚されたターンには攻撃対象に選ばれず、少なくとも次のターンの攻撃までは確実に通る。このルールにおいて【ファストムーブ】持ちの【カード】による暴挙を止める手段は極めて少ない。
「あたしも今すぐ【連撃のディバインウルフ】をかき集めなきゃ――このメタ環境に取り残されるわけにはいかない!」
「そう簡単に集められないのが【ネームド】ですけど……このゲームのプレイヤーなら、普通に集めてきそうなのが恐ろしいです」
【ネームド】の【カード】自体は、ボクが集めてきたようにいろんな人から買い取っていけば意外と集まる。しかし特定の組み合わせの【ネームド】をピンポイントで集めるのは一苦労だ。ボクも1枚しか持っていない。3枚集められれば間違いなく最強なのだけど……。
そしてロック☆シュターさんは「こうしてはいられないわ!」とだけ言い残し、足早に【闘技場】を去っていった。さっそく【カード】を集めに向かったのだろう。
「おつかれさまー!すごいタクティクスだったよー!」
「ありがとうございます!まあタクティクスというか、強い【カード】による暴力でしたけどね」
勢いよく抱きついてくるめりぃさんを全身で支えながら、ボクは答える。とはいえこのルールであればそんなものだ。使用できるコストが絞られていることもあり、純粋なパワーカードを叩きつけるだけの勝負にならざるを得ない。大味でも構わないと思うけどね。
「明日香さんは……対戦中ですか。相手はえんどう豆さんですね」
試合はすでに終盤に差し掛かっているようだ。明日香さんの盤面には小粒のモンスターたちが山のように並んでおり、えんどう豆さんの盤面にモンスターはいない。
普通の小粒なモンスターであれば【ヒュマデサタン】の降臨前にライフを削り取ることは難しいが――。
「うわぁ……コスト0のモンスターが山のように召喚されてますね。確かにあそこまで特化させれば削り切れるでしょう」
他ゲームなら、手札という貴重なリソースを削ってまで場に出す価値のない【カード】でも、【フォールダウン】ではマナの回復量に比して手札が余りがちなので有用性が高い。
結果、コスト0のモンスターが蟻の大群のごとく盤面を覆い尽くし、気づけば相手ライフをじわじわと侵食する凶悪兵器へと化けるのだ。
最終的に数の暴力によって押し切られ、えんどう豆さんのライフは0になった。