卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

467 / 542
第456話 約束された神引き

 えんどう豆さんに勝利した明日香さんが会場に戻ってくる。

 

「お疲れ様でした!くーるで華麗な勝利でしたね!」

 

「おねえさまに見ていただけたんですね、ありがとうございます♥」

 

 明日香さんの戦い方からもわかるように、このゲーム、意外と速攻(アグロ)が強い。【魔王】が最強とは一体何だったのか。なにせコスト0の【カード】がそこそこ強力な効果を持っているのだから当たり前だ。

 

 とはいえ素の状態でコスト0の【カード】はそんなに強くない。【ネームド】の効果でコストが軽減された【カード】が強いだけなので、初期環境では注目されなかったのは仕方のないことだ。

 

「コスト0の【カード】は出し放題だからねー。でも、明日香ちゃんもそんなに【ネームド】を揃えられるのー?」

 

 めりぃさんの疑問は当然といえば当然だ。視聴者から【カード】を買い取っているボクでも、強力な【ネームド】を十分に集められているわけではない。知名度の高いプレイヤーとはいえ、明日香さんがデッキの大半をコスト0で埋め切るのは不可能に近い。

 

 その疑問に明日香さんは行動で示した。デッキの束を取り出し、【カード】をドローするたび、引き当てる【カード】を言い当てていく。

 

「【軽量なプラズマウィスプ】、【軽量なころころスライム】、【軽量なダイナモファング】……」

 

「すごーい!なんでドローする【カード】がわかるのー?」

 

「簡単な話ですよ。【フォールダウン】はシャッフルというフェイズが存在しません」

 

「え?」

 

----

>草

 

>何言ってんだこいつ、頭大丈夫か

 

>すべてのドローが最適解で草

 

>バグでは?

 

>ユーキちゃん「仕様です」

----

 

「えー!?嘘でしょー!?」

 

「本当ですよ。みなさん『今日のドローは運がいいぜ!』みたいな顔をしていますが、試合開始前に順番を仕込めば、その後のドローは脚本通り。プレイヤーは運ではなく準備力で勝負しているんです。」

 

 なので実のところ【ヒュマデサタン】はそんなに強くない。【勇者アリンド】を後出しされれば確実に破壊されるからだ。そうなっていないのは【勇者アリンド】という【カード】自体が【フォッダー】において重要性の高い【カード】であり、【フォールダウン】環境に出回る余地がないためである。

 

----

>じゃあ勇者アリンドをあえて温存すればフォールダウンで無双し放題じゃん

 

>勇者アリンドを手に入れたのに天使のオムライスを作らずにフォールダウンに明け暮れるってマジ???

 

>フェアミダス得意そう

 

>なお普通に卍さんと明日香さんのアグロデッキに轢き殺される模様

----

 

 ボクもこのことに気づいたときはさすがに驚いた。すべてが仕様のゲームとはいえ、さすがにバグなのでは?と思いマニュアルを確認したが、シャッフルという言葉が一切含まれていない。文字どおり純然たる仕様なのだ。運の要素を排除したカードゲームとして、意図的に設計されているのだと思う。

 

「なのでボクは必ず初手に【軽量なダイナモファング】を抱えられますし、【連撃のディバインウルフ】を使いたいタイミングで引き当てられます――効果によるシャッフルが発生しなければ、ですが」

 

【カッコトジゾンビ】

COST:1 HP:1 AT:1

効果:[アクション:テレポート]を[持つ]。[アクション:テレポート]が[発動]した[時]、[自身]は[デッキ]から[カード]を[1][枚][選択]する。[デッキ]を[シャッフル]して[選択]した[カード]を[デッキ]の[トップ]に[配置]する。

 

 」さんの【カード】を見るに、シャッフルという概念自体はこのゲームにも存在している。他にシャッフルの効果を持つ【カード】をボクは持っていないが、相手にシャッフルを強要する効果があれば、安定した戦術など簡単に瓦解させられるだろう。

 

 ボクが【カード】を見せるとめりぃさんが興味深そうに眺める。

 

「ほんとだー!シャッフルの指示が書いてあるー!でも待てよ……ということはこの【カード】はなんだか強そうに見えるけど実際は……」

 

 実在のプレイヤーをモチーフとした【カード】であることもあり、めりぃさんは言葉を濁す。確かに今の話を聞けばその結論に達するのは当たり前だ。

 

 好きな【カード】をデッキのトップに置けると聞けば強そうに見えるが、実際は【カッコトジゾンビ】を使わなくても好きな【カード】を好きな順番で並べられる。しかもシャッフルを強要されてしまうことから、選んだ1枚を除く【カード】は順番を崩されてしまう。

 

「確かにそういう意見も出るでしょうね。しかし、どんな【カード】にも使い方はありますよ」

 

 ボクはそう言って自身のデッキに【カッコトジゾンビ】を差し戻す。そう、ボクはこの【カード】をデッキに採用しているのだ。

 

 そんな雑談をしていると、次の対戦相手の情報が視界に表示された。お次のお相手は明日香さんだ。やはりプレイヤーが少ないせいもあって知り合いや身内とばかりマッチングしてしまう。

 

「さっそくですね♥おねえさま、お覚悟を」

 

「明日香さんが相手ですか。となるとデッキの順番を考え直す必要がありますね」

 

 先ほどの対戦で使った並び順は、対【ヒュマデサタン】用の構成だ。低コストのモンスターをフル回転させてくる明日香さんには通用しない。

 

 同時に、明日香さんもこちらがデッキの順番を入れ替えてくることはわかっているはずだ。通常とは異なる戦術を披露してくる可能性も十分にある。ボクは低コストモンスター対策を軸にしつつ、さまざまな状況に対応できる【カード】を混ぜていく。

 

 やがて試合時間となり、ボクたちは試合会場に転移した。浮遊感で足が震え、掌にはじっとりと汗が滲む。

 

「負けませんよ、おねえさま♥」

 

「こっちのセリフですよ。カードゲームの華は対友人環境にこそあり。究極のメタ戦術を披露しましょう」

 

「それ、嫌われるタイプの戦い方ですよ♥」

 

「明日香さんなら許してくれるでしょ?」

 

「はい、許しちゃいます♥だから――おねえさまも、許してくださいね?」

 

『【フォールダウン】――』

 

【START!!】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。