卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第459話 クローンウェポン

「おつかれさまでした!」

 

「おつかれさまでした。おねえさまはやっぱりさすがです♥」

 

 試合が終わり、会場に戻ってきたボクたちは互いの戦術を評価し合う。

 

「やっぱり最初に0コストのモンスターで圧力をかけられるとつらいですね。最終的にはこのゲーム、0コストのモンスターだけで構築するのが最適解では?」

 

「でも0コストのモンスターは効果が弱めですし、【カウンター】持ちが出てくると困りますよ♥ やっぱり高コストのモンスターと兼用するのがベストだと思います♥」

 

 確かに【カウンター】には滅法弱い。対策に高コストのモンスターを切らされている時点で0コストが強いのは間違いないのだけど、0コストのみで組むのが最適解とまでは言えないか。

 

「それよりも、おねえさま。〈ロールプレイング〉の精度が上がっていませんか?全てを読まれていた気分ですけど♥」

 

「まあ初対面の人と比べると知り合いは読みやすいですからね」

 

 特に明日香さんについては特別だ。とがみんが生まれたことからもわかるように、ボクは明日香さんをリスペクトしている。

 

 とはいえ、そんな事情よりも、バトルと違ってゆったり進行するカードゲームのほうが思考の再現精度を高めやすい、という理由のほうが大きいかもしれないが。

 

「卍さん、明日香さん、おつかれさまー!なんだかよくわからないけど面白かったよー!」

 

 めりぃさんが勢いよく抱きついてきた。ボクは頭をなでなでして応える。

 

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>クソゲーって横で見てる分には楽しいよな

 

>レアカードの暴力で全てを解決するゲームすき

 

>連撃のディバインウルフを禁止カードにしろ定期

 

>ヒュマデサタン最強説とはなんだったのか

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「ダメですよ!ただ強いから禁止なんて【フォッダー】ではありえません!もっと強い【カード】で対抗してくださいね!」

 

 果たしてこれからも【フォールダウン】がコンテンツとして定着し続けるかは不明だが、【フォッダー】のコンセプト上、バランス調整はないだろう。

 

「【フォッダー】といえばバグがありがちだけど、【フォールダウン】ではそういうのはないのー?」

 

 めりぃさんがハグを解き、距離を取って質問する。

 

「シャッフルをしないのもボクは戦略要素だと思ってますけど、実はバグなのかもしれませんね。基本的に【フォッダー】のバグは仕様ですから、仕様だと思っていたらバグだったなんてこともあるかも」

 

 なんて世間話をしていると、次の対戦相手が決まったらしい。どうやら決勝戦のようだ。ボクはシステムメッセージから相手の名前を確認する。

 

「最後の対戦相手は……荒罹崇(こうらすう)さんですか。相手にとって不足なし、ですね」

 

 できれば事前に対戦を見学しておきたかったが、仕方ない。どんな相手にも対応できるよう、デッキの順番を組み替えておく。

 

 【カード】を並び替えていると、✙さんがやってきた。とことこと足音の擬音を口にしながら、ボクの眼の前に立つ。

 

「おや、宣戦布告かなにかですか?そういうのは本人に来てもらいたいですけどね」

 

「いえ、確かにご主人様が戦うのはご主人様なのですが……。実質的にはボクが相手なので」

 

 誰も彼もをご主人様と呼ぶせいで非常に難解だけど……。デッキを組んだのは✙さんということでしょうか。反射的に〈ロールプレイング〉でその真意を探ろうとして、激しいノイズに弾かれてしまう。

 

 なにやら隠していますね。それこそゲームをひっくり返すようなバグでも見つけたのかもしれません。

 

「なるほど、大会の前にも言ってましたね。連携……でしたか。楽しみにしておきますよ」

 

「楽しみにするのは結構ですが――怒らないでくださいね」

 

 怒るようなことをするつもりなんですか……!? ✙さんはこてんと首を傾げながら手を合わせてあざとくお願いをしてくる。さすがにボクを元にした人格なだけあって、とってもきゅーとですね。

 

「わかりました!なんだかわかりませんが、何があっても怒りませんよ!」

 

 そう言うと✙さんはほっとしたように息をつく。なんなんですか、もしかして、相当に後ろめたいことをする気ですか……?

 

 あまりの態度に戦々恐々としていると、どうやら時間になったようだ。視界が暗転し、試合会場に転移する。

 

 

 ――眼の前には、銃を構えた『ボク』がいた。

 

 黄緑色に発光する銃から禍々しい色の弾丸が放たれる。反射的に《ガゼルフット》を起動してサイドステッポで避けながらボクは叫ぶ。

 

「まさかのダイレクトアタックですか!?」

 

「そうさ――知らなかったかな?【フォールダウン】は相手が全損したら不戦勝になる」

 

 そんなこと、知るわけないじゃないですか! 普通は戦闘を禁止にするでしょ!

 

 相手は推定【ガンナー】――いや、違う。あの銃はこの世界のものではない。ボクは《『第六感』》によって確信した。

 

 あれは〈改造行為(チート)〉だ。

 

「最近の〈改造行為(チート)〉は腕を換装しなくてもよくなったんですかね?」

 

「これはボクの細胞によって造られた〘クローンウェポン〙――正真正銘、ボクのアバターなのだよ」

 

 最近の技術は凄いな、なんて明後日のことを考えながらもボクはデッキを取り出す。

 

「あくまで【カード】を突きつけるつもりかい?」

 

「【フォールダウン】を始めてしまえば、それを放棄しての殴り合いなんて許されないでしょう?」

 

「もちろんその通りだよ――だが、それは神様が許さない」

 

 その言葉とともに、視界にメッセージウィンドウが表示される。

 

SYSTEM >偉大なる【『テミス』】により新たなる[法律]が制定されました。現在時刻より1時間、[フォールダウン]の[開始][宣言]を行った[キャラクター]は[死亡]します。

 

「は?」




改造行為(チート)その8 『クローンウェポン』
プレイヤーの細胞を利用した武器を作る事で、人体そのものを改造せずに装備を持ち込むことができる〈改造行為(チート)〉です。持ち込む装備は自由自在。人体改造と比べるとかなりお手軽な〈改造行為(チート)〉ですね。
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