卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

471 / 543
第460話 ディスコネクター

SYSTEM >偉大なる【『テミス』】により新たなる[法律]が制定されました。現在時刻より1時間、[フォールダウン]の[開始][宣言]を行った[キャラクター]は[死亡]します。

 

「は?」

 

 あまりに衝撃的なシステムメッセージに呆然としている間に荒罹崇(こうらすう)さんがどす黒い弾丸を撃ち放つ。ボクはそれを再び避けようとして――身体の動きが停止する。

 

「なっ――」

 

 弾丸が命中すると、禍々しい力がボクの身体を侵食していく。ダメージはないが――。

 

「観測による行動の抑制、ですか」

 

「そう、『ゼノン効果』と言ってね。量子は恥ずかしがり屋だから、何度も見られると動きを止めてしまうんだ」

 

 動きを止められた理屈はわかる。だが、禍々しい弾丸の効果まではわからない。【フォールダウン】の開始宣言を禁止されてしまった以上、このまま戦うしかない。

 

「まったく――カードゲームを暴力で解決するなんて、不届き者ですよ!」

 

 ボクは【ストレージ】から【ルビーロッド】と【ストームワンド】を引き抜き、自身に支援(バフ)をかける。

 

「イグニッション!――あれ?」

 

 ――スキルが発動しない。

 

「この弾丸〈ディスコネクター〉の効果だよ。〈呪い(まじない)〉の力により感情の発露を抑制させる。これによりシステムが指示として受け付ける水準を下回ったのさ」

 

「……長々と説明していますが、勝利を確信しているのでしょうか?」

 

 多くのゲームでは会話中にスキルは暴発しない――その原理に着目した技術、か。プレイヤーの明確な発動宣言を、日常会話へと貶める仕組みということですか。

 

 つまり、【モーションアシスト】への指示機能は完全に封じられた――。

 

 ボクは杖を荒罹崇(こうらすう)さんに向けながら宣言する。

 

「〚ライトニングボルト-0〛!」

 

 灑智の〈魔導〉を模し、通常を凌ぐ〚ライトニングボルト〛を放つ。ひとまず〈魔導〉は使えそうだ。あとはアシストに頼らない小手先の技で対応するしかない。

 

 鋭く伸びる雷の槍に対し、荒罹崇(こうらすう)さんは手を伸ばし、〚アンチマジック〛を発動させる。その瞬間、〈魔導〉は何事もなかったかのように消失した。

 

「【秘孔】【車輪】【一掃】――」

 

 荒罹崇(こうらすう)さんは次々と【モンク】の支援(バフ)スキルを発動しながら一直線に距離を詰めてくる。武器は出さない。正統派の『素手モンク』だ。

 

「結局、()()が一番なんだよねっ!」

 

 武器に頼るより、自らの身体を直接ぶつけるほうがアバターの操作性に優れるのは自明の理だ。アシストがないこともあり〈トンネル避け〉を実行するのは不可能だろう。ボクはバックステッポで距離を取りつつ【パインサラダ】を手づかみでかき込む。

 

 しかしアシストなしの速度でアシストありの前衛職業(クラス)に勝てるはずもない。瞬く間に距離を詰められ、お腹に【正拳突き】を打ち込まれる。

 

 物質干渉力に弾き飛ばされ、観客席を貫いてはるか後方へ吹き飛ぶ。しかしいい感じに距離を取れた。今のうちに身体に打ち込まれた〈呪い(まじない)〉の力をどうにか除去できないか。

 

 軽く足を踏み鳴らすと体内の〈呪い(まじない)〉が急速に排出され、黒色のエネルギーとして【ルビーロッド】の杖先に集まる。

 

「なるほど、こういう使い方もあるんですね」

 

 【モーションアシスト】が解禁されたことで、〈呪い(まじない)〉の性質を理解できた。荒罹崇(こうらすう)さんは『感情の発露を抑制させる』と言っていたが、このエネルギーには『鎮静』という言葉の概念が込められている。

 

 特定の単語を込めたエネルギーを射出することで、〈魂の言葉(ソウルワード)〉と類似した事象を相手に強要できるようだ。

 

 分析の刹那、どす黒い弾が目前へ迫る。また〈呪い(まじない)〉ですか。同じ手にかかるつもりはありませんよ。

 

「《ガゼルフット》!」

 

 回避の意思を込めた〈魂の言葉(ソウルワード)〉により〈トンネル避け〉の精度を引き上げ、エネルギー弾を紙一重で回避する。

 

「【フェアリーブレス】!」

 

 【ストームワンド】から輝く風を撃ち出し、光の速さで走り抜けながらそれをその身に受け、AGIを増加させつつ【煈颷の刻印】を適用した。

 

【フェアリーブレス】

[アクティブ][投射][風属性][攻撃][支援][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:0.625s 再詠唱時間:10s 効果時間:20s

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。[命中時]、[自身]の[AGI]を[増加]させる。この[効果]は[5回]まで[重複]し、[効果時間]は[リセット]される。

 

【煈颷の刻印】

[パッシブ][オート][スイッチ] 再詠唱時間:0s 効果時間:30s

効果:[風属性]を[受けた][場合]は[炎属性][ELM]を[増加]させる。

[炎属性]を[受けた][場合]は[風属性][ELM]を[増加]させる。

それぞれ[1回]まで[適用]され、[発動]の[度]に[効果時間]は[リセット]される。

 

 追い風を受け、刹那で荒罹崇(こうらすう)さんに肉薄し、【ルビーロッド】を勢いよく叩きつける。加速は十分、メンタルも万全。これなら確実に当てられる。そんな確信を抱きながら【ソウルフレア】を発動させようとするが――。

 

「――躱されっ」

 

「アクションに無駄が多すぎるね」

 

 杖は空を切る。隙を突いて銃弾が走る――。




テクニックその135『ゼノンストッパー』
全能によって量子に対して連続的に観測を実行することで、オブジェクトの動作を停止させるテクニックです。〈観察破壊〉の派生ですね。とはいえ自在に動き回る量子を戦闘中に観測し続けることは困難を極めるため、不意打ちでの使用がメインだと思われます。

テクニックその136『魂の強制』
意思を込めた〈呪い〉を放つ事で、その意思に準ずる制約を付与するテクニックです。ネガティブな〈魂の言葉(ソウルワード)〉を相手に押し付けて強制的に発動させるようなイメージでしょうか。

テクニックその137『ディスコネクター』
〈魂の強制〉によって感情を鎮静化させることにより、思念入力の強度を大幅に低下させ【モーションアシスト】への指示を実質的に無効化するテクニックです。【モーションアシスト】が封じられてしまう事から受けてしまうと復旧が非常に困難……恐ろしいテクニックです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。