卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第464話 トンネル避け返し

「『カードゲーム』で最も厄介なのは万能札(ワイルドカード)ですよ?」

 

 ボクが啖呵を切ると、荒罹崇(こうらすう)さんは苦笑する。見た目はもぐらなのに表情にデフォルメ感があり、なかなかにきゅーとだ。

 

万能札(ワイルドカード)が厄介だというのはボクも同意見だね。とはいえそれに該当するのは〈ロールプレイング〉だと考えているのだけど」

 

 《神なる行動(ディバインアクション)》を引き出せる技術である〈ロールプレイング〉は確かに万能札(ワイルドカード)としての価値を持つ。ただ、ボク的には〈ロールプレイング〉はすでに一般技術なので〈魂の言葉(ソウルワード)〉には該当しないんですよね。

 

「それなら、この戦いで証明しましょうか――荒罹崇(こうらすう)さん!」

 

 ボクは杖を向けて宣言する。荒罹崇(こうらすう)さんは巨大な手を振り上げながら応えた。

 

「越えさせてもらうよ――荒罹崇(ありす)!」

 

 その体躯に見合わない圧倒的な速度で剛腕が振り下ろされる。同時に黄金色の矢が嵐の如く射出された。

 

「【アーチャータクト】ですね!」

 

 攻撃する度に矢を射出する効果を持つ受動(パッシブ)スキルだ。通常は1回の攻撃につき矢は1つのはずだが――腕を高速で振動させることで、攻撃回数を大幅に水増ししている。

 

 〈痙攣撃ち〉――古の時代より伝わる連打技術の応用といった所ですか。

 

 迫りくる無数の矢は〈流水誘導〉の流れに乗り、ボクを目掛けて突き進む。避けるのは容易いが、避けるまでもない。

 

 ボクが鋭い視線で睨みつけると、矢は一瞬にして粉々に霧散していく。観察系全能の使い方は荒罹崇(こうらすう)さんで学んだ。ここからはそれを活かしていきますよ。

 

 振り下ろされた剛腕をバックステッポで回避し、魂の炎に薪を焼べる。

 

「【《イグニッション》】!」

 

「どれだけ支援(バフ)を重ねようと――」

 

 確かに炎属性と風属性が通らない以上、ボクの攻撃スキルのほぼ全ては封殺されている。このゲームにおける『無効』はいくら出力が高くても貫通できない。しかし――。

 

「ボクには無属性の攻撃スキル、【アブソーブ】があります。【イグニッション】を4回ほど重ねれば、【破魔】の【ネームド】持ちでも致死量に至ると思いますがね」

 

 もちろんスキルを発動してしまえば【イグニッション】の効果はリセットされてしまう。だから荒罹崇(こうらすう)さんの猛攻をスキル無しで切り抜ける必要があるわけだけど――。

 

 次の瞬間、ボクの足元に水色の魔法陣が出現する。水属性の攻撃魔法で『自身』以外を起点にする魔法は1つしかない。【リバースコール】だ。

 

【リバースコール】

[アクティブ][座標][エリア][水属性][攻撃][支援][妨害][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:5s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m

効果:[座標]を[起点]として[エリア]を[形成]し、[範囲]の[敵][キャラクター]の[水属性][ELM]を[低下]させ、[ダメージ]を[与える]。[範囲]の[味方][キャラクター]の[水属性][ELM]を[増加]させる。

 

 頭上に雨雲が出現し、針のように鋭い雨が降り注ぐ。【オートユーザー】でHPを回復させながら受けきったが、水属性のELMを下げられてしまった。次に大技が来たら危ないかも知れない。

 

 念のために現在のステータスを確認したが、【イグニッション】の支援(バフ)は問題なく点灯し続けている。【オートユーザー】は能動的に発動できるが、あくまで受動(パッシブ)スキルで、【イグニッション】の強化対象外だ。

 

「後は数で攻めさせてもらうよ。【アクアスプリンクラー】!」

 

 荒罹崇(こうらすう)さんの宣言により、ボクを取り囲むように青い砲台が出現する。その数は10にも及ぶ。本来なら一度のスキル発動で設置できる砲台は1つのはずだけど、装備の受動(パッシブ)スキルによって数を引き上げているらしい。

 

【物量戦】

[パッシブ][スイッチ]

効果:[設置][スキル]の[回数]を[増加]させる。

 

 無数の砲台から断続的に【アクアショット】が放たれる。先ほどの矢とは違い、周囲を取り囲むような配置であることから、観察の全能で撃ち落とし切るのは困難だ。

 

 ボクは地面を軽く踏み鳴らし、四方の大地を隆起させる。即席の塹壕のようなものだ。普通なら、この程度では最下級の【アクアショット】とはいえ防げるような代物ではないが――。

 

 荒罹崇(こうらすう)さんは〈トンネル避け〉ですり抜けようと試みるが《イグニッション》によって強化された塹壕がそれを許さない。

 

「【《イグニッション》】――あと1回、ですかね?」

 

「量子の存在確率を上げたのか……」

 

 ボクがやったことはシンプルだ。量子は点のように見えても、実際にはいくつもの場所に現れる可能性がある。その『現れやすさ』を操作し、量子の隙間を埋めたのだ。結果、点で受け止める盾ではなく、面で覆う防御として成立する。

 

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>そうはならんやろ……

 

>なっとるやろがい!

 

<『そうはならんやろ』というのは結果に対するツッコミじゃないか?今回の件でいうと仮に量子の存在確率を操作できるならトンネル避けに対する防御として有効だ

 

>そうはできんやろ……

 

>できとるやろがい!

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テクニックその138『痙攣撃ち』
古来、今とは違い両手でコントローラーを握ってゲームをプレイしていた時代……。僅かな時間の間にどれだけ速くボタンを連打することができるかが問われていたと言われています。
そして生み出された最適解。それこそが〈痙攣撃ち〉。
ほんの一瞬で16連打を叩き込むとある英雄が創り出したテクニックです。
【フォッダー】においてはこのような小刻みな攻撃で相手を殴っても大したダメージは与えられないのですが、攻撃判定にはなる以上、【アーチャータクト】は発動する。そして【アーチャータクト】の出力に攻撃判定の威力は関係ない。現代に蘇った究極のタクティクスです。

テクニックその139『トンネル避け返し』
量子の隙間を縫うように移動して壁をすり抜ける〈トンネル避け〉に対して有効なテクニックです。壁に干渉をかけて量子の存在確率を操作することで、すり抜けの経路を完全に遮断します。点ではなく面で受け切る、極めて有効ですよ。どうやって実現してるかって?……えっと、〈バタフライタクティクス〉でいい感じに……。
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