卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「【サモン・フィーニクス】!」
スキルの宣言とともに、ボクの後方に燃え盛る不死鳥――【フィーニクス】が顕現する。【フィーニクス】は甲高い声をあげながら、正面に魔法陣を形成し、白銀色に輝く熱光線を射出した。
白銀色の熱光線――【フィーニクスフレア】は炎属性の耐性を貫通する効果を持つ。無効化なんて関係ない。すべてを穿て!
危機的状況に瀕して正気に戻った
「不発!?」
発動しなかった。【モーションアシスト】への指示が完全に無視され、彼女は困惑した。
「〈
「媒体もなしに――!?」
そして【フィーニクスフレア】が命中した――。
〈ロールプレイング〉からは、いくつかの回復スキルを起動しようとした形跡が読み取れるが、いずれも不発に終わった。そのまま絶大なる業火に焼き尽くされ、HPを全損した。
【プレイヤーの退出を検知、不戦勝として処理します】
【ゲームセット WIN:卍荒罹崇卍 LOSE:荒罹崇】
長かった戦いが終わり、ボクは会場へと帰還する。
会場に戻ると、そこには
「……さすがだね」
彼女はボクを見据えながらぽつりとつぶやく。その声色には、入念に整えた盤石の態勢を打ち破られた悔しさがにじんでいた。
「いえ、
「勝てなきゃ意味がない!」
ボクのフォローを遮るように大きく足を踏み鳴らし、怒りをあらわにする。確かに勝てなきゃ無意味、そういう側面もあるかもしれない。でも――。
「でも、〘クローンウェポン〙の発想はボクには絶対に出てこないものでしたし、〈
ボクがそう言うと、
「そう――か。ボクは、コピーじゃなかったのか――」
いつの間にか背後にいた✛さんがボクの耳元に話しかける。
「ありがとうございます、ご主人様。フォローしていただいて」
「そういうあなたもなかなかに逸脱してますよね……。まさか【
「使えるものは何でも使う、それがボクのポリシーですので」
【フォールダウン】の試合に【『テミス』】で横槍を入れたのはこの人、✛さんだ。〈
そんな話をしていると、めりぃさんと明日香さんがやってきた。
「卍さーん!優勝おめでとー!!
ぴょんぴょんと跳ねながら近づいてくるめりぃさんに苦笑しつつ両手を広げたが、抱きついたのはボクではなく、
「ちょっと!ボクはこっちですよ!」
「だって卍さんの抱き心地はもう知ってるもんー」
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>なんかいやらしい
>めりぃさんかわいい
>卍さんには明日香さんがいるだろ
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コメント欄で指摘されてふと見ると、明日香さんが両手を広げて待っていたので抱きついておく。
「めりぃさん……」
「んー?なーにー?」
「なんでもない……けど……。ボクと【フレンド】登録してもらえない……かな」
「いーよー!今度一緒に遊ぶー?」
ボクを元にした存在である以上、
そんな思い出があるはずなのに、彼女はボクの知人たちとは他人として接しなければならなかった。その悲しみは想像を絶するものだっただろう。
でもめりぃさんは、ボクに対するのと同じ態度と表情で応じてくれた。それが彼女の心を溶かす最後の一因になったのだと思う。
「よかった、よかった。……と、忘れていました。そういえば優勝したんでしたっけ」
明日香さんから離れて、ボクは【ストレージ】の中を確認する。ちょっぴり寂しそうだけど、気にしてはいけない。まだやるべきことがある。
確か事前情報では――あった、【空神の指輪】。【ストレージ】から引き抜いてみると、青空のように澄んだ宝石がきらきらと光り輝いている。どうやら品質的には【LEGEND】らしい。そして付与されているスキルは――。
【『アイテール』】
[パッシブ][パーミッション][オーソリティ]
効果:[あらゆる][条件]を[無視]して[ジャンプ]ができる。
【空神の加護】
[パッシブ][ブレッシング]
効果:[対象]より[高度]に[位置]している[時][スキル]の[出力]を[増加]させる。
「おや、【加護】も付いているとは。いいですね!最悪【『アイテール』】が使えなくても役に立つかもしれません」
例外はあるが基本的に同じ種類の
お誂え向きに風属性ELMの補正も+40%。【空神】のイメージ先行のステータスだと思うが、ボクにぴったりだ。
【LEGEND】なだけあって、指輪でありながら物理防御力が皮装備並みに高い。どこぞの【ナイト】も卒倒するレベルだろう。
「どうですか?明日香さん、きゅーとでしょ!」
早速装備して見せびらかすと、「おねえさまのほうがきゅーとです♥」などと返されてしまう。今は指輪の話でしょ!