卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

479 / 542
第468話 フラグ

 大会が無事に終わり、ほのぼのと会話に花を咲かせていると、背後に突然メグさんが現れた。どうやら«テレポート»で転移してきたらしい。

 

「おや、メグさん。大会に参加しているのだと思っていましたが……そういえば見かけませんでしたね」

 

 ボクが振り返って声をかけると、彼女は冷や汗の感情表現(エモート)を流しながら答えた。

 

「いや、一応参加してたのです。でも1回戦で負けちゃって……」

 

「あらら、そうだったんですね。でも大丈夫ですよ、どちらにせよボクには勝てなかったはずですしね」

 

「くうぅ……本気で言っているところがムカつくのです……!せっかく【ヒュマデサタン】も【勇者アリンド】も3枚積んだのに……!」

 

 それは末恐ろしいですね……。【ヒュマデサタン】はまだしも【勇者アリンド】をそこまで潤沢に揃えているプレイヤーは他にいないだろう。今回の大会では活躍こそしなかったが、強力な【カード】であることに疑いはない。

 

「大会は終わってしまいましたが、どうですか?ボクと【フォールダウン】してみませんか?」

 

「望むところなのです!私の高コスト偏重デッキが火を吹くのです!」

 

「わたしもおねえさまと再び一戦を交えたいです♥もちろん、メグさんとも♥」

 

「あー、いいなー!あたしも【カード】集めでもしようかなー」

 

 そんな感じで盛り上がっていると、ふと、荒罹崇(こうらすう)さんが少し寂しそうにしていることに気づく。

 

荒罹崇(こうらすう)さんもどうですか?大会では【フォールダウン】ができませんでしたし……」

 

「そ、そうだね……ボクも一戦付き合うとしようか」

 

 ボクが声をかけると、彼女は恥ずかしがりながらも【ストレージ】からデッキを取り出した。

 

 よーし、フレンドマッチとはいえ負けるわけにはいきません。優勝者としての実力をお見せしますよ!!

 

「よし、【大いなる業火の疾走する英雄のミニスライム】で攻撃。これでボクの勝ちだね」

 

荒罹崇(こうらすう)さんが強すぎる……!」

 

 デッキを持っているみんなで対戦交流会を始めたのだが――誰も荒罹崇(こうらすう)さんに勝てない。多重【ネームド】の圧倒的パワーで、こちらのチャチな戦術をたやすくねじ伏せてくる。

 

「【黄金の才(ユニークスキル)】で強引にバトルに持ち込まなかったら、普通に勝ててたんじゃ……?」

 

「こんな競技人口の少ないカードゲームでカードパワーだけで勝利してもなんの意味もないからね」

 

 こうしてみると、【フォールダウン】は普通のカードゲームとはまた違う趣があって、面白いですよね。

 

 販促アニメなどでは世界で一枚のレアカードなんてものが出てきて、その特別性に憧れるユーザーも少なくない。

 

 けれど現実のカードゲームではレアカードといっても、お金を出せば軽く3枚揃えられる程度の代物でしかない。

 

 だが【フォールダウン】なら世界で一枚とまではいかなくとも、ほとんどのユーザーが所持できないようなレアカードが存在し得る。

 

 かといって【黄金の才(ユニークスキル)】のように、特定個人の強力なパワーカードに誰も対抗できないわけではない。集めようと思えば他のプレイヤーだって集められる。

 

 メインのゲームとしては問題だらけだけど、ミニゲームとしては悪くない出来だと思う。

 

「これは次回の大会にも参加しなきゃですね……。もちろん本戦が優先ですけど」

 

「そろそろ本戦の【ダブル】が始まるのです。準備を進めていくのです!」

 

「また延期になったり仕切り直しになったりしなければいいですけど……。まあ、そんな問題がぽこじゃか起きるわけないですよね!」

 

「当たり前なのです!そんな問題はそうそう起きないのです!」

 

 不安を口にすると本当になる気がして、そうならないように楽観的な希望的観測をメグさんと語り合う。しかし、これはもしかしてフラグって奴なのでは……?

 

「あら、ちょっとお仕事でお呼ばれしたので、失礼しますね♥」

 

 そこで明日香さんはこちらが挨拶を返す間もなくログアウトした。ずいぶん忙しないですね。よほど緊急の案件だったのでしょうか。明日香さんの仕事といえば『異形』の問題を解決する『退魔師』だけど……。

 

「ま、考えすぎですよね」

 

 まさかアクタニアを超える『異形』が存在するわけもないし、仮に同格の存在が暴れても今の明日香さんならひとりで軽く鎮圧できる。

 

 そんな理論武装を脳内で組み立てつつ、その日は楽しく【フォールダウン】で遊び尽くした。

 

 明日はメグさんと【『アイテール』】の検証をしようかな、と考えながらログアウトした。そして『VRステーション2』から外に出ると――

 

 ――紫色に染まった空が窓越しに視界に映り込んだ。

 

「またゲーム外の問題ですか……?いや――」

 

 別にボクが解決しなきゃいけないなんて決まってないですからね。きっとユーキさんや明日香さんが解決してくれるでしょう。ボクはいつも通り、平和なゲーム生活を送りますよ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。