卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第473話 負けイベント

「まあいい、貴様はここで終わるのだ。そして、そこの勇者に付き従う愚かな人間ども。貴様らに恨みはないが――ここで死んでくれ」

 

 イベントの発生地点に辿り着くと、魔王さんがいつものように長々と前口上を語り、戦いが始まった。

 

「わわっ!大変ですよ!アリンドさんと魔王さんのバトルが始まってしまいました!一緒に戦いましょう!!!」

 

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>白々しい……

 

>なんか草

 

>ヒーローショーのおねえさんかな?

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「よーし、頑張るよ!【正拳突き】!」

 

 アリンドさんが魔王と激しい戦いを繰り広げる中、あきなさんが長い触手を伸ばして横から攻撃を仕掛けるが――半透明の障壁に弾かれ、触手が大きく跳ね上がった。

 

「ふっ、我が『障壁』を破ることもできぬ雑兵が――」

 

「えいっえいっ!」

 

 攻撃を弾かれても決してくじけずに手数で攻めていく。それに合わせてボクも杖で【ゲールウィンド】を放つが、やはり魔王には傷一つ入らない。

 

「くそっ、なんて恐ろしい障壁なんですか……!」

 

「わたしが支援(バフ)をかけるよ、頑張って♥」

 

「はっ、この程度の敵なら俺が出るまでもねェな」

 

 あきなさんが楽しめるように三者三様のムーブで場を盛り上げていく。

 

「さすがに魔王を名乗るだけのことはあるな……。だが、新入りたちが見てる中、かっこ悪いところを見せるわけにはいかねえよなぁ!?」

 

 アリンドさんがそう叫ぶと、剣を大上段に構えながら詠唱を始めた。

 

「〈勇者の律、過剰を戒む。広く砕かず、深く届かせよ〉――」

 

「貴様!この戦いは負けイベントだぞ!プレイヤーが障壁を割る前に【オールブレイカー】を使うな!」

 

 どうやらアリンドさんがNPCとしての役割を捨てて本気を出してしまったらしい。魔王の放つ【サミダレ】の嵐をサイドステッポで華麗に避けながら、詠唱を続ける。

 

「本来なら魔王の勝ち筋は確定催眠の【エンドロール】ですが……あれは確か詠唱時間(キャストタイム)が20秒でしたか」

 

「〈ただひたむきに――お前だけを断つ〉!【オールブレイカー】!!」

 

 勇者の最終奥義はシンプルイズベスト。派手な演出など一切不要。振り下ろした剣が一撃で魔王の障壁を打ち破り、HPゲージを大きく削り取る。

 

「――ッ〈我は終焉を願う世界の救い手〉……」

 

 大きく後方に弾かれながらも詠唱を始める魔王に、あきなさんが横から触手を打ち込む。うめき声を上げて派手に転がるその姿を見てボクはため息をついた。

 

「こりゃ負けイベントなんて到底言えませんね……」

 

「荒罹崇が助太刀してきたら?」

 

「さすがに無茶ですよ。【パーティ】ならまだしも単独ではアリンドさんを抑えられません」

 

 あきなさんとアリンドさんの連携で着々と追い詰められる魔王を眺めているボクたちだったが――。

 

「【ラグナロクオーメン】!」

 

 呪いの言葉が告げられると同時にアリンドさんが呻く。

 

「ちっ、勇者を対象にそれを使うのは禁止されてるはずだろうが!」

 

「貴様がほざくかボケ!」

 

「どんな効果でしたっけ?」

 

「対象のMPを0にする、らしいよ♥ さすがのアリンドさんもMPが0じゃ勝てないんじゃないかな」

 

 豊富な【ヒーロー】の能動(アクティブ)スキルを封殺され、瞬く間に防戦へと転じる。

 

 魔王は【サミダレ】を〈流水誘導〉で自在に操り、アリンドさんの最大HPを削り取っていく。アリンドさんもなんとか通常攻撃で立ち向かっているようだが、魔王のHPを削りきるのはかなわないだろう。

 

「苦戦させおって――だが終わりだ。〈哀れな人形共よ、闇に揺蕩い永久に眠れ〉【エンドロール】!」

 

 そして魔王の必殺スキルが発動し、視界が暗転して――。

 

 

 気がつくとボクたちは噴水の前に佇んでいた。

 

「えーん、負けちゃったよー!」

 

「負けちゃったねー♥」

 

「惜しかったんだがなァ。卍さんが本気を出さなかったからじゃねえか?」

 

「んなこと言ったら帝王龍さんなんて一切手を出さなかったじゃないですか。戦犯ですよ戦犯」

 

 まあ確かに【メテオ】でも撃ち込めば軽く削りきっていたところだが、上級者が集まって初心者をキャリーしても仕方ない。むしろ、負ける気満々だったのにいいところまで削ってしまったアリンドさんが、ゲーム的には大戦犯と言える。

 

「勇者が負けたら世界はどうなっちゃうの?」

 

 あきなさんが聞いてくるが、勇者が負けたときのルートはボク自身知らない。確か娘のレジーナさんが勇者を引き継ぐという設定だった気がするけど……。

 

「【ディスポサル王国】の最高戦力が葬られた以上、魔王が世界を支配することになるだろうなァ。人間はおしまいだ」

 

 メインクエストの流れを知っていると思わしき帝王龍さんが状況を解説してくれる。

 

「何か手はないの?たとえば勇者に匹敵する戦力とか♥」

 

「勇者に匹敵する戦力ゥ?あるわけねェだろ。強いて言うなら勇者の娘だが――あいつにゃ無理だ。なにせ引き継ぎが終わってねェ」

 

「引き継ぎですか?」

 

「勇者の力は生前での継承が必要なんだ。つまりレジーナに【ヒーロー】の職業(クラス)はない。勝ち目は無ェ」

 

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>マジかよ人類終わりじゃん

 

>くそっ……どうすればいいんだ……!

 

>帝王龍さんの盛り上げ役ムーブすこ

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「まァ、まずは王に報告だな。俺の知識では世界の終わりは確定的だが……お貴族サマならなにか知ってるかもしれねェ」

 

「そっか、じゃあ【ディスポサル城】に戻ろう!任務失敗だから気が重いけど……」

 

 というわけで少しトラブルはあったが、無事にメインクエストの流れに乗ることができた。ボクもメインクエストは初見なので、この先どんな流れになるのか気になりますね。

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