卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
「〈ミュージックハウス〉……?」
「そうですにゃ。まずは【ディバインゴーレムの石】を取り出して……」
そう言いながら、先ほど属性を付与する前に【ストレージ】にしまっていた【ディバインゴーレムの石】を取り出す。取り出した石は淡く金色の紋様を帯びていた。
その後、右手で蒼白の光線を描き、虚空に設計図を浮かべる。
「……あれは何をやってるんですの?」
「ボクも詳しくはないんですけど……。設計図を書いてるんですよ。どの部分にどの素材を使用するか、幅や大きさをいくつにするか、そういった情報を記入して確定すると、アイテムが即座に加工されるんです」
完全ランダムのガチャ鍛冶とは違い、創意工夫がそのまま滲む画期的なシステムだ。
「これができるようになると便利ですにゃん。お二人も取得されてみては?」
自分で素材を加工できれば、テクニックに必要なアイテムを自前で用意できるよね。スキルポイントあったっけ……。ステータスを開いてみると、ちょうど汎用スキル枠が1つ増えている。
「そういえば自宅の中に【女神像】がありましたね。覚えてみましょう」
「わたくしは遠慮しておきますわ……。どうにも細かい作業というものが苦手で……」
自宅に入って【女神像】に祈りを捧げ、【ドローイング】のスキルを獲得して戻ってくると、どうやらアイテムの加工が完了していたらしい。
店員さんの手には、薄板のように加工された【ディバインゴーレムの石】があった。
「これは【〈
「……え? 元となった素材はELMがマイナスになった闇属性の鉱石なんですよね。なんでそれで闇属性が強化できるんでしょう」
「それはELMの仕組みによるものにゃん。卍さんは非常に高い炎属性のELM値を持ってるから炎属性の攻撃ダメージで逆にHPを回復できる。でも、この法則は炎属性の回復魔法には適用されないにゃん」
ELMによる属性スキルへの影響は、受け手側にとって都合が良くなるように成り立っている。ダメージや
「つまりわたくしの闇属性スキル……【誘いのレクイエム】の威力を増加させることができるのですわね。でも、威力が上がってもすぐに壊れてしまうのでは? ELMが低いということはアイテムにかかる負荷も大きくなりますの」
「ノンノン。先ほど言っていた仕様をお忘れですかにゃ?」
先ほど言っていた仕様? 【〈
「【ホーム】として成立した家は〈不壊化〉される!」
「その通り! あとは家の条件を満たすだけ。条件は、中に家具が設置できることと、住所があること。この裏庭を住所にしてミニチュアハウスを作るにゃん!」
宣言とともに、再び【ドローイング】を使って設計図を書き始める店員さん。蒼光のペンが空中を滑り、線が組み上がる。まさにクラフトに命を懸けるプレイヤーだ。
やがて豆腐型のミニチュアハウスと小型家具が完成する。白壁の豆腐型ハウスが無垢材の家具と並ぶ。
しかし、完成したミニチュアハウスには疑問点がある。先ほど言っていた【〈
「あれ、【〈
猫姫さんは小首を傾げ、眉をきゅっとひそめる。
「【〈
そう言うと、ミニチュアハウスの上部をカパッと開き、家の中央に先ほど作成した【〈
「さぁ、これに【誘いのレクイエム】を吹き込んでみてにゃん!」
「わ、わかりましたわ」
そう言うと、猫姫さんは【ストレージ】から細長い棒状の装備……タクトを取り出す。そして、それを振るうことで指揮を始めた。
同時に、周囲一帯に演奏が鳴り響く。【バード】以外には見えない不思議な妖精さん……演奏妖精が曲を奏でているのであろう。微細な光粒が空中を漂い、音色を淡く彩る。
それに反応して【〈
「わたくしの華麗なる音楽、五つ星でしょう?」
猫姫さんがドヤ顔で自身のスキルを自慢し始める。しかし、そんなことを気にしていられないほどの異常が起こっていた。
「まだ音が流れている……?」
耳奥をくすぐる不可思議な共鳴が続いていた。【誘いのレクイエム】の音が残響のように周囲を駆け巡っている。
それはミニチュアハウスの中から発生していた。
「壁の反射によって音が跳ね返り、【〈
「猫姫さん! 【誘いのレクイエム】の効果は――」
「演奏中効果は
「は?」
意味不明すぎて、もう一瞬で頭が真っ白になる。
「最強のスキルなんですのよ? それなのになんでみなさん【バード】を使わないんですの?」
ダメージ判定が遅れる……。説明からいまいちピンと来ないけど、攻撃を受けた直後にHPが減らない、ということなのかな。
「えっと、試してみましょうか」
ミニチュアハウスを手に抱え、2人を巻き添えにしないように距離を取り、ボクはあのスキルを発動させる。
「【フルバーニング】!」
途端にボクを中心に大爆発が発生し、同時に圧倒的な火力の代償で自分のHPが急激に減少していく。しかし、本来なら同時に発生する炎属性ダメージで相殺される……はずなのだけど。
「HPが……回復しない……!」
猫姫さんは演奏を行っていない。にもかかわらず、スキルの効果が適用され続けている。
これはやっぱりボクの手元で鳴り響くミニチュアハウスの効力で……。
使い道を考えていたその最中、数拍遅れてHPバーがぐんと伸びる。結果的には吸収によって回復へと転化されるけれど、これもダメージとして扱われているんだね。
「ちなみに
「……効果多すぎないですか?」
テクニックその37 『
攻撃側はELMが高いほど威力を増加させることができるが、受け手側はELMが低いほどダメージが増加する。この仕組みによってフィルターを通した闇属性スキルの出力を跳ね上げることができます。普通に使うと一瞬でアイテムが破損してしまうのですが、やりようによっては……。
テクニックその38 『ミュージックハウス』
減衰した闇属性のスキルを【〈