卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる! 作:hikoyuki
そしてボクが
地面を力強く踏み鳴らした瞬間、世界が壊れたかと錯覚するほどの振動がダンジョンを揺らす。その衝撃だけで空気が激しく発熱し、大爆発を引き起こしかけたが――。
次の瞬間、空間はぴたりと静止する。先ほどまでの騒ぎが嘘のようだ。
「«空間掌握»――なのです!」
メグさんが周囲の空気を【キネシス】で制御し、【マクロ】の絶対的な強制力で振動を遮断したのだ。
危ないところだった。〈ロールプレイング〉に気を取られていて、自分では対応が間に合わなかった。メグさんに心の中で感謝しつつ、入手した情報を手がかりに考察を続ける。
この男、浅すぎる。過去の記憶が明らかに断絶している。こんな短時間で『底』まで読み切れるとは思わなかった。まるで1か月前にこの世界へ生まれ落ちたばかりなのかと疑うほど、記憶の絶対量が少ない。
思えば過去にもこんな人に遭遇したことがある。
それはボクの人格を転写されたプレイヤーだ。『転式学院』による人格の上書きと非常に近しい状態――。
考察の合間にも事態は進んでいく。
「お父さんが悪いのはわかってるよ!それならわたしが説得する!みんなと仲良くできるように頑張るから!」
「あきなさんがここまで言ってるんですのよ、話くらい聞いてもいいと思いません?」
あきなさんと猫姫さんが声を張り上げる。今回の目的はバトルの勝利ではなくपापम्さんとの対話だ。だから防衛に徹しつつ、言葉による説得を試みるが――पापम्さんがびしりと右手の指を突き出すと、指先を起点として多大な引力が生ずる。
ボクの《『心眼』》が彼の指先を捉えた。これは全能由来の攻撃ではない。〈
〈コンフィデンス〉で引き上げられたその力は、本来の改造機構としての構造限界を無視し、あきなさんだけを引き寄せる。
それを見た猫姫さんが【夜のトロイメライ】の詠唱を始めた。その詠唱だけであきなさんの物質干渉力が大幅に増し、あきなさんは触手を地面に突き刺してその場に踏みとどまる。
【パーティ】メンバーへの幅広い
しかしあきなさんの身体そのものは引き寄せられなかったものの、पापम्さんの指先には膨大な力が集められていた。それは『異形』の持つ力の根源、オーラだ。あきなさんが体内に秘めていた圧倒的なエネルギーが一瞬で奪い取られたのだ。
それを見たボクは即座に〈
「《SANチェック》、です」
「――ッ!」
次の瞬間、पापम्さんの指先に集まったオーラから、説明のつかない恐怖の根源が放出される。最大出力で恐怖を呼び起こすだけの〈
仲間を怖がらせることなく、पापम्さんだけに狙いを定めて打ち放たれた恐怖の思念は、彼を一瞬だけのけぞらせる――だが、刹那のうちに精神を立て直すと、掌で勢いよくそれを握り潰した。पापम्さんに潰されたオーラは彼の体内に沈み込み、血液とともに循環し始めた。
「取り込まれた、です……!?」
「お返しだ!」
पापम्さんが腕を横薙ぎに振るうと、血のように紅く、どす黒い瘴気がボクたちに向けて放たれる。一目見てわかった。あれは『異形』のオーラを蒸留させた、質量を持たない霊的な攻撃だ。物理で押し返すことはできない!
「メグさん、下がって!」とボクが言うまでもなく、彼女はバックステッポで後方に下がり、代わりにボクが前へと躍り出る。そして正面からその瘴気を受け止めた。
「くっ……!――あれ、なにもない」
瘴気は触れるや否や急速に勢いを弱めていき、ボクを優しく包み込む。見た目に反して、他者を傷つけるような害意をまるで帯びていない。むしろ優しさすらこみ上げてくるくらいだ。オーラを媒介にした《SANチェック》の効力が薄かったのも、おそらくはそのせいだろう。
「はぁ!?嘘だろ、『混滅瘴気』を受けて――」
「大層な名前をつけたものですが、取り込むオーラを間違えましたね」
この瘴気はオーラを蒸留したもののようだが、ボクからすればまだ甘い。かすかに恐怖の雑味が残っている。
「《イグニッション》」
魂の言葉を口にすると同時に、瘴気はさらに蒸留され、純度100%のやさしいオーラとして完成した。帝王龍さんの言うとおり、案外やればできるものですね。
「お返しですっ!」
ボクが腕を前に突き出すと同時に、見た目だけは邪悪な瘴気が宙を駆け抜ける。
「ちっ――」
पापम्さんが指を弾くと『混滅瘴気』とやらが再び放たれるが、純度の低いオーラで打ち破れるはずがない。ボクの放ったやさしいオーラが一瞬にして上回り、पापम्さんの全身を包み込む。
「うぐっ……!?」
瘴気を受けたपापम्さんは短く呻き、その場にしゃがみ込む。
「しょうぶ、あったかなー? みてただけだったねー」
「いえいえ、そこにいるだけで安心感が段違いでしたよ」
マクロその19 『空間掌握』
気体系のアイテムを事前に撒いておき、それを【キネシス】で制御、さらに【マクロ】の優先力で空間に固定することによって衝撃を完全に無効化する【マクロ】です。
思念入力によって重力を自在に操る〈