卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第508話 メメントモリ

「やぁ、小虎ちゃんじゃないかい。お久しブリーフだね」

 

「その呼称、古臭さを通り越して意味不明な語彙力――おっさんですね」

 

 振り返ると、ホストめいた風貌のチャラい金髪男がそこにいた。ぱっと見は新しそうなのに、どこか旧世紀感がにじむ。

 

 その隣にいるのは、巨大な鎌のような武器を携えたプレイヤーだ。キャラクター名が表示されていないので一瞬迷ったが、テトリスさんだとわかった。

 

「なるほど、チーム【OA-YS】ということですか」

 

「そういうことだよ、ベイビー。【フォッダー】の公式大会で、別のゲームのアカウントがブイブイ言わせてしまう……とってもナウい感じがしないかい?」

 

「僕は【フォッダー】の頂点に興味はないけどね。【OA-YS】の宣伝になるなら、って感じ」

 

 テトリスさんは相変わらず、原動力のすべてが【OA-YS】に注がれているようだ。

 

 普通に考えたら、『興味はない』なんて言える程度のモチベーションでは【フォッダー】を勝ち抜けないはずだが、彼の場合は違う。間接的にでも【OA-YS】の利益になるのであれば、彼は世界すら敵に回す。そんな強い信念の持ち主だ。

 

「この【ダブル杯】で対峙できるかはわからないけど……絶対に負けないのです!」

 

「そちらこそ。俺たちとマッチングしないことをwktkしてるといいよ」

 

 一瞬だけ『wktk』という単語に気を取られかけた。だが、ここは揶揄するような場面ではないだろう。ボクは一歩、力強く踏み出した。

 

「他ならぬあなたから受けた多大な評価――証明してみせましょう。首を洗って待っていてくださいね」

 

 おっさんは以前、ボクを過剰なほど高く評価していた覚えがある。曰く、他の参加者はボクへの挑戦者に過ぎないとか。ボク自身がどう思うかはともかく、そこまで買ってくれた人からの挑戦状だ。上から目線で強気に受けて立たなきゃですよね!

 

「――そうかい。こちらこそ、wktkしなきゃならないようだ」

 

 おっさんはほんのわずかな間を置き、そう口にした。

 

「なにやら因縁があるようだね。どうやら僕も手を貸す必要がありそうだ」

 

 テトリスさんは大鎌の柄を地面に突き立て、淡々と呟いた。

 

 あの大鎌――テトリスさんほどの強者なら、【OA-YS】における結論装備のエンチャントが付与されていると見てまず間違いないでしょうね。『状態異常属性三銃士』でしたっけ。

 

 そしてメグさんもそう思ったのだろう。

 

「かっこいい鎌なのです!どんなエンチャントが付いているのです?気になるです!」

 

 あまりにも直球で情報収集を始めた。

 

「おっ、気になるかい?これは僕のお気に入りの装備で、【メメントモリ】と言ってだね。『混沌』『邪悪』『魔滅』『神聖』『魂魄』という5つの属性ダメージを追加で与えられるんだ。さらに『半物質』というエンチャントで、ダメージ計算時には相手の物理防御力と魔法防御力の低いほうを参照する性質がある。しかも『牽制』というエンチャントによって攻撃を相殺するときに出力が上がるんだ。【フォッダー】で言う【虚穿】?とかいうスキルの性能を受動(パッシブ)として持っているんだよ。さらに炎・水・土の3属性にハイレベルな耐性がついていて、耐性パズルも埋めやすい。しかも!ここからは聞き逃せないよ。なんと5枚もの――」

 

「そこまでにしておけ、テトリスくん。ヒューヒュー言われたがるのは品がないよ」

 

「ヒューヒュー言われたがる……?まあそうだね。危うく情報アドバンテージを与えてしまうところだった」

 

 もちろんボクの〈ロールプレイング〉なら、遮られた言葉の先を読むくらいは容易いことだ。さすがに思考をまるごと読み取るのは、それこそ『品がない』。だが、ここまで口走ってくれたなら、穴埋めしてもいいだろう。

 

 テトリスさんの【メメントモリ】に付与された最重要能力。おっさんが隠し通したかったのは――『障壁』の存在だ。

 

 【OA-YS】にはあらゆる攻撃を一定回数まで無効化できる『障壁』という概念がある。基本的にはモンスターが所持している能力なのだが、テトリスさんの鎌はその絶対的な防御性能を限定的とはいえ備えているらしい。

 

 これは厄介ですね。しかも5枚もあるんですか。初手の高火力で沈めることはできそうにない。

 

 メグさんがこちらを振り返ってアイコンタクトを交わしたのを受けて、ボクは会話を続けた。

 

「炎属性の耐性付きですか……【OA-YS】には【フォッダー】側にない属性もありますが、概念が同じなら互換も利くことが多いですし、ボクの攻撃は通りにくそうですね。テトリスさんともなれば完全耐性は当然でしょう?」

 

「まあそうだね。僕、というより――【OA-YS】では完全耐性がスタートラインだからね。相手の攻撃を無効化できなければお話にならない」

 

「それぐらいなら当たり前田のクラッカーだし、言ってもいいか。モチのロン、俺も耐性装備は仕入れているよ。小虎ちゃんの象徴である炎だけじゃなく、風についてもね」

 

 おっさんの補足については、もはや何の驚きもない。ボクに対して最大限の警戒心を見せる彼が対策していないわけがない。

 

 むしろ、これは最低ラインだ。実際にはボクのあらゆる戦術にメタを張っていることだろう。

 

 まあ、負ける気はありませんけどね?

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