卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!   作:hikoyuki

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第509話 続く来訪

 おっさんたちは話したいことを話し終えたのか、遠くの屋台のほうへ立ち去っていった。

 

「あんなこと言ってたけど、大会でライバルとの対戦カードが成立するなんて、現実じゃなかなかないですからね」

 

「私たちは勝ち上がるのです。そして向こうも勝ち上がっていけば、いつかは当たってもおかしくないのです」

 

 対戦カードは運次第。でも、お互いに勝ち上がっていけば、いつかは必ずマッチする。この手の決意表明は、自分の実力を信じるのと同時に、相手の実力も信じているからこそ口にできる。そういう関係があってこそ成り立つんだろう。

 

「ただし、この【ダブル杯】で当たるという保証はどこにもないんですけどね」

 

 今回の【ダブル杯】はこの前の【サバイバル杯】を勝ち残った参加者が戦う第二回戦だ。ここで優勝が決まるわけではなく、最後は【シングル杯】で雌雄を決する。つまり、別の山になる可能性が高く、今日は当たらない確率のほうがかなり高い。

 

 その前提を踏まえたうえで、ボクの《『第六感』》は――

 

「でも、彼らとはここで決着がつきそうです」

 

「『直感』なのです?」

 

「『直感』ですよ。精度は割と高いほうですけど、根拠はありません」

 

「ならよかったのです。たとえ無根拠の『直感』であっても、二人が同時にそう思ったのであれば、それは逆に根拠になり得るのです」

 

 メグさんも同じ気配を感じ取ったようだ。

 

 これまでの交流から察してはいたが、彼女とはなぜか波長がとても近い。ともすれば灑智やとがみんよりも親和性が高い気さえする。

 

 敵に回したときのことは考えたくもないが、タッグを組む相手としては最良だ。ボクは彼女を見据え、こくりと頷いた。

 

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>フォッダーのおかげか、勘だけで○×問題を全部正答できるようになったから直感は割と信じてる

 

>ライバルと大会で勝敗を決めるのもテンプレだけど、戦いを約束したライバルが思わぬ強敵にやられるのもテンプレだよね

 

>卍さんもメグさんもがんばって!

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「むむ、ずいぶんと初々しいコメントが流れてきましたよ。『がんばって!』ですって」

 

「ずいぶんと珍しいのです。卍さんのコメント欄なんて、匿名掲示板並みの荒れ様がデフォなのです」

 

 別にボクの視聴者さんが人格的に終わっているわけではなく、いわゆる『ノリ』で斜に構えたコメントをする人が多い。いつも温厚な雰囲気を漂わせているめりぃさんでさえ、コメント欄では罵倒を浴びせてくるくらいだ。

 

 思わずそのコメントを送ってきた人の名前を確認すると――なるほど、あきなさんでしたか。

 

「これは頑張らなきゃいけませんね!新規さんのためにも【フォッダー】における戦い方を実戦で披露しなくては!」

 

「ふっふっふ。私も【マクロ】の真価をお見せするのです!」

 

 そんなふうに画面の向こうの視聴者さんとやり取りしていると、どうやらまた新たなお客さんが現れたようだ。全身を疑問符の装備で埋め尽くした【ナイト】の男が目の前にやってきた。ゆうたさんだ。

 

「おや、あなたも決意表明ですか?」

 

「まあな」

 

 先程のテトリスさんはわかりやすく強力な装備を見せつけてきた。だがゆうたさんは相変わらず、外見だけでは更新された装備が判別できない。

 

 しかし彼なら、厳選に厳選を重ねた無数の未鑑定装備を揃えてきているのは想像に難くない。当然ながら炎属性と風属性に対する耐性装備を使ってくるだろう。

 

「むむ、さっきから卍さんにばかり注目が集まってるのです。私のことも忘れないでほしいのです」

 

「忘れてはいないぞ。【マクロ】は俺の戦術においても重要な要因(ファクター)の一つだ。参考にさせてもらっている」

 

 ゆうたさんがそう言うと、メグさんは「わかればいいのです」とだけ言って後ろに下がった。

 

「先程のおっさんもそうでしたが、決意表明だけしてマッチングしなかったら肩透かしに終わるんですけどね」

 

「そう言うな。今日戦わなかったとしたら【シングル杯】での決意表明としてスライドさせてくれ」

 

「でもその場合は【シングル杯】の当日にも挨拶に来ますよね?」

 

「そうだな」

 

「いらないですよ。競技エリアに転移してからでも前口上を語る時間くらいはあるじゃないですか」

 

「ずいぶんと食い下がるな?」

 

 ボクがゆうたさんの決意表明を受け取らないのには理由がある。

 

「別に卍さんはゆうたさんに嫌がらせしてるわけじゃないのです。直感で『今日は戦わなさそうだな』と思ってるだけなのです」

 

「……なるほど」

 

 メグさんの説明の通りだ。おっさんの決意表明を受け取ったのとは逆で、直感的にゆうたさんとは当たらないと思ったのだ。

 

「それを聞いて安心した。荒罹崇に嫌われているのかと不安になってしまった」

 

「嫌うわけないじゃないですか。ゆうたさんは【フォッダー】におけるボクの理想のプレイヤーであり、お友達ですからね」

 

 ボクはどちらかといえばカジュアル寄りのプレイヤーだが、ゆうたさんのコアゲーマーとしての動きはたびたび参考にさせてもらっている。もちろんゲーマーとしてだけでなく、個人としても信頼できるお人だ。

 

 ボクがそう言うと、ゆうたさんは僅かに表情を強張らせた。どうやら期待にそぐわない回答だったらしい。

 

 そのままゆうたさんはくるりと後ろに振り返った。

 

「本当は言いたいことがあったのだが……荒罹崇とメグの勘を信じるとしよう」

 

「おや、言いたければ言っても構いませんが」

 

「気にするな。まあ、強いて言うならば――【シングル杯】で会おう」

 

 そう言ってゆうたさんは立ち去っていった。

 

 

「なんだったんでしょう?」

 

「……次に会った時の楽しみにとっておくといいのです」

 

 ボクは疑問符の感情表現(エモート)を浮かべながら、その姿を見送った。

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